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小話や設定作品の色々など
番外編 パヒューム・ディライト 1
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☆柚希中二と和哉小5の秋。両親が再婚する寸前ぐらいです。
★前日譚です✨ 少しネタバレなので気になる方は第一部終わってからご覧くださいませ😊
今日、薔薇園に行ってまいりました~ 薔薇の写真を撮りながら、お話を思い浮かべていました。
鳩愛は今年から家でも薔薇を育てておりまして、薔薇をますます好きになりました。
「ねえ、柚くん。僕と『秘密の薔薇園』に行かない?」
クイズ番組を見ながらぼうっと寛いでいた時、和哉が急にそんなことを言い出した。
夕餉の支度が終わり、炊きあがったキノコご飯の香ばしい匂いが部屋に広がっている。駅に着いた母の桃乃がこちらに向かっていると先ほど連絡があったところだ。
大分秋が深まってきたから、日が落ちると部屋の中もひやりとする。
暖房を入れるまでもないが、隣同士にソファーに腰かけた二人は、なんとなく身体の半身をぴったりとくっつけている。お互いの体温が心地よく、部活の疲れも手伝って眠くなってしまいそうだった。
しかし和哉から聞いたこともないようなお洒落なお誘いに驚いて、柚希は大きな瞳をぱちくりとさせた。
「秘密の薔薇園なんて存在するのか? 本に出てくる場所とか?」
柚希が知らないことを話すとき、和哉は悪戯が成功した子供みたいににっこりとした。
三つ年下でも和哉は聡い子だから、普段会話をしている時にあまりギャップを感じない。それでもこうやって柚希に驚いたり感心されたそぶりを見せられると嬉しいそうだ。そんな時に見せるあどけない笑顔が可愛くて仕方ないから、柚希はちょっと大仰に驚いた顔をしてしまう。
「ちゃんと存在する場所。個人の庭園だった場所を、町が管理することになって、秋と春だけ特別に公開してる薔薇園なんだ」
「ああ、だから『秘密の薔薇園』」
「母さんが生きていた頃は、毎年春と秋に行ってたんだ。母さん、薔薇が好きだったから」
和哉が眉を下げ、悲し気に微笑んだから、柚希は我がことの様に胸が苦しくなって、まだ薄い肩を引き寄せた。
「思い出の場所なんだね」
「うん」
そのまま和哉は甘えたな仕草で柚希の膝に頭をごろんっと寝転がった。最近とみに身長が伸びてきたから、膝から先がはみ出してしまうがお構いなしだ。
「カズ君……」
「みんなで一緒に暮らす前に、どうしても柚くんと桃乃さんを連れて行きたいんだって」
柚希の腹に顔を押し付けた和哉はそのまま腕を柚希の背に回し、きゅうっと抱き着いてきた。そのまま無言になってしまった和哉だ。
柚希は何も言えずに、和哉の茶色く柔らかな髪を撫ぜつつ、自らも和哉の背中に手を回す。
(和くん……。本当はお父さんの再婚、嫌なのかなあ)
顔を上げない和哉は、泣いているのかと思った。どう声をかけていいか分からず、柚希は熱い身体を冷やさぬように、覆いかぶさって彼を抱きしめた。
※※※
その週末は秋晴れに恵まれた。少し高台にある薔薇園からは街並みを一望できる見晴台もある。空気が澄んで雲のない青空は清々しい。
四人で連れだって訪れた薔薇園は、貰ったパンフレットの写真に比べたらまだ花数が少なく少し寂し気に想えた。
「久しぶりに来たけど、春の方が花は多かった気がするね」
「そうなのね。でもあっちとか、綺麗に咲いている花も沢山あるわ」
そう言って隣に立つ敦哉に向かって微笑む桃乃は、いかにも幸せそうに柚希には見えた。
スーツ姿の時より私服はさらに若々しい敦哉に、どこか遠くを見ているような眼差しで、今日は少し無口な和哉。
腰の位置が高く、さりげなくたっている姿も秀麗だ。見れば見るほどよく似たイケメン親子だと思う。そして柚希の方は、骨格は父親似だが顔立ちは母に似ているといわれている。
(周りの家族連れには、俺たちも普通の家族に見えているのかな)
柚希は物心ついた時から父親の記憶が曖昧なので、なんだか不思議な気分になっていた。
だが和哉は恐らく去年の春までと違う相手と来ているわけで、それがどんな感覚なのか想像するに、この四人で来るのは早急過ぎなかっただろうかと柚希は不安になった。
「今日は暖かいし、天気がいいから気持ちいいわ」
そういって敦哉と連れだって歩く母が青空を眩しそうに見上げたので、柚希はその隙に和哉に目配せをした。
「俺、カズ君と一緒にソフトクリーム食べてくるね」
「柚希は来るなり花より団子だわね。ちょっと待って。和香さんの薔薇、一緒に探してからでいいじゃない」
「それも二人で探してくる。どっちが先に探せるか競争しよ? 写真撮って送るから!」
柚希は和哉の手首をつかむと、二人からわざと離れる様に駆け出して行った。
☆良かったらお気に入り、感想やエール、ご投票頂けると勇気が湧きます!
お気に入りにぽさっといれるだけ、感想は一言「面白い!」だけでもかなりの加点になるそうです!
