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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね
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しかし父の敦哉も変に真面目で一本気なところがあるから亡き妻の意思を継ごうと思っているのかもしれない。
クリスマス会では柚希と桃乃が大奮発をして和哉にバスケットボールをプレゼントしてくれた。和哉は嬉しくて明日柚希が部活から帰ってきたら一緒に練習をしようねと約束をした。
父からも柚希へプレゼントとしてマフラーを渡していた。少し前に柚希が和哉たちのアパートから戻る時に、寒いだろうと敦哉が巻いてあげたマフラー。
それを『とても暖かかったです。ありがとうございました』と柚希が頬を染めて嬉しそうに丁重に紙袋に入れて返しに来た。敦哉はそれを覚えていて、同じブランドの綺麗なマスタード色のマフラーをプレゼントしてあげていたのだ。
「敦哉さん、ありがとうございます」
柚希は感極まって上ずった声で礼を言うと、真っ白な頬を林檎みたいに紅潮せていた。
そのあまりの喜びように和哉は胸に芽生えたもやもやと昏い気持ちが湧き上がるのを消すことができなくなってしまった。つまりは父に対してこの時初めて激しい嫉妬心を抱いたのだ。
上等なマフラーはふんわりと柚希のほっそり嫋やかな首筋を護り、色白の彼に黄色はよく映える。何せ名前が『柚』希だから持ち物に黄色が多いのだ。
和哉も自分のお小遣いから柚希に黄色っぽいふさふさした犬のマスコットの付いたキーホルダーを買っていたけれど、それが父のプレゼントと比べたらいかにも安っぽく惨めに見えしまって悲しくなった。
一生懸命書いた手紙と共にその場で渡すことができずに、椅子と自分の背の間にこっそりしまい込んでしまった。
その日の晩は柚希に泊って欲しいとわがままを言って、一度寝巻を取りに戻った柚希を待つ間に和哉は風呂に入った。
風呂から出て廊下を歩いていたら、敦哉と柚希が何やら話し合っている声が漏れ聞こえてきたのだ。
「……じゃあ、敦哉さん。俺が枕元に置きますね?」
「そうしたら、紙袋あそこに隠して置いておくから……」
和哉の脳裏に先ほどの柚希の耀かんばかりの笑顔がよぎり、嬉しいはずなのに胸が焦げ付く。
和哉はわざと乱暴に扉を開けると、二人は驚いて会話を止めた。
「あ、カズ。お風呂でたの?」
敦哉が長身をかがめ、柚希に囁くように優しく話しかけていたようだ。
その雰囲気がまた二人だけの世界を醸し出していて、和哉はむかむかっときて、思わずふわふわとした白いフリースのパジャマ姿の柚希の手首を痛いほどに掴み上げた。
「柚にい。もう寝よう。明日早いんだろ?」
「え、ああ」
「柚くん、和哉。お休み。じゃあ頼んだね?」
「はい。おやすみなさい」
(なにが「はい❤」だよ。嬉しそうに……。初めに柚にいと仲良くなったのは僕なのに、父さんのことみてうっとりして、なんだよ! あーもう。むかつく。こうなったら……)
むかっときたままの和哉は決心した。
(絶対に柚にいより先に眠ってやらない。プレゼントを置けなくしてやるんだからな)
クリスマス会では柚希と桃乃が大奮発をして和哉にバスケットボールをプレゼントしてくれた。和哉は嬉しくて明日柚希が部活から帰ってきたら一緒に練習をしようねと約束をした。
父からも柚希へプレゼントとしてマフラーを渡していた。少し前に柚希が和哉たちのアパートから戻る時に、寒いだろうと敦哉が巻いてあげたマフラー。
それを『とても暖かかったです。ありがとうございました』と柚希が頬を染めて嬉しそうに丁重に紙袋に入れて返しに来た。敦哉はそれを覚えていて、同じブランドの綺麗なマスタード色のマフラーをプレゼントしてあげていたのだ。
「敦哉さん、ありがとうございます」
柚希は感極まって上ずった声で礼を言うと、真っ白な頬を林檎みたいに紅潮せていた。
そのあまりの喜びように和哉は胸に芽生えたもやもやと昏い気持ちが湧き上がるのを消すことができなくなってしまった。つまりは父に対してこの時初めて激しい嫉妬心を抱いたのだ。
上等なマフラーはふんわりと柚希のほっそり嫋やかな首筋を護り、色白の彼に黄色はよく映える。何せ名前が『柚』希だから持ち物に黄色が多いのだ。
和哉も自分のお小遣いから柚希に黄色っぽいふさふさした犬のマスコットの付いたキーホルダーを買っていたけれど、それが父のプレゼントと比べたらいかにも安っぽく惨めに見えしまって悲しくなった。
一生懸命書いた手紙と共にその場で渡すことができずに、椅子と自分の背の間にこっそりしまい込んでしまった。
その日の晩は柚希に泊って欲しいとわがままを言って、一度寝巻を取りに戻った柚希を待つ間に和哉は風呂に入った。
風呂から出て廊下を歩いていたら、敦哉と柚希が何やら話し合っている声が漏れ聞こえてきたのだ。
「……じゃあ、敦哉さん。俺が枕元に置きますね?」
「そうしたら、紙袋あそこに隠して置いておくから……」
和哉の脳裏に先ほどの柚希の耀かんばかりの笑顔がよぎり、嬉しいはずなのに胸が焦げ付く。
和哉はわざと乱暴に扉を開けると、二人は驚いて会話を止めた。
「あ、カズ。お風呂でたの?」
敦哉が長身をかがめ、柚希に囁くように優しく話しかけていたようだ。
その雰囲気がまた二人だけの世界を醸し出していて、和哉はむかむかっときて、思わずふわふわとした白いフリースのパジャマ姿の柚希の手首を痛いほどに掴み上げた。
「柚にい。もう寝よう。明日早いんだろ?」
「え、ああ」
「柚くん、和哉。お休み。じゃあ頼んだね?」
「はい。おやすみなさい」
(なにが「はい❤」だよ。嬉しそうに……。初めに柚にいと仲良くなったのは僕なのに、父さんのことみてうっとりして、なんだよ! あーもう。むかつく。こうなったら……)
むかっときたままの和哉は決心した。
(絶対に柚にいより先に眠ってやらない。プレゼントを置けなくしてやるんだからな)
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