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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)
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柚希は舞台から目線を反らして会場の方を見おろした。さらに集まってきた人の中には商店街の関係者も多い。見れば酒屋の若旦那も酒蔵名前が染め抜かれた紺色の法被に着替えてこちらに手を振ってきた。こちらの姿の方が先ほどの仮装よりよほど洒脱だ。無視するのも悪いので小さく手を振り返してみると、いやに嬉しそうな顔をされた。
(そうだった。若旦那の誤解を解かないといけないから、これが終わったらすぐに地方の地酒の試飲ブースに顔を出してこようかな。でもなんていえばいい? 恋人とは別れましたが、弟と番になりましたって。事実だけど俺の常識が疑われる……)
そんな風に考えて柚希は不意に怖ろしくなった。自分と和哉はこれまで商店街においては仲の良い兄弟で通ってきた。勿論血が繋がっていないことを知っている人の方が多いと思うが、恋人の晶の存在を知っていた人もいる。
実際に自分がしでかしたこととはいえ、柚希自身の不実ともいえる心変わりを詰る人がいるかもしれない。
それはその人の考え方だし、実際柚希も客観的に見たら自分の行いを誠実だとは言えないと思う。
だが和哉は違う。幼いころからずっと自分のことだけを想ってきてくれた和哉まで、恋人から兄を奪った恐ろしい男だと思われるのはどうかと思った。
(俺が人でなしなのは確かだし。王子様なんて柄じゃない、でも和哉のことは誰も嫌わないで欲しい)
復帰してからの自分たちを取り巻く環境のことをあまり深く考えないようにしてきたが、急に後ろめたい気持ちでいっぱいになってしまった。
迷いを振り切り和哉の手を取ったことを後悔したわけではない。今、幸せだとも思う。だけどまだ晶とのことは柚希の中で消化しきれておらず、そこを他人に少しでも触れられるのはまだつらい。
先ほど若旦那に聞かれた時のように、柚希は足元が覚束ないような心地になって狼狽えて、言わなくてもいいようなことまで口走ってしまうかもしれない。
(和哉のことを、どうしても手放したくなかったから、家族として繋ぎ止められないならば番になるしかないと思ったなんて。そんな本音。倫理観おかしいよな)
メルヘンチックな遊園地のオリジナルBGMがかかる中、舞台の上ではドレスの裾同士もぶつけ合いながらプリンセスたちが和哉の隣を我先にと奪い合って写真撮影タイムになっている。
埒が明かないと思ったのか、和哉に代わって実行委員の女性がマイクを持ってきて黄色い衣装を着た女の子にコメントを貰いに行った。
すると彼女はここぞとばかりにとんでもないことを口にしたのだ。
「ええと! 私狼騎士様のことが大大大好きなんです! だからお付き合いできたらいいなあって思ってるんです!!! 本気です! お願いします」
祭りの喧騒がかき消されるほどの歓声がステージを取り囲んで起った。
(そうだった。若旦那の誤解を解かないといけないから、これが終わったらすぐに地方の地酒の試飲ブースに顔を出してこようかな。でもなんていえばいい? 恋人とは別れましたが、弟と番になりましたって。事実だけど俺の常識が疑われる……)
そんな風に考えて柚希は不意に怖ろしくなった。自分と和哉はこれまで商店街においては仲の良い兄弟で通ってきた。勿論血が繋がっていないことを知っている人の方が多いと思うが、恋人の晶の存在を知っていた人もいる。
実際に自分がしでかしたこととはいえ、柚希自身の不実ともいえる心変わりを詰る人がいるかもしれない。
それはその人の考え方だし、実際柚希も客観的に見たら自分の行いを誠実だとは言えないと思う。
だが和哉は違う。幼いころからずっと自分のことだけを想ってきてくれた和哉まで、恋人から兄を奪った恐ろしい男だと思われるのはどうかと思った。
(俺が人でなしなのは確かだし。王子様なんて柄じゃない、でも和哉のことは誰も嫌わないで欲しい)
復帰してからの自分たちを取り巻く環境のことをあまり深く考えないようにしてきたが、急に後ろめたい気持ちでいっぱいになってしまった。
迷いを振り切り和哉の手を取ったことを後悔したわけではない。今、幸せだとも思う。だけどまだ晶とのことは柚希の中で消化しきれておらず、そこを他人に少しでも触れられるのはまだつらい。
先ほど若旦那に聞かれた時のように、柚希は足元が覚束ないような心地になって狼狽えて、言わなくてもいいようなことまで口走ってしまうかもしれない。
(和哉のことを、どうしても手放したくなかったから、家族として繋ぎ止められないならば番になるしかないと思ったなんて。そんな本音。倫理観おかしいよな)
メルヘンチックな遊園地のオリジナルBGMがかかる中、舞台の上ではドレスの裾同士もぶつけ合いながらプリンセスたちが和哉の隣を我先にと奪い合って写真撮影タイムになっている。
埒が明かないと思ったのか、和哉に代わって実行委員の女性がマイクを持ってきて黄色い衣装を着た女の子にコメントを貰いに行った。
すると彼女はここぞとばかりにとんでもないことを口にしたのだ。
「ええと! 私狼騎士様のことが大大大好きなんです! だからお付き合いできたらいいなあって思ってるんです!!! 本気です! お願いします」
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