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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね
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とりあえず、股間のポジショニングもあったもんじゃないパンツを大人しく穿き、曇った鏡の水滴を掌で雑に拭うと、映った自分の姿をちらりと見て柚希は『はあ……』と一つ溜息をつく。
濡れて額に張り付いた黒髪をかき上げ額を出して大人の男っぽさを出してみようとしたが、すぐに曇っていた鏡に白い身体だけがぽわっと映った。
(尻が小さくてもなあ……。全体的に線が細いっての本人は気にしてるんだから、誉め言葉じゃないぞ、和哉)
小さな尻、細い腰などと和哉に嬉しそうに言われたが、バスケ部時代周りと比べて当たりの弱い薄っぺらい身体がコンプレックスだった。その代わりに試合中持ち前のジャンプ力や瞬発力を活かしていたわけだが、内心晶や和哉のようにパワフルでアグレッシブな攻撃をしてみたいと常々憧れていた。
柚希だって、今でも腹筋は鍛えつづけている。バッキバキな和哉のシックスパックには負けるがそれでもちゃんと腹の辺りにしっかり線は残っている。
抱き合う時、和哉の指の長い大きな掌で腰のラインに沿って掴みあげられ、時には後ろから揺さぶられながら、括れが強調されて綺麗だなどと褒めそやされるが、小さな尻と共に柚希的にはあまり気にいっていない。できれば敦哉や和哉みたいな戦士の如き立派な身体つきに生まれたかったと二人と並ぶと華奢な自分が残念でならないのだ。
柚希の亡くなった父は風流を愛し、着物の良く似合う美男子だったらしいが、αの割に早死にした上、身体つきは柚希に似ていたらしいからもうこれは遺伝なので仕方なさそうだ。
(紐パン、サイズあってる、のか? ケツ大分はみ出てるけど、これで正解? あいつ俺がこんなの穿いて嬉しいのか? ……まあ穿き手はともかく、下着自体の雰囲気はエロいか。よく見ると柄入ってるし、ちょい透けてる......。カズのやつ。あんな爽やかそうな顔して、意外とむっつりだな……)
早々にふわもこのズボンに足を通して尻を隠してしまうと素肌の上に上着も羽織る。風呂から出たての身体はほかほかと湯気が立ち昇り、まだちょっと羽織るには熱いぐらいだが、前をはだけさせておくのもどうかと思ってボタンをいそいそと止めた。
今までは夏場パンいちで弟の前に出て冷房の前に立って涼むぐらいのことは平気でしていたのだが、流石に和哉を『異性』であると認識してからはそれなりに慎むようになったのだ。それにちゃんと着ておかないと遠慮なく和哉が手を出してくるから要注意だ。お腹もすいているし、行き成り押し倒されるのは勘弁してもらいたい。せめて腹ごしらえはさせて欲しい。
(食事の時についでに酒飲んじゃえば、ややくい込み気味に紐パンはいてる、このいたたまれない気持ちも和らぐか……。でも明日も仕事だしなあ……。酒飲むとすぐ眠くなるし……。明日のシフト……。仕事……、職場……、あ? ああ!! え、あ?? 俺まさか……)
「ああああああ!!!!!」
思わず上げた叫び声に反応して和哉が床をみしみし言わせて足早に近づいてきたら、柚希は思わず口元に手を当ててしゃがみこんだ。
濡れて額に張り付いた黒髪をかき上げ額を出して大人の男っぽさを出してみようとしたが、すぐに曇っていた鏡に白い身体だけがぽわっと映った。
(尻が小さくてもなあ……。全体的に線が細いっての本人は気にしてるんだから、誉め言葉じゃないぞ、和哉)
小さな尻、細い腰などと和哉に嬉しそうに言われたが、バスケ部時代周りと比べて当たりの弱い薄っぺらい身体がコンプレックスだった。その代わりに試合中持ち前のジャンプ力や瞬発力を活かしていたわけだが、内心晶や和哉のようにパワフルでアグレッシブな攻撃をしてみたいと常々憧れていた。
柚希だって、今でも腹筋は鍛えつづけている。バッキバキな和哉のシックスパックには負けるがそれでもちゃんと腹の辺りにしっかり線は残っている。
抱き合う時、和哉の指の長い大きな掌で腰のラインに沿って掴みあげられ、時には後ろから揺さぶられながら、括れが強調されて綺麗だなどと褒めそやされるが、小さな尻と共に柚希的にはあまり気にいっていない。できれば敦哉や和哉みたいな戦士の如き立派な身体つきに生まれたかったと二人と並ぶと華奢な自分が残念でならないのだ。
柚希の亡くなった父は風流を愛し、着物の良く似合う美男子だったらしいが、αの割に早死にした上、身体つきは柚希に似ていたらしいからもうこれは遺伝なので仕方なさそうだ。
(紐パン、サイズあってる、のか? ケツ大分はみ出てるけど、これで正解? あいつ俺がこんなの穿いて嬉しいのか? ……まあ穿き手はともかく、下着自体の雰囲気はエロいか。よく見ると柄入ってるし、ちょい透けてる......。カズのやつ。あんな爽やかそうな顔して、意外とむっつりだな……)
早々にふわもこのズボンに足を通して尻を隠してしまうと素肌の上に上着も羽織る。風呂から出たての身体はほかほかと湯気が立ち昇り、まだちょっと羽織るには熱いぐらいだが、前をはだけさせておくのもどうかと思ってボタンをいそいそと止めた。
今までは夏場パンいちで弟の前に出て冷房の前に立って涼むぐらいのことは平気でしていたのだが、流石に和哉を『異性』であると認識してからはそれなりに慎むようになったのだ。それにちゃんと着ておかないと遠慮なく和哉が手を出してくるから要注意だ。お腹もすいているし、行き成り押し倒されるのは勘弁してもらいたい。せめて腹ごしらえはさせて欲しい。
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「ああああああ!!!!!」
思わず上げた叫び声に反応して和哉が床をみしみし言わせて足早に近づいてきたら、柚希は思わず口元に手を当ててしゃがみこんだ。
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