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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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  そのまま胸の奥にまで強い酒を飲みこまされたようにどきどきと動悸が止まらなくなって急に力が抜けてしまう。思わず首に腕をかけたまま、へたりと和哉の胸板に顔を埋める。そののち縋るような眼差しで上目遣いに和哉を見上げて唇をもの欲しげに僅かに開いた。
 
(熱い……。熱でも出たみたい。やっぱり酒のせい? あ……。俺、顏が真っ赤かもしれない)

「ほら……。そういう目。清純そうで綺麗な瞳なのに、たまにこうして濡れて艶っぽい感じが、堪らなくなるんだ」
「俺もカズの目元好きだよ。顔かたちの造作だけ見たら女の子みたいに綺麗なのに、眉は直線でキリッと上がってて、でも目元は大きくて、優しげなのが可愛い。うちの店のSNS、和哉目立てのフォロワーも沢山いるって。女の子に騒ぎ立てられるようなイケメンだよなあって惚れ惚れする」

 多分顔にも出ていたのだろう、暗い室内で適度に二人だけがぽわっと照らされた空間の中で陶然としながら弟の筋肉質な胸にしなだれかかると、和哉が何故が僅かに息をのみ少し悔しそうにする。不思議に思って顔を上げたら、本当に苦し気な顔をしていたので柚希も瞳を揺らした。

「カズ? どうした?」
「柚希ってさ·····。ほんとに僕の顔好きだよね?     ちょっと複雑だな」

 なにせ柚希にとってはどこに出しても恥ずかしくのない、自慢の弟なのだから、和哉がそんな風に自分を卑下したような素振りを見せたことにむきになってしまった。

「なんで?     お前はこんなに『いいお顔』なのに気に入ってないの? 周りから羨ましがられるだろ? 端整で華やかだけど品も良くて感じもいい。すごく贅沢だぞ?」

 するとまた『兄さんは何もわかっていない』とたまに窘められる時のように呆れたような失望されたような顔をされたから、柚希はも黙っていられなくなった。柚希の中では弟にがっかりされるのが一番応えることなのだから。

「ちゃんと話せよ? 今俺が話した中で、何が駄目だった?」
「·····この顔は、父さんと似てるから」
「敦哉さんと?    そりゃ確かに似てるよな。どっちも美男だ。敦哉さん本当に若々しくて、髭生やさないと年下に見られがちだからって、久しぶりにあったら髭生えてた。あれ、最高にセクシーだったよな 」
    みるみるうちに顔色をなくして和哉が黙りこくってから、急に柚希のカーディガンの前を寛げると素肌を晒させ、急に外気に触れて鳥肌をたてた柚希は、ガブッと鎖骨の上を齧られた。

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