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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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 「カズも笑えよ? 俺だってさ、昔からお前の笑顔の為ならなんだってできるって、そう思ってるんだからな? 本当だよ?」

 互いに笑顔ではにかみあって、それで冬の隙間風も物ともせぬほどぴったりと互いを温めあって。

 年の瀬の迫ってきたこの日、二人はこれからもずっと家族で居ようと約束を交わし合った。

「カズ、ずっと俺を好きでいてくれて。ありがとう。これからも、よろしくな?」
「僕こそよろしく。生涯かけて、柚希を愛させて」

 生涯をかけてなんて、なんという重たくも深い愛。

 でもそんな言葉を笑い飛ばしたり揶揄ったりはしない。柚希は和哉の愛情を心底信じているのだから。だからこそ、伝えたい思いがある。

「お前もちゃんと、俺の愛情を信じろよ? Ωが項噛ませるってことはさ、とてつもないことなんだからな?」

 分かっているつもりでも、分かっていなかったのは和哉も同じことだろう。弟はゆっくりと大きく眦の切れ上がった綺麗な瞳を見開いてから、深く深く頷いた。

「一番重要なことなのに、嫉妬で見えなくなってた。そうだよね。兄さん。ごめんね」
「分かればいいんだよ。そろそろ、母さんとこにいこうな? んっ?」

 手首にわだかまる袖を柚希は勢いよくまくり上げると、ちょっと芝居がかった仕草で左手を恭しく和哉に差し出した。

 察した和哉が柚希の手首に軽く温かみのある時計を巻き付けてくれたのを見て、柚希は左手の薬指に耀く指輪と共に大切な時計を蛍光灯の明かりに透かすように視界に入れてにんまりと微笑んだ。

「いいねえ。お前のものって気がする」
 
 そのまま和哉の大きな骨ばった手を掴み上げて指輪と薬指にちゅっと音を立てて口づけた。

「お前も俺のものって感じがするぜ?」

 炯炯と輝く瞳は今日は若い雄の匂い立つ色香も湛えて、和哉の目には危険なほど美しくうつった。そのまま再び深い口づけに溺れたくなる気持ちをなんとか抑えて立ちあがる。
 二人は笑顔を浮かべたまま白い息を弾ませてアパートの階段を降りると、父と母の待つ師走のきんっと冷え切った家路を急いだ。







                                終
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