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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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 至近距離でまじまじと見つめられるとさすがに照れる。いつの間にか映画の代わりに和哉が持ち込んだスピーカーから音楽がかかっていて、これまたしっとりとした外国の女性のハスキーな歌声で夜の少し気だるげな雰囲気が出ていた。
 部屋の中はキッチンスペースの明かりがまだ灯るほかは間接照明だけが付けられて映画館の上映前程度の明るさを保たれている。

(……いきなりムード満点すぎだろ)

 ソファーの上に下ろされるかと思ったら、和哉が何食わぬ顔をして、柚希をお姫様抱っこしたまま、王様のようにどかっとソファーに腰を下ろしてしまった。
 思わず戸惑いと驚きで顔を見上げたら、「なに?」とか笑顔で応じられて二の句を継げない。
  
(このまま、食べろと?)

 しかし和哉が折角先ほどまでの色々を今は水に流してくれようとしているのだからと柚希は顔には出さず抱えられるがままになった。

「お腹すいた……。まずは食べよう。な? ちょい明るくしてもいい? 食べ物、明るい方が美味しく見える方がいいだろ?」
「そうだね」

 といって和哉は手早くテーブルの上にご丁寧に置かれていたキャンドル型のライトと足元にあった丸い灯りの一つをソファーの上に置いて光源を増やすからもはやなすすべがない。

(いい感じに美味しそうに見える)

 敦哉がプレゼントしてくれたシャンパンも景気よく開けて、和哉の長い腕が柚希が前にいる体勢をものともせずにグラスに注がれた液体は淡い黄金色でしゅわりとは弾ける。
 
「よし、分かった。じゃあ、いただきますしよう」
「そうだね。いただきます。はい、あーん」
「え。あーん?」

 番になったお祝いにと届いたものと同じお店のオードブル。今回はクリスマスらしく赤や緑の櫛が刺さっている。その中でフルーツトマトとチーズがサンタのようにも見えるピンチョスを口元に差し出してきた。

  柚希は見た目は優美でほっそり目の姿形だが大柄なものの多いバスケ部内でもよく食べる方だった。日頃はゆったりした食事など柚希に求めても皆無で、食卓で弟と二人向かい合って『いただきます』をしたら黙々と食すことの方が多い。
 だからもっとゆったり食事を楽しみたいという和哉の意向なのかもしれないが、とにかくどんどん食べたい柚希もここはぐっと我慢をした。

(姫抱っこで、あーん、だと? )
 

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