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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)

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「うわああ、びっくりしたああ!! 和哉急に何しでかすんだよ!」

 コンテストの授賞式の後も二人はそろって商店街を歩く予定だったのだが、さっきの叙任式で会場が騒然としてしまった。それで一時的に引っ込んだ本部の三階にある会議室から出るに出られなくなってしまったのだ。
 飲み物やご褒美のハロウィン限定南瓜餡パンを受け取り一息をついたら、着替えをしてこのままイベントが終了するまで休んでいいことになった。
 会議室の椅子に柚希は腰をかけ、猫耳の付いたまま、着替えの入った袋を枕にするように頭を突っ伏している。
その姿がなんだ本物の猫をほうふつとさせ愛らしい。和哉が声を立てて笑うと、柚希は真っ赤になった顔を上げた。

「和哉~! 何笑ってるんだよ」
「さっきのあれ、大分うけたみたいだね。ほら」

 ちゃっかりポケットにスマホを持ち歩いていた和哉が商店街のSNSを見せてくれたら、そこには先ほどの狼王子の騎士叙任式の様子や、王子様の姫抱っこ姿の様子がすでにアップ済みになっていた。
 仲良く頭を突き合わせて画面を共に覗きこみ、にこにこしている和哉とは対照的に柚希は顔面蒼白といった感じに慌てている。

「引き受けるんじゃなかった……。兄弟そろって何やってるんだって、世の中に拡散されたら恥ずかしすぎる」

    和哉はこつん、と額を柚希のそれに当てる。

「兄弟じゃなくて、番だよ。柚希」
「番……。そうだな」

 柚希は頬を上気させ、今日一番の柔らかな美しい笑顔を見せた。
 柚希のこんな愛情深い嫋やかな微笑みは、初めて出会った頃から和哉だけの宝物だ。
 和哉は感極まりながら隣の椅子を引くと、柚希に向かってゆっくりと身をかがめる。白い頬に指先を這わすと、柚希は少しだけ潤んだ瞳を瞑る。

「柚希、石鹸の香りがする」
「……せっけん? 汗かいたのに?」
「柚希のフェロモンだよ。僕を誘ってるってこと」
 
 もう柚希が清潔感あるこの香りを漂わせ、晶を誘うこともない。

(僕だけの香りだ)

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