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夏祭りの思い出

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(あー。久々の兄さん。やっぱり可愛い。でもあんなに真っ赤に日焼けしたのは身体に良くないよな。兄さんすごい色白だから、日焼けが火傷みたいになってしまうんだから。母さんがかった日焼け止め毎年渡してたけど今年は渡しそびれたって言ってたから……。よし、今日絶対に渡そう)

 それにやはり嬉しいことがあった。久しぶりに兄と並んで立ったら、彼のいつ見ても澄んだ大きな瞳がうるっと少し戸惑い気味に上目遣いになって和哉のことを見上げてきたからだ。元アメフト部出身の敦哉の胸板の逞しさを追い越すのは至難の業と言えるが、170cm半ばはある柚希を見おろせるようになったことは大きな成長だ。

(よし。ちゃんとプロテイン飲んで運動して、身長がんがん伸ばして計画通りの体格になれた。あとは心身ともに父さんに負けない頼りがいのある男になるんだ。大学卒業したら即、兄さんと結婚したいから就職先も手堅い場所を探さないと)

 きりっとした顔をした和哉は両手で頬をぴしゃっと叩いた。

(後は兄さんが絶対に他所にふらふらいかないように監視は怠らないようにしないとな。寂しがり屋の兄さんをよそ見させないように、いつでも僕が傍に居てあげられるんだって、気づかせないと)
 
「和哉~、なんで浴衣がここにあんの?? 俺、着方分からないよ!!」 
 
 情けなくも甘い呼び声と共にけたたましい足音を立てて柚希がリビングの扉を凄い勢いで開け放つ。

「あ、和哉、いた」
 
 ひらり、と白っぽい袖をモンシロチョウのように翻し、グレーのボクサーパンツの上は裸のまま浴衣を羽織った柚希が、ちょうど扉の前付近をうろうろしていた和哉の腕の中に飛び込むように部屋に入ってきた。

「わ、ごめん」

 勢いよくぶつかってきた身体をバスケットボールよろしく正面から受け止める。髪の毛の雫がぱしゃり、と和哉の顔までも飛んできた。

「あぶないよ」

 そのままよろける柚希の腰に手を回し引き寄せると、目が合えば魅入られずにはいられない彼の綺麗な瞳を覗きこんでから、半裸に近いあられもない姿に息をのむ。

(目の毒すぎだろ……)

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