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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね
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多分その頃よりはずっと執拗な口づけはわざと柚希の呼吸を奪うようにぴったりと唇を塞がれて苦しくて胸を叩こうにも頭上で戒められた腕を外すこともできずに本能的に追い詰められる怖ろしさで……。余計に感じてしまう。
漸く雫を互いの唇の間に伝わせながら離れ、空気を貪り乱れた吐息を柚希が整える。和哉は赤く色づく胸飾りがオレンジ色に近い照明に照らされてぬらぬらと光る様や、黒い小さな下着を押し上げて屹立する柚希自身、大きく開かれた光沢があるほどに真っ白で艶めかしい太腿を、捕らえた獲物を満足げに見下ろす獣に似た雄っぽい野性的な表情で見下ろしてくる。
「どうして……」
図らずも同じ言葉できき返してしまうのは長らく共に育った兄弟ならではなのかもしれない。
「どうしてって? そんなの兄さんが好きだから……。好きで好きでたまらなかったから、ずっとずっと僕のものにしたかったからだよ。兄さんが僕のΩになればいいって願いながら、ずっとこんなふうにキスしてた。αがΩの因子を持つ未分化の人に口づけをし続ければ、Ωにできると思ってたから」
「え?」
「だから兄さんは、僕がΩにした。僕のΩなんだよ?」
以前もあった。和哉が柚希に向かい『僕のΩ』と口にしていたのは、比喩か何かだと思っていたのだが実は真にそう思っていたと分かった。
「……なんだよ、それ」
「なのに兄さんは……。晶先輩に揺らめいたり、今もβだった頃のこと懐かしんで……。僕の世界は兄さんが中心に成り立ってるのに……。兄さんの世界は僕だけじゃ不満? こんなに……愛してるのに」
和哉が布団とベッドの脇から取り出したのは、蛍光オレンジが禍々しい大き目のボトルだった。急なことにあれはなんだと目を見張る柚希と目を細めた和哉は口元を歪め可笑し気に意味深に微笑みながら中身蓋を開けると、中の液体をわざと見せつけるように両掌にぬちゃりと塗り付けた。
そのまま液体をパンケーキにメープルシロップを惜しみなくかけるような気軽な仕草で、和哉はとろり、と柚希の胸元にかけてきた。
冷たさと何故か続く温かさ。敏感に膨れた乳首から身体を伝って布団にまでゆっくりと伝い零れていく。何とも言えない感覚に柚希は身悶えていやいやをする。
「かず、こわい!! なんか変、やめて」
「晶先輩はこういうの使わなかった?」
「和哉、お前! ああっ!」
敏感になった胸元を両手を広げて掌で丸く捏ねられ、ぬるつく刺激で余計に立ちあがって身悶える兄を和哉は親指の先で乳輪と、たまに掠めるように乳首を刺激して追い詰めてきた。滑らかな動きで掌全体を使い、しつこくしつこく弾かれると、すすり泣きたくなるほどの悦楽に腰から上の身体が無意識に布団の中にぐりぐりと掘り進むように身悶える。
漸く雫を互いの唇の間に伝わせながら離れ、空気を貪り乱れた吐息を柚希が整える。和哉は赤く色づく胸飾りがオレンジ色に近い照明に照らされてぬらぬらと光る様や、黒い小さな下着を押し上げて屹立する柚希自身、大きく開かれた光沢があるほどに真っ白で艶めかしい太腿を、捕らえた獲物を満足げに見下ろす獣に似た雄っぽい野性的な表情で見下ろしてくる。
「どうして……」
図らずも同じ言葉できき返してしまうのは長らく共に育った兄弟ならではなのかもしれない。
「どうしてって? そんなの兄さんが好きだから……。好きで好きでたまらなかったから、ずっとずっと僕のものにしたかったからだよ。兄さんが僕のΩになればいいって願いながら、ずっとこんなふうにキスしてた。αがΩの因子を持つ未分化の人に口づけをし続ければ、Ωにできると思ってたから」
「え?」
「だから兄さんは、僕がΩにした。僕のΩなんだよ?」
以前もあった。和哉が柚希に向かい『僕のΩ』と口にしていたのは、比喩か何かだと思っていたのだが実は真にそう思っていたと分かった。
「……なんだよ、それ」
「なのに兄さんは……。晶先輩に揺らめいたり、今もβだった頃のこと懐かしんで……。僕の世界は兄さんが中心に成り立ってるのに……。兄さんの世界は僕だけじゃ不満? こんなに……愛してるのに」
和哉が布団とベッドの脇から取り出したのは、蛍光オレンジが禍々しい大き目のボトルだった。急なことにあれはなんだと目を見張る柚希と目を細めた和哉は口元を歪め可笑し気に意味深に微笑みながら中身蓋を開けると、中の液体をわざと見せつけるように両掌にぬちゃりと塗り付けた。
そのまま液体をパンケーキにメープルシロップを惜しみなくかけるような気軽な仕草で、和哉はとろり、と柚希の胸元にかけてきた。
冷たさと何故か続く温かさ。敏感に膨れた乳首から身体を伝って布団にまでゆっくりと伝い零れていく。何とも言えない感覚に柚希は身悶えていやいやをする。
「かず、こわい!! なんか変、やめて」
「晶先輩はこういうの使わなかった?」
「和哉、お前! ああっ!」
敏感になった胸元を両手を広げて掌で丸く捏ねられ、ぬるつく刺激で余計に立ちあがって身悶える兄を和哉は親指の先で乳輪と、たまに掠めるように乳首を刺激して追い詰めてきた。滑らかな動きで掌全体を使い、しつこくしつこく弾かれると、すすり泣きたくなるほどの悦楽に腰から上の身体が無意識に布団の中にぐりぐりと掘り進むように身悶える。
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