仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛

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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

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 その手は今、かつて愛した男が何を語るというのかという怯えの中で、やや緊張気味に胸の前でわが身を守るように組まれている。

「そんな顔するな。ただこれを渡しに来ただけだ」
「え?」

 白い小ぶりな紙袋を差し出されて戸惑い顔の柚希が長身の晶を見上げると、大柄な彼が一歩近寄ってきたので反射的に引くか引くまいか迷って柚希はびくっと身体を震わせた。
そんな柚希の姿に晶は太い眉をひそめ、寂しげに苦笑を漏らした。

「……そんなに警戒しないでくれ」

 流石に失礼でそして自意識過剰な態度をとってしまったと、柚希は顔を赤らめた。

「いや、そんなつもりじゃないよ。わざわざありがと。それ、なに?」
「最後に来た時、ワイヤレスイヤホンの充電器をうちに置いていっただろう?    それを返しにきた」
「ああ……、なくしたと思ってた。持っててくれたんだ」

 それなら捨ててくれても良かったのにと言いそうになって、どんな言い草なのだと自重してただただ頭を下げる。

 最後に晶の部屋を訪れた時は発情期の二週間前だったか……。翌週からは晶の出張も重なって忙しそうだったのもあり、連絡がマメにできなかった。

(その直後にあの、発情期が来たんだ……)

 やや迷いながらも差し出された紙袋を素直に受け取って、再び「ありがとう」と礼を言いつつ中身を覗きこむと、白い充電器兼保管ケースと共にもう一つ見慣れぬ、光沢のある白いリボンの掛かった箱が入っていた。

「これは?」
「……充電器がないとなったら、イヤホン自体使えないから、もうイヤホンの方を捨てている可能性があると思って……。代わりのものも、用意していた。柚希、前から開放型のイヤホン欲しがってただろ? 良かったら使ってくれ。もちろん、……捨ててくれても構わない」
   1度受けとってしまったものを突き返すことは流石にしづらく、柚希の眉の下がった戸惑い顔をみて晶はこんな風に付け加えた。

「もったいぶってクリスマスに渡そうなんてしなければよかったな。どんどん渡せばよかったんだ」

 晶の言葉の意味を図りかねて、二人はそのまま少し黙り込んだまま柚希はイルミネーションの方に視線を外そうとしたが、じっと柚希を見つめる晶の眼差しからは逃れられなかった。

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