215 / 296
第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね
44
しおりを挟む
そのまま胸の奥にまで強い酒を飲みこまされたようにどきどきと動悸が止まらなくなって急に力が抜けてしまう。思わず首に腕をかけたまま、へたりと和哉の胸板に顔を埋める。そののち縋るような眼差しで上目遣いに和哉を見上げて唇をもの欲しげに僅かに開いた。
(熱い……。熱でも出たみたい。やっぱり酒のせい? あ……。俺、顏が真っ赤かもしれない)
「ほら……。そういう目。清純そうで綺麗な瞳なのに、たまにこうして濡れて艶っぽい感じが、堪らなくなるんだ」
「俺もカズの目元好きだよ。顔かたちの造作だけ見たら女の子みたいに綺麗なのに、眉は直線でキリッと上がってて、でも目元は大きくて、優しげなのが可愛い。うちの店のSNS、和哉目立てのフォロワーも沢山いるって。女の子に騒ぎ立てられるようなイケメンだよなあって惚れ惚れする」
多分顔にも出ていたのだろう、暗い室内で適度に二人だけがぽわっと照らされた空間の中で陶然としながら弟の筋肉質な胸にしなだれかかると、和哉が何故が僅かに息をのみ少し悔しそうにする。不思議に思って顔を上げたら、本当に苦し気な顔をしていたので柚希も瞳を揺らした。
「カズ? どうした?」
「柚希ってさ·····。ほんとに僕の顔好きだよね? ちょっと複雑だな」
なにせ柚希にとってはどこに出しても恥ずかしくのない、自慢の弟なのだから、和哉がそんな風に自分を卑下したような素振りを見せたことにむきになってしまった。
「なんで? お前はこんなに『いいお顔』なのに気に入ってないの? 周りから羨ましがられるだろ? 端整で華やかだけど品も良くて感じもいい。すごく贅沢だぞ?」
するとまた『兄さんは何もわかっていない』とたまに窘められる時のように呆れたような失望されたような顔をされたから、柚希はも黙っていられなくなった。柚希の中では弟にがっかりされるのが一番応えることなのだから。
「ちゃんと話せよ? 今俺が話した中で、何が駄目だった?」
「·····この顔は、父さんと似てるから」
「敦哉さんと? そりゃ確かに似てるよな。どっちも美男だ。敦哉さん本当に若々しくて、髭生やさないと年下に見られがちだからって、久しぶりにあったら髭生えてた。あれ、最高にセクシーだったよな 」
みるみるうちに顔色をなくして和哉が黙りこくってから、急に柚希のカーディガンの前を寛げると素肌を晒させ、急に外気に触れて鳥肌をたてた柚希は、ガブッと鎖骨の上を齧られた。
(熱い……。熱でも出たみたい。やっぱり酒のせい? あ……。俺、顏が真っ赤かもしれない)
「ほら……。そういう目。清純そうで綺麗な瞳なのに、たまにこうして濡れて艶っぽい感じが、堪らなくなるんだ」
「俺もカズの目元好きだよ。顔かたちの造作だけ見たら女の子みたいに綺麗なのに、眉は直線でキリッと上がってて、でも目元は大きくて、優しげなのが可愛い。うちの店のSNS、和哉目立てのフォロワーも沢山いるって。女の子に騒ぎ立てられるようなイケメンだよなあって惚れ惚れする」
多分顔にも出ていたのだろう、暗い室内で適度に二人だけがぽわっと照らされた空間の中で陶然としながら弟の筋肉質な胸にしなだれかかると、和哉が何故が僅かに息をのみ少し悔しそうにする。不思議に思って顔を上げたら、本当に苦し気な顔をしていたので柚希も瞳を揺らした。
「カズ? どうした?」
「柚希ってさ·····。ほんとに僕の顔好きだよね? ちょっと複雑だな」
なにせ柚希にとってはどこに出しても恥ずかしくのない、自慢の弟なのだから、和哉がそんな風に自分を卑下したような素振りを見せたことにむきになってしまった。
「なんで? お前はこんなに『いいお顔』なのに気に入ってないの? 周りから羨ましがられるだろ? 端整で華やかだけど品も良くて感じもいい。すごく贅沢だぞ?」
するとまた『兄さんは何もわかっていない』とたまに窘められる時のように呆れたような失望されたような顔をされたから、柚希はも黙っていられなくなった。柚希の中では弟にがっかりされるのが一番応えることなのだから。
「ちゃんと話せよ? 今俺が話した中で、何が駄目だった?」
「·····この顔は、父さんと似てるから」
「敦哉さんと? そりゃ確かに似てるよな。どっちも美男だ。敦哉さん本当に若々しくて、髭生やさないと年下に見られがちだからって、久しぶりにあったら髭生えてた。あれ、最高にセクシーだったよな 」
