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夏祭りの思い出

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「俺らとこれから飲み行きましょうよ?」

 柚希とて中高バスケ部で鍛えた腕っぷしは男であるから、柳眉を吊り上げ男の腕を簡単に振り払おうとした。しかし着慣れぬ浴衣の袖に引っかかり、飲みかけのチューハイのカップが倒れ、逆側に座り込んできた男の足元に飛沫がかかってしまった。
サンダルの足元と共に柚希の浴衣も濡れているのが分かって真面目な柚希は反射的に謝罪が口をついてしまった。

「あ、ごめっ……」
「あー、濡れちゃったじゃんか」
「これは責任取って付き合ってもらわないとね? いこっか?」
「……!」

 肩をぐいっと掴まれたまま手首まで握られ、立ち上がらせようとしたことに流石にそれとこれとは別と、いらっときて睨みつけるが、ほどほどに酔っぱらっている青年たちは意に介していないようだ。上機嫌のまま二人で柚希を挟み込むようにして、会場を連れ出そうとしたので、下駄をはいた足で踏ん張ろうとするがどうにも力が入らずうまくいかない。
 
「酔ってるの? それともそういうの全部わざと俺らの事誘ってる? Ωのエッチなお兄さんなんだ?」

(気持ち悪っ! 和哉を巻き込む前に、振り払って逃げないと)

 ぐいっと腰を抱かれ顔を近づけられ、柚希はキッと気丈に睨みつけたのだが、あのαの男に後ろ方抱き着かれた時のことや、痴漢に合いかけたこと、追いかけられて巻けたかどうかそんな不安な気持ちが一遍に蘇る。

(苦しい……、気持ち悪い……)

 髪の毛がざわざわっと総毛立ち、心臓の辺りがぎゅうっと締め付けられるような苦しさで柚希は俯き呼吸が荒くなった。

「なんかやばいって。調子悪いんじゃないか? うわっ!」

 もう一方の男が慌てたような声を上げたその時。
 どかっという音と共に柚希の身体を抱えていた男が後ろに突き飛ばされ、驚いたもう一方の男が咎める前に、柚希は袖の上から二の腕を強い力で掴まれ勢いよく引き寄せられた。
 抱き寄せてきた人物の身体にかなり勢いよくぶつかり、柚希はまたふらついたが屈強な身体がしっかりと柚希を抱きとめる。鼻先を何故かふわりと香る季節外れの金木犀に似た甘い香りを吸い込めば、安堵感、多幸感が押し寄せ、しかし足元が覚束なくなるほど、一気にくらくらと酔いが強く回る。

「何しやがる!」

 色めき立つ男たちの声が背後から聞こえてきたが、柚希の頭は大きな掌に抱えられてくたりと肩に押し付けられて、その姿は見えない。

「はあ? お前らこそなんなんだよ。俺の恋人に手ぇ出しやがって!」
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