仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛

文字の大きさ
上 下
178 / 296
第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね

7

しおりを挟む
☆和哉視点です。子どもの頃のクリスマスの思い出は?

(クリスマスの思い出……)
 
 和哉にとってクリスマスの思い出といえば幼い頃に父と母と過ごした温かな記憶もあるが、和哉が小5で母が亡くなったその年の冬、柚希たち母子と行ったささやかなクリスマスパーティーとその晩のことが最も印象深い。

 その年のクリスマスはたまたま土曜日に当たっていた。昼は近所の寺に母の墓参りに行き、夜は父子二人より和哉が懐いている柚希が一緒の方が喜ぶだろうと、敦哉が気を利かせてくれて桃乃も交えた四人でクリスマスの食卓を囲むことになったのだ。
 柚希と桃乃が丹精込めた料理を和哉たちの家まで持ってきてくれて、敦哉が柚希が喜ぶからとこれまた大きな大きなクリスマスケーキを奮発して買ってきた。父母どちらの発案か分からないが、多分ちょっと発想が飛んでいるところがある桃乃が夫の位牌と和香の位牌も食卓を囲めるようにとテーブルに置いて、小さなお膳まで据えていた。

(これ、流石にシュールすぎでしょ)

 と思春期に差し掛かっていた和哉は思ったが、寒くないようにと位牌にハンドタオルを着せ掛けてあげている柚希も優しいけれど大分天然で愉快なお兄ちゃんだなあと思った。そして柚希のそういうところが可愛いのだ。

 そんな中、なんとなく大人たちと柚希がたまにトイレやら別の部屋に何か取りに行くやら借りに行くやらいって、和哉に黙ってこそこそと何やら相談しているのが気に障っていたのだ。
 時折廊下から『プレゼントが……』とか『サンタが……』とか聞こえてくるのでこっそりやるならもっとしっかりこっそりして欲しいとも思った。しかし敦哉、桃乃、柚希の三人はしっかり者の癖にどこか抜けているという点では似たもの同士ばかりで、つまりは全員ボケの為突っ込みの和哉がいないと誰もが似たような天然な行動をとりがちなのだ。

(多分、あれだな……。枕元にプレゼント置こうか今サンタいないよってカミングアウトして渡すかを相談してるんだ……)

 母の和香(こちらも天然)はのちに聞いた話だと中学生を卒業するまでサンタがいると信じているタイプの女の子だったらしい。
 高校の同級生である父と付き合いだした時、父が母にプレゼントを渡した時にそんな会話をしたらしい。子どもの頃は祖父の職場の友人でサンタっぽい人に頼んで扮装をしてプレゼントを手渡ししてもらったり、大きくなってからは枕元にプレゼントを置いて、和香がサンタの為に用意をしたビスケットと牛乳を食べてサンタの存在感を見せつけるという熱のこもり様だ。
 愛情いっぱいで娘命の、今は遠方にすむ祖父母らしいやり取り。和香が亡くなった時当たり所がなくて父を責めたことを悔いて、今年のクリスマスのは父への長い手紙と和哉へのクリスマスプレゼント、そして仏壇には2人が贈ってくれた母が愛した優美な薄ピンクの薔薇が飾られていた。

 そんな和香なので勿論、和哉への「サンタは実在する!」という布教活動を迫真の演技でし続けてきたわけで、サンタはいないだろうなあと小2ぐらいから薄々分かっていた和哉は優しい母に付き合ってサンタを信じるふりをし続けざるを得なかった。

(僕ももう高学年だし、母さん居ないんだからもうそろそろあれ終わりでいいんだけどなあ)
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...