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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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  ちなみに赤と白は柚希と和哉の所属していたバスケチームのユニフォームカラーだから二人ともなんとなく親しみがある。そしていつも二人で座っているソファーの横に今朝はなかったはずのクリスマスツリーがどーんと飾られており、その足元にはディスプレイなのか本物なのか、いくつものプレゼントが置かれている。
 
「驚いた?」

 柚希の嬉しそうに紅潮した頬を見て、和哉は満足げな顔にこりっと花が咲いたように綺麗に笑うと、柚希の肩を抱き寄せ頬に軽く口づけてくる。

(なにこのいい男? どんな育て方したらこんなふうに育つの? 本当に俺の弟なのか?)

 なんて思いながら柚希も惚れ惚れと和哉を見上げてしまう。
 
「驚いた。別のうちに来たみたいだ。このツリーは?」
「母さんに言って家のを貸してもらってきた。見覚えない? 僕ら家族が初めてみんなで集まったクリスマスイブにさ、父さんケーキもだけどこのでっかいツリー買ってきて、でもたしか三年も飾らなかったよね?」
「俺もすぐ高校生になったし、和哉も中学に上がってツリーで喜ぶような年じゃなくなってから、どっかしまわれてたんだよな。実際デカいし……。でもすごく綺麗だな。クリスマスって感じがするし」
「でしょ? 部屋の片づけ頑張った甲斐があったよ。……まあ実家の部屋に不用品運んだだけだけど」

 柚希は持ち物が多い方ではないが、和哉が半同棲のような形で転がり込んできてからはお洒落な彼の諸々が増えて、意外とものだらけになっていた。それも今日はすっきり片付いて、リビング代わりに使っている部屋のソファーの隣に電飾までちっかちっかとついてこれまた赤と白と金を基調にしたオーナメントが品よく飾られていた。

「和哉、頑張ってくれたんだな。ありがとう」

 背伸びして頭をくしゃくしゃっと撫ぜてやれば、小さな頃のように懐っこい笑顔を見せてくれたので、きゅんっとした柚希はそのまま和哉に抱き着いた。

「じゃ、スープ温めるから、兄さんそっちにオードブル広げて? 映画は……、なんか選んどいて?」

 ぎゅぎゅっと兄を胸の中に抱き込んでからゆっくりと身体を離して互いに視線を絡めて微笑みあってから、和哉は台所に向かっていった。

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