仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛

文字の大きさ
上 下
229 / 296
第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

58

しおりを挟む
 「気持ちいぃ、死にそう」

 頭の芯から痺れるような快感が全身を包んで、多分柚希は何度か中で和哉を喰い締めながらイった気がした。
 和哉も兄に包まれその締め付けに低く呻くと、一度硬さを保ったままの長大な和哉自身をずるりと引き抜く。ぐにゃぐにゃの桃色の軟体生物になったように、布団に沈み込んでいこうとする柚希の桃色に上気した艶めかしい身体をうつぶせた。
 体勢が変わり、さらに深く交わろうと推し進められる腰から、柚希は無意識に逃げを打つ。しかし逃さないとばかりに腰を両手で抱え上げられる。

「細い、壊れそうだ」

和哉が熱にじくっと浮かされた声で囁く。
 柚希はそんな和哉の掌を手繰るようにがしっと掴み上げ、後ろを振り向いて弟と目を合わせると、妖艶ともいうべき貌で言い放つ。

「壊れねぇ。がんがん、こい」
 
 試合中、味方を鼓舞する様に叫ぶ柚希の鬨の声はチームの間で有名だった。OBになってからも和哉は何度か応援席からの兄の声に励まされ、そして今はその声は和哉だけに向けられ、欲望を煽られている。
 
「柚にい、かっこいい」

 綺麗より、可愛いより。かっこいい。

 弟からうっとりと、一番言ってもらいたかった言葉を貰ってにんまりと唇だけを吊り上げた柚希は、しかしすぐにその余裕を失うほどに和哉から激しく突き上げられてた。

「兄さん、ゆずき!!」

 箍が外れた和哉の腰遣いは凄まじく、奥に放たれた形跡はないまま柚希が何度気をやっても意識が戻るとまだ揺さぶられているという事態に陥った。
 途中何度か『もうダメ、、無理』と呟いた気がしたが、そのたび和哉に慰められるように口づけを主に上半身のそこここに受け、その穏やかなやり取りに微笑めば、艶美な笑顔に興奮した和哉に齧られて……と繰り返し続けた。

 しかし幸い『開始時刻』が早かったということもあり、普段の休日前の『真夜中から明け方まで』という事態は避けたらしい。

 最後は気絶していた柚希が喉の渇きを覚えて明け方目を覚ますと、部屋はまだ真冬の朝方らしく薄暗い。布団から出るのが億劫でもぞっと寝返りを打てば、身体の節々が絶妙に痛くて顔を顰めた。

(和哉め……。二日連続で良くも思い切りやりやがったな)

 煽ったのは自分だという自覚もあるし、色々セックスで有耶無耶にするのはよくはないとも思いつつ。途中からはお互いに盛り上がってしまったことは否めない。つまりは気持ちよさが先行して流されてしまったのだ。

 あらぬ液体云々は全て拭き取られ、きちんとふわもこパジャマを着せられて、自分のベッドに寝かされていたが、和哉が隣にいない。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

獣人王と番の寵妃

沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚

貴宮 あすか
BL
ベータの新は、オメガである兄、律の身代わりとなって結婚した。 相手は優れた経営手腕で新たちの両親に見込まれた、アルファの木南直樹だった。 しかし、直樹は自分の運命の番である律が、他のアルファと駆け落ちするのを手助けした新を、律の身代わりにすると言って組み敷き、何もかも初めての新を律の名前を呼びながら抱いた。それでも新は幸せだった。新にとって木南直樹は少年の頃に初めての恋をした相手だったから。 アルファ×ベータの身代わり結婚ものです。

グッバイ運命

星羽なま
BL
表紙イラストは【ぬか。】様に制作いただきました。 《あらすじ》 〜決意の弱さは幸か不幸か〜  社会人七年目の渚琉志(なぎさりゅうじ)には、同い年の相沢悠透(あいざわゆうと)という恋人がいる。  二人は大学で琉志が発情してしまったことをきっかけに距離を深めて行った。琉志はその出会いに"運命の人"だと感じ、二人が恋に落ちるには時間など必要なかった。  付き合って八年経つ二人は、お互いに不安なことも増えて行った。それは、お互いがオメガだったからである。  苦労することを分かっていて付き合ったはずなのに、社会に出ると現実を知っていく日々だった。  歳を重ねるにつれ、将来への心配ばかりが募る。二人はやがて、すれ違いばかりになり、関係は悪い方向へ向かっていった。  そんな中、琉志の"運命の番"が現れる。二人にとっては最悪の事態。それでも愛する気持ちは同じかと思ったが… "運命の人"と"運命の番"。  お互いが幸せになるために、二人が選択した運命は── 《登場人物》 ◯渚琉志(なぎさりゅうじ)…社会人七年目の28歳。10月16日生まれ。身長176cm。 自分がオメガであることで、他人に迷惑をかけないように生きてきた。 ◯相沢悠透(あいざわゆうと)…同じく社会人七年目の28歳。10月29日生まれ。身長178cm。 アルファだと偽って生きてきた。

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

事故つがいの夫が俺を離さない!

カミヤルイ
BL
事故から始まったつがいの二人がすれ違いを経て、両思いのつがい夫夫になるまでのオメガバースラブストーリー。 *オメガバース自己設定あり 【あらすじ】 華やかな恋に憧れるオメガのエルフィーは、アカデミーのアイドルアルファとつがいになりたいと、卒業パーティーの夜に彼を呼び出し告白を決行する。だがなぜかやって来たのはアルファの幼馴染のクラウス。クラウスは堅物の唐変木でなぜかエルフィーを嫌っている上、双子の弟の想い人だ。 エルフィーは好きな人が来ないショックでお守りとして持っていたヒート誘発剤を誤発させ、ヒートを起こしてしまう。 そして目覚めると、明らかに事後であり、うなじには番成立の咬み痕が! ダブルショックのエルフィーと怒り心頭の弟。エルフィーは治癒魔法で番解消薬を作ると誓うが、すぐにクラウスがやってきて求婚され、半ば強制的に婚約生活が始まって──── 【登場人物】 受け:エルフィー・セルドラン(20)幼馴染のアルファと事故つがいになってしまった治癒魔力持ちのオメガ。王立アカデミーを卒業したばかりで、家業の医薬品ラボで仕事をしている 攻め:クラウス・モンテカルスト(20)エルフィーと事故つがいになったアルファ。公爵家の跡継ぎで王都騎士団の精鋭騎士。

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

処理中です...