仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛

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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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  番になってから、日常的に和哉から『結婚してから云々』と口には出されてきたが、柚希は遠い未来のことのように話半分にしか取り合わなかった。二人で共にまた暮らし、家族にも頻繁に会えるようになったことで柚希の中ではかなり満たされるものがあったからだ。
 それでも不器用な柚希なりに和哉にいくら気持ちを伝えても、ふとした時に表情を陰らせていることが気になっていた。

(指輪はさ、ベタだけどまあ、ここで一区切りって感じだ。昨日みたいに和哉を不安にさせないで、俺だって愛してるんだって気持ちの具現化ってやつ)

 柚希自身強い決意をもってクリスマスイブを迎える、はずだった……。

「いや、大分番狂わせがあって正直どうなるかと思ったけど、喜んでくれたし良かった、って、え??」

 しかしまた憂い顔も眉目麗しく顔を曇らせた和哉がへなへなと足元に屈んで何やら小さな声でぶつぶつと呟いている。普段は頭上高く見えない和哉の項を久々に見て、悪戯心からつむじを指先でつついてみる。

「どうした?」
「……先越された」
「なに??」
「僕も……、予定だったのに」
「??」

 しかしその後すぐに切り替えたようにむくりと立ちあがると、再び柚希を更衣室に押し込んだ。

「兄さん早く着替えて。家帰ろう」
「え? 今日は敦哉さんたちと約束してるから直接実家に帰るじゃないの?」
「いいから、早く!」

 ※※※

 昨日の晩はあんなことになったが、今朝は柚希はぎりぎりまで寝こけて慌てて昨晩の余韻に浸ることも出来ずに出かけていった。
     ともあれ二人はアパートのすぐ裏にある貸し駐車場に父の車を停めてから、互いの薬指に金色の指輪が輝く手をしっかりと繋いでアパートまで帰ってこられた。
 
「寒い! 暖房!!」

 コートを着たままの柚希がローテーブルの上に載っていたリモコンに手を伸ばす前に、テーブルの上に並べられたリボンがかかった小さな品々に目が留まった。
 
「これ……、昨日ツリーの下にあったやつ?」
「そうだよ」

 昨夜に手にすることはなかったツリーの下に賑やかに並べられたプレゼントの箱は、装飾の為ダミーも本物も織り交ぜてある。

 大きな箱の一つは薄ピンクの綺麗なものだったが中身はからっぽで、昨日着たお揃いのパジャマが入っていたらしい。もう一つちょっと淫靡で目に刺激的な蛍光ピンクに蛍光イエローの縞模様の箱。そちらにはちょっと?エッチなアダルトグッズが入っていたらしい。柚希的には和哉がこれどすましたあの顔で、どこで仕入れたのか気になるところだ。
 つまり昨晩柚希を散々啼かせたあれら、そしてその他にもまだ和哉がなにやら隠し持っているらしい。どんなタイミングで披露されるかは分からないが、これだけは言える。柚希の可愛い弟は爽やかな顔に反してとんだスケベだ。

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