★感覚で投げていただけると本当にありがたいです🙇♀️
小話的番外編載せていけたらいいなあと頑張っております~
よろしくお願いします✨
★前日譚です✨ 少しネタバレなので気になる方は第一部終わってからご覧くださいませ😊
今日、薔薇園に行ってまいりました~ 薔薇の写真を撮りながら、お話を思い浮かべていました。
鳩愛は今年から家でも薔薇を育てておりまして、薔薇をますます好きになりました。
「ねえ、柚くん。僕と『秘密の薔薇園』に行かない?」
クイズ番組を見ながらぼうっと寛いでいた時、和哉が急にそんなことを言い出した。
夕餉の支度が終わり、炊きあがったキノコご飯の香ばしい匂いが部屋に広がっている。駅に着いた母の桃乃がこちらに向かっていると先ほど連絡があったところだ。
大分秋が深まってきたから、日が落ちると部屋の中もひやりとする。
暖房を入れるまでもないが、隣同士にソファーに腰かけた二人は、なんとなく身体の半身をぴったりとくっつけている。お互いの体温が心地よく、部活の疲れも手伝って眠くなってしまいそうだった。
しかし和哉から聞いたこともないようなお洒落なお誘いに驚いて、柚希は大きな瞳をぱちくりとさせた。
「秘密の薔薇園なんて存在するのか? 本に出てくる場所とか?」
柚希が知らないことを話すとき、和哉は悪戯が成功した子供みたいににっこりとした。
三つ年下でも和哉は聡い子だから、普段会話をしている時にあまりギャップを感じない。それでもこうやって柚希に驚いたり感心されたそぶりを見せられると嬉しいそうだ。そんな時に見せるあどけない笑顔が可愛くて仕方ないから、柚希はちょっと大仰に驚いた顔をしてしまう。
「ちゃんと存在する場所。個人の庭園だった場所を、町が管理することになって、秋と春だけ特別に公開してる薔薇園なんだ」
「ああ、だから『秘密の薔薇園』」
「母さんが生きていた頃は、毎年春と秋に行ってたんだ。母さん、薔薇が好きだったから」
和哉が眉を下げ、悲し気に微笑んだから、柚希は我がことの様に胸が苦しくなって、まだ薄い肩を引き寄せた。
「思い出の場所なんだね」
「うん」
そのまま和哉は甘えたな仕草で柚希の膝に頭をごろんっと寝転がった。最近とみに身長が伸びてきたから、膝から先がはみ出してしまうがお構いなしだ。
「カズ君……」
「みんなで一緒に暮らす前に、どうしても柚くんと桃乃さんを連れて行きたいんだって」
柚希の腹に顔を押し付けた和哉はそのまま腕を柚希の背に回し、きゅうっと抱き着いてきた。そのまま無言になってしまった和哉だ。
柚希は何も言えずに、和哉の茶色く柔らかな髪を撫ぜつつ、自らも和哉の背中に手を回す。
(和くん……。本当はお父さんの再婚、嫌なのかなあ)
顔を上げない和哉は、泣いているのかと思った。どう声をかけていいか分からず、柚希は熱い身体を冷やさぬように、覆いかぶさって彼を抱きしめた。
※※※
その週末は秋晴れに恵まれた。少し高台にある薔薇園からは街並みを一望できる見晴台もある。空気が澄んで雲のない青空は清々しい。
四人で連れだって訪れた薔薇園は、貰ったパンフレットの写真に比べたらまだ花数が少なく少し寂し気に想えた。
「久しぶりに来たけど、春の方が花は多かった気がするね」
「そうなのね。でもあっちとか、綺麗に咲いている花も沢山あるわ」
そう言って隣に立つ敦哉に向かって微笑む桃乃は、いかにも幸せそうに柚希には見えた。
スーツ姿の時より私服はさらに若々しい敦哉に、どこか遠くを見ているような眼差しで、今日は少し無口な和哉。
腰の位置が高く、さりげなくたっている姿も秀麗だ。見れば見るほどよく似たイケメン親子だと思う。そして柚希の方は、骨格は父親似だが顔立ちは母に似ているといわれている。
(周りの家族連れには、俺たちも普通の家族に見えているのかな)
柚希は物心ついた時から父親の記憶が曖昧なので、なんだか不思議な気分になっていた。
だが和哉は恐らく去年の春までと違う相手と来ているわけで、それがどんな感覚なのか想像するに、この四人で来るのは早急過ぎなかっただろうかと柚希は不安になった。
「今日は暖かいし、天気がいいから気持ちいいわ」
そういって敦哉と連れだって歩く母が青空を眩しそうに見上げたので、柚希はその隙に和哉に目配せをした。
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「柚希は来るなり花より団子だわね。ちょっと待って。和香さんの薔薇、一緒に探してからでいいじゃない」
「それも二人で探してくる。どっちが先に探せるか競争しよ? 写真撮って送るから!」
柚希は和哉の手首をつかむと、二人からわざと離れる様に駆け出して行った。
☆良かったらお気に入り、感想やエール、ご投票頂けると勇気が湧きます!
お気に入りにぽさっといれるだけ、感想は一言「面白い!」だけでもかなりの加点になるそうです!
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よろしくお願いします✨
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