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第二部 ありがとう、おめでとう よろしくね
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★毎日読んでくださる皆様、ここまで一気にたどり着いてくださった皆様。
本当にありがとうございます✨
「罪滅ぼしなんてやめてください。俺……敦哉さんには沢山恩があるから。母さんのことも大切にしてくださってるし、感謝しかないよ」
「柚希、今度は僕ともスィーツ店巡りを再開しようね」
恋人ができてから和哉と出かける時間が減っていたのは確かだった。恋人、という言葉にはまだぎゅっと胸が締め付けられる。
一瞬頭の中化に思い浮かんだ寂しげな笑顔を柚希はあえて霧散させる。
「ふふ。たまに二人で柚希のドーナッツ店も見に行ってたのよ」
「桃乃さんがドーナツたくさん買って近所やお友達にも配って歩いてたから、隣のお子さんには『ドーナッツママ』ってあだ名付けられたんだよね」
「え、そうだったの?」
話題が明るく移り変わっていく。厨房に柚希と会えるわけではないのに、お店の助けになるようにと沢山ドーナツを買って帰っていてくれたこと。二人がずっと柚希を気にかけ想い続けてくれたことを柚希は今になって初めて知ったのだ。
敦哉は相変わらず柚希にとって目標とすべき憧れの男性だ。ついついじいっとうっとり見つめてしまうが、そのたび横から視線を感じてちらりと見ると、和哉がちょっと口をむうっとさせたような面白くなさそうな顔をする。まるで小さなカズ君に戻ったみたいだ。
(ふふ。カズ君って本当はこういう子だったよね)
ここ数年は柚希に対しては優等生な態度が強かった和哉も、段々と昔の彼のような飾らない表情をしてくれるのが柚希は嬉しい。
そのたび桃乃が高い声で軽やかにからかう。
「カズくんってば相変わらずやきもち焼きさんだわね。昔から柚希が他の人のこと褒めたり、楽しそうにおしゃべりしたりしてると、そんな顔してたものね」
「桃乃さん、ひどいよ」
「もう番になったんだからどんとかまえなさい?」
「え? 母さん、ちっちゃい頃から和哉が俺のことずっと好きだったって知ってたの?」
「あらあら、鈍感さん」
「柚君……。それは俺でも知っていたなあ。むしろどうしてわからなかったのか、不思議でならない」
敦哉にまでからかわれて、柚希は恥ずかしくなって顔を真っ赤にしていた。
ともかく両親の歓喜に満ちた顔を見るたび、色々あったけれどこうして番を作って家に戻ってこられて本当に良かったと心底ほっとして地に足がようやくついた気持ちになった。
本当にありがとうございます✨
「罪滅ぼしなんてやめてください。俺……敦哉さんには沢山恩があるから。母さんのことも大切にしてくださってるし、感謝しかないよ」
「柚希、今度は僕ともスィーツ店巡りを再開しようね」
恋人ができてから和哉と出かける時間が減っていたのは確かだった。恋人、という言葉にはまだぎゅっと胸が締め付けられる。
一瞬頭の中化に思い浮かんだ寂しげな笑顔を柚希はあえて霧散させる。
「ふふ。たまに二人で柚希のドーナッツ店も見に行ってたのよ」
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「え、そうだったの?」
話題が明るく移り変わっていく。厨房に柚希と会えるわけではないのに、お店の助けになるようにと沢山ドーナツを買って帰っていてくれたこと。二人がずっと柚希を気にかけ想い続けてくれたことを柚希は今になって初めて知ったのだ。
敦哉は相変わらず柚希にとって目標とすべき憧れの男性だ。ついついじいっとうっとり見つめてしまうが、そのたび横から視線を感じてちらりと見ると、和哉がちょっと口をむうっとさせたような面白くなさそうな顔をする。まるで小さなカズ君に戻ったみたいだ。
(ふふ。カズ君って本当はこういう子だったよね)
ここ数年は柚希に対しては優等生な態度が強かった和哉も、段々と昔の彼のような飾らない表情をしてくれるのが柚希は嬉しい。
そのたび桃乃が高い声で軽やかにからかう。
「カズくんってば相変わらずやきもち焼きさんだわね。昔から柚希が他の人のこと褒めたり、楽しそうにおしゃべりしたりしてると、そんな顔してたものね」
「桃乃さん、ひどいよ」
「もう番になったんだからどんとかまえなさい?」
「え? 母さん、ちっちゃい頃から和哉が俺のことずっと好きだったって知ってたの?」
「あらあら、鈍感さん」
「柚君……。それは俺でも知っていたなあ。むしろどうしてわからなかったのか、不思議でならない」
敦哉にまでからかわれて、柚希は恥ずかしくなって顔を真っ赤にしていた。
ともかく両親の歓喜に満ちた顔を見るたび、色々あったけれどこうして番を作って家に戻ってこられて本当に良かったと心底ほっとして地に足がようやくついた気持ちになった。
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