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夏祭りの思い出
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骨格は同じ男のものだというのに、どうしてこんなにも兄の素肌は艶美に映るのだろう。胸元の薄い桃色の飾りは上気した素肌に色づき、ちらりと見てすぐ、和哉は努めて目を反らしてしまわなければ危険なほどに惹きつけられる。
程よく筋肉がついた身体だが腰の辺りはきゅっと絞られて、その下に伸びる白い脚はバスケット部だった頃よりは幾分ほっそりとして少し艶めかしく眼に眩しい。
袖を通しただけのオフホワイトの浴衣の裾はふんわりと床に落ち、兄の日に焼けていない部分が湯上りに真珠の光沢を帯びた美しい肢体を柔らかく彩っていた。
しっかり着付けをした後もその下の素肌を思い出しては兆してしまいそうな色香を放っている。
(このまま二階に抱いて連れ去って、押し倒してしまいたい)
ぐっと腰を抱く腕に力を入れて自らの方に引き寄せたら、上目遣いに見上げてきた柚希の顔に戸惑いが見えた。
(怖がらせた? 僕がαだから無意識に警戒してる?)
兄がΩの判定を受けてから、和哉はできるだけ今まで通りに接することを心掛けてきたし、当の柚希もβと信じて疑わなかった頃と同じようにふるまおうとしてきた。だが身体は正直なのだろう。今までいくら和哉に抱き着かれようとも無邪気に抱き着き返したりしてきた柚希だが、今はびくりっと無意識にその身体が強張ったのが掌を通じて伝わってきた。
(父さんとのことがあってから……。まだ半年だ。初めて発情期が来てから一年もたたない間は心身ともに色々と不安定な時期だって聞くから、あまり兄さんに負担をかけては駄目だな)
ただでさえ慣れぬ一人暮らしに就職して初めての猛暑。その上弟からおかしな態度をとられたらきっと兄の心は他所に安寧を求めに行ってしまうだろう。
(駄目だ。大人にならなきゃいけない。兄さんがいつでもこの家に帰ってきやすいように、いい弟として兄さんがいつでも何でも相談してくれるような間柄でいないと)
すると柚希の方が先にいつも通りののんびりした甘い声で、わびを入れてきた。
「和哉? ごめんね。洋服濡れちゃったな」
「別にいいよ。それより兄さん、なんて格好してるんだよ」
「え? しょうがないだろ。着方分かんないし?」
和哉は結局再び吸い寄せられるように湯上りの色香が匂い立つ、兄の姿を見つめてしまった。
(駄目だ……。兄さん不足過ぎて、もうどうしても離れたくない。離したくない)
程よく筋肉がついた身体だが腰の辺りはきゅっと絞られて、その下に伸びる白い脚はバスケット部だった頃よりは幾分ほっそりとして少し艶めかしく眼に眩しい。
袖を通しただけのオフホワイトの浴衣の裾はふんわりと床に落ち、兄の日に焼けていない部分が湯上りに真珠の光沢を帯びた美しい肢体を柔らかく彩っていた。
しっかり着付けをした後もその下の素肌を思い出しては兆してしまいそうな色香を放っている。
(このまま二階に抱いて連れ去って、押し倒してしまいたい)
ぐっと腰を抱く腕に力を入れて自らの方に引き寄せたら、上目遣いに見上げてきた柚希の顔に戸惑いが見えた。
(怖がらせた? 僕がαだから無意識に警戒してる?)
兄がΩの判定を受けてから、和哉はできるだけ今まで通りに接することを心掛けてきたし、当の柚希もβと信じて疑わなかった頃と同じようにふるまおうとしてきた。だが身体は正直なのだろう。今までいくら和哉に抱き着かれようとも無邪気に抱き着き返したりしてきた柚希だが、今はびくりっと無意識にその身体が強張ったのが掌を通じて伝わってきた。
(父さんとのことがあってから……。まだ半年だ。初めて発情期が来てから一年もたたない間は心身ともに色々と不安定な時期だって聞くから、あまり兄さんに負担をかけては駄目だな)
ただでさえ慣れぬ一人暮らしに就職して初めての猛暑。その上弟からおかしな態度をとられたらきっと兄の心は他所に安寧を求めに行ってしまうだろう。
(駄目だ。大人にならなきゃいけない。兄さんがいつでもこの家に帰ってきやすいように、いい弟として兄さんがいつでも何でも相談してくれるような間柄でいないと)
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「和哉? ごめんね。洋服濡れちゃったな」
「別にいいよ。それより兄さん、なんて格好してるんだよ」
「え? しょうがないだろ。着方分かんないし?」
和哉は結局再び吸い寄せられるように湯上りの色香が匂い立つ、兄の姿を見つめてしまった。
(駄目だ……。兄さん不足過ぎて、もうどうしても離れたくない。離したくない)
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