みるみるうちに顔色をなくして和哉が黙りこくってから、急に柚希のカーディガンの前を寛げると素肌を晒させ、急に外気に触れて鳥肌をたてた柚希は、ガブッと鎖骨の上を齧られた。
0
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-
悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。
拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。
逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。
兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――
【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚
貴宮 あすか
BL
ベータの新は、オメガである兄、律の身代わりとなって結婚した。
相手は優れた経営手腕で新たちの両親に見込まれた、アルファの木南直樹だった。
しかし、直樹は自分の運命の番である律が、他のアルファと駆け落ちするのを手助けした新を、律の身代わりにすると言って組み敷き、何もかも初めての新を律の名前を呼びながら抱いた。それでも新は幸せだった。新にとって木南直樹は少年の頃に初めての恋をした相手だったから。
アルファ×ベータの身代わり結婚ものです。
グッバイ運命
星羽なま
BL
表紙イラストは【ぬか。】様に制作いただきました。
《あらすじ》
〜決意の弱さは幸か不幸か〜
社会人七年目の渚琉志(なぎさりゅうじ)には、同い年の相沢悠透(あいざわゆうと)という恋人がいる。
二人は大学で琉志が発情してしまったことをきっかけに距離を深めて行った。琉志はその出会いに"運命の人"だと感じ、二人が恋に落ちるには時間など必要なかった。
付き合って八年経つ二人は、お互いに不安なことも増えて行った。それは、お互いがオメガだったからである。
苦労することを分かっていて付き合ったはずなのに、社会に出ると現実を知っていく日々だった。
歳を重ねるにつれ、将来への心配ばかりが募る。二人はやがて、すれ違いばかりになり、関係は悪い方向へ向かっていった。
そんな中、琉志の"運命の番"が現れる。二人にとっては最悪の事態。それでも愛する気持ちは同じかと思ったが…
"運命の人"と"運命の番"。
お互いが幸せになるために、二人が選択した運命は──
《登場人物》
◯渚琉志(なぎさりゅうじ)…社会人七年目の28歳。10月16日生まれ。身長176cm。
自分がオメガであることで、他人に迷惑をかけないように生きてきた。
◯相沢悠透(あいざわゆうと)…同じく社会人七年目の28歳。10月29日生まれ。身長178cm。
アルファだと偽って生きてきた。

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
事故つがいの夫が俺を離さない!
カミヤルイ
BL
事故から始まったつがいの二人がすれ違いを経て、両思いのつがい夫夫になるまでのオメガバースラブストーリー。
*オメガバース自己設定あり
【あらすじ】
華やかな恋に憧れるオメガのエルフィーは、アカデミーのアイドルアルファとつがいになりたいと、卒業パーティーの夜に彼を呼び出し告白を決行する。だがなぜかやって来たのはアルファの幼馴染のクラウス。クラウスは堅物の唐変木でなぜかエルフィーを嫌っている上、双子の弟の想い人だ。
エルフィーは好きな人が来ないショックでお守りとして持っていたヒート誘発剤を誤発させ、ヒートを起こしてしまう。
そして目覚めると、明らかに事後であり、うなじには番成立の咬み痕が!
ダブルショックのエルフィーと怒り心頭の弟。エルフィーは治癒魔法で番解消薬を作ると誓うが、すぐにクラウスがやってきて求婚され、半ば強制的に婚約生活が始まって────
【登場人物】
受け:エルフィー・セルドラン(20)幼馴染のアルファと事故つがいになってしまった治癒魔力持ちのオメガ。王立アカデミーを卒業したばかりで、家業の医薬品ラボで仕事をしている
攻め:クラウス・モンテカルスト(20)エルフィーと事故つがいになったアルファ。公爵家の跡継ぎで王都騎士団の精鋭騎士。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる