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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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「兄さん大丈夫??」
「う。あ……。ちょい、脚吊りそうになっただけ、大丈夫!!」

 和哉が今にも開けそうな扉を反対側から抑えて柚希は蹲る。

(やらかした、絶対やらかしてる!!!!)

 色々あった夕方から今の今まで忘れていた。自分がしでかしてしまった大大大失敗のことで柚希の頭の中はいっぱいになってしまった。

(最悪、最低、ううあああああ。やってしまった……。 カズにばれないようにわざわざ職場に隠し持ってたプレゼント……、鞄に入れた記憶ない! 絶対置いてきてる!!!)

 晶がきて気が動転してしまい、持ち帰るべき荷物を整えないまま飛び出してきてしまった。結果三枝が今日のオードブルとケーキを手渡してくれたけれどプレゼントまで頭が回らなかった。

(どど、ど、ど、どうしよう……。和哉は絶対今晩か明日の朝にでもプレゼント渡してくれるつもりだよな? ツリーのとこにこれ見よがしに置いてあったもんな。あ、言い方悪いか。その辺も含めてあいつのことだから完璧に何かしようとしてくれてるよな?? 俺だって今日渡そうと思ってあそこまで準備してたのに、何やってんだよ。ほんと俺のバカバカバカ!!!! 取りに行くか? 今からタクシー飛ばして鍵開けて入る?? 和哉になんて言って出ればいいのか……。折角サプライズ予定がばれたら意味ないし!! あああもう。仕方ない……。今日はイブ、明日はクリスマス。とりあえずマフラーだけ渡して、本命あっちは明日渡せばまだ間に合うってことで)

「柚にい? 本当に大丈夫?」

 がらっと扉が開いて冷たい床にへたり込んでいる姿を目撃されてしまって、情けない顔でへらっと笑って弟を見上げれば、彼が腕を差し伸べてゆっくりと立たせてくれた。

「湯あたりしたの?」

 そのまま抱き上げようとするから「へ、へいき」と呟いたがやっぱり抱き上げられてしまう。反射的にしがみ付いたらそれは嬉しそうに笑われて、まだ濡れ髪から雫の滴ってきた額に口付けられた。

 「やっぱりこっちの色にしてよかった。風呂上がりで肌が真っ白で余計透き通るみたいに見えるから、余計にこの綺麗なモーブピンク、柚希によく似合ってる」
 「ふぇっ·····、ありがと」

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