164 / 296
黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)
20
しおりを挟む
「うわああ、びっくりしたああ!! 和哉急に何しでかすんだよ!」
コンテストの授賞式の後も二人はそろって商店街を歩く予定だったのだが、さっきの叙任式で会場が騒然としてしまった。それで一時的に引っ込んだ本部の三階にある会議室から出るに出られなくなってしまったのだ。
飲み物やご褒美のハロウィン限定南瓜餡パンを受け取り一息をついたら、着替えをしてこのままイベントが終了するまで休んでいいことになった。
会議室の椅子に柚希は腰をかけ、猫耳の付いたまま、着替えの入った袋を枕にするように頭を突っ伏している。
その姿がなんだ本物の猫をほうふつとさせ愛らしい。和哉が声を立てて笑うと、柚希は真っ赤になった顔を上げた。
「和哉~! 何笑ってるんだよ」
「さっきのあれ、大分うけたみたいだね。ほら」
ちゃっかりポケットにスマホを持ち歩いていた和哉が商店街のSNSを見せてくれたら、そこには先ほどの狼王子の騎士叙任式の様子や、王子様の姫抱っこ姿の様子がすでにアップ済みになっていた。
仲良く頭を突き合わせて画面を共に覗きこみ、にこにこしている和哉とは対照的に柚希は顔面蒼白といった感じに慌てている。
「引き受けるんじゃなかった……。兄弟そろって何やってるんだって、世の中に拡散されたら恥ずかしすぎる」
和哉はこつん、と額を柚希のそれに当てる。
「兄弟じゃなくて、番だよ。柚希」
「番……。そうだな」
柚希は頬を上気させ、今日一番の柔らかな美しい笑顔を見せた。
柚希のこんな愛情深い嫋やかな微笑みは、初めて出会った頃から和哉だけの宝物だ。
和哉は感極まりながら隣の椅子を引くと、柚希に向かってゆっくりと身をかがめる。白い頬に指先を這わすと、柚希は少しだけ潤んだ瞳を瞑る。
「柚希、石鹸の香りがする」
「……せっけん? 汗かいたのに?」
「柚希のフェロモンだよ。僕を誘ってるってこと」
もう柚希が清潔感あるこの香りを漂わせ、晶を誘うこともない。
(僕だけの香りだ)
コンテストの授賞式の後も二人はそろって商店街を歩く予定だったのだが、さっきの叙任式で会場が騒然としてしまった。それで一時的に引っ込んだ本部の三階にある会議室から出るに出られなくなってしまったのだ。
飲み物やご褒美のハロウィン限定南瓜餡パンを受け取り一息をついたら、着替えをしてこのままイベントが終了するまで休んでいいことになった。
会議室の椅子に柚希は腰をかけ、猫耳の付いたまま、着替えの入った袋を枕にするように頭を突っ伏している。
その姿がなんだ本物の猫をほうふつとさせ愛らしい。和哉が声を立てて笑うと、柚希は真っ赤になった顔を上げた。
「和哉~! 何笑ってるんだよ」
「さっきのあれ、大分うけたみたいだね。ほら」
ちゃっかりポケットにスマホを持ち歩いていた和哉が商店街のSNSを見せてくれたら、そこには先ほどの狼王子の騎士叙任式の様子や、王子様の姫抱っこ姿の様子がすでにアップ済みになっていた。
仲良く頭を突き合わせて画面を共に覗きこみ、にこにこしている和哉とは対照的に柚希は顔面蒼白といった感じに慌てている。
「引き受けるんじゃなかった……。兄弟そろって何やってるんだって、世の中に拡散されたら恥ずかしすぎる」
和哉はこつん、と額を柚希のそれに当てる。
「兄弟じゃなくて、番だよ。柚希」
「番……。そうだな」
柚希は頬を上気させ、今日一番の柔らかな美しい笑顔を見せた。
柚希のこんな愛情深い嫋やかな微笑みは、初めて出会った頃から和哉だけの宝物だ。
和哉は感極まりながら隣の椅子を引くと、柚希に向かってゆっくりと身をかがめる。白い頬に指先を這わすと、柚希は少しだけ潤んだ瞳を瞑る。
「柚希、石鹸の香りがする」
「……せっけん? 汗かいたのに?」
「柚希のフェロモンだよ。僕を誘ってるってこと」
もう柚希が清潔感あるこの香りを漂わせ、晶を誘うこともない。
(僕だけの香りだ)
0
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
観念しようね、レモンくん
天埜鳩愛
BL
短編・22話で完結です バスケ部に所属するDKトリオ、溺愛双子兄弟×年下の従弟のキュンドキBLです
🍋あらすじ🍋
バスケ部員の麗紋(れもん)は高校一年生。
美形双子の碧(あお)と翠(みどり)に従兄として過剰なお世話をやかれ続けてきた。
共に通う高校の球技大会で従兄たちのクラスと激突!
自立と引き換えに従兄たちから提示されたちょっと困っちゃう
「とあること」を賭けて彼らと勝負を行いことに。
麗紋「絶対無理、絶対あの約束だけはむりむりむり!!!!」
賭けに負けたら大変なことに!!!
奮闘する麗紋に余裕の笑みを浮かべた双子は揺さぶりをかけてくる。
「れーちゃん、観念しようね?」
『双子の愛 溺愛双子攻アンソロジー』寄稿作品(2022年2月~2023年3月)です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる