160 / 296
黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)
16
しおりを挟む
仮装コンテストの表彰式が始まった。地元のケーブルテレビやタウン誌の記者も舞台にカメラを向けている。
柚希は子どもの部のプレゼンターだったので受賞者にぴかぴかのメダルと商品券を授与する係だった。
商店街の道路を封鎖してイベントを行っているため、大体真ん中あたりにある商店街の本部にされている小さなビルの前に、手作りのステージが設置されている。
ドーナツ屋の支店がある女神が丘のイベントと比べたらずっと小規模だが、地元では秋の風物詩の祭りになっているのでかなりの人でごった返していた。
「はい。勇者様。おめでとうございます」
一位の仮装の子は今流行っているアニメの勇者様の扮装だった。受賞者に柚希がマイクを向けて『一言どうぞ』とやるコーナーでは、子供に代わって母親がこの仮装を作るにあたっての苦労話をしてくれて大いに盛り上がった。
柚希こと黒猫王子にもたまに応援の声が上がるので恥ずかしながら手を振るのにも慣れてきた。
しかしたまに下を向きそうになるのを見越したように、ステージを見に来てくれていた店の同僚たちから「おーい。王子正面向いて~」などと無責任な指示が飛ぶ。
(来年もこの仮装の話が出たら断ろう……。人の前に立つのだいぶ恥ずかしい)
10分経たずに柚希の出番は終わってステージの端っこに立ったまま、一般の部の授賞式を見守ることになった。
一般の部のプレゼンターは和哉だ。登場と同時に柚希の時とは比べ物にならないほどの声援が起る中、袖へ引っ込む柚希にすれ違いざまウィンクを飛ばしてくる。
「兄さんお疲れ様」
和哉は相変わらず見慣れないカラコン銀髪姿だけど、笑顔はいつも通り青空と秋風に良く似あう爽やかさだ。
(和哉余裕か! そうだよな。全部俺の為とは言え、お店のドーナツの宣伝を顔出しでやってくれてるし、そりゃ慣れてるよな)
SNSを目にとめた芸能関係者からスカウトを受けたことも何度かあるし、そのたび和哉の意向も受けて柚希が断ってきたが、意外とああいうことが向いているのではないかと思う。正直大抵のアイドルや俳優より、和哉の方がずっといい男だと思うのだ。
二位三位と無事に表彰が済んだのち、次は一位が舞台へ呼ばれた。受賞者は本部のテントの裏で準備をしていたから、なんとなく誰が受賞したかは柚希には分かっていた。
やはりあの華やかな七人のプリンセス軍団が受賞をしたようだ。袖にいた柚希を押しのける勢いで舞台に登場していった。
ステージを見守るのは彼女らの仲間や彼氏、家族といった関係者だけでも、これだけの人数がいたらかなりの数だろう。その証拠に聞こえてくる歓声が大きく。舞台下が今までで一番盛り上がっているように見える。
(さっき和哉の腕に抱き着いてた子たちか……)
自分はいい年した男だから、女子高生に嫉妬するなんて馬鹿げている。そんな風に思い込もうとしたのに、年ごろの若い女の子たちが嬉しそうに和哉の傍に寄り添っているのを見ると、やはり大学生の和哉にとてもお似合いに見えた。
(おれの和哉なのに……)
柚希は子どもの部のプレゼンターだったので受賞者にぴかぴかのメダルと商品券を授与する係だった。
商店街の道路を封鎖してイベントを行っているため、大体真ん中あたりにある商店街の本部にされている小さなビルの前に、手作りのステージが設置されている。
ドーナツ屋の支店がある女神が丘のイベントと比べたらずっと小規模だが、地元では秋の風物詩の祭りになっているのでかなりの人でごった返していた。
「はい。勇者様。おめでとうございます」
一位の仮装の子は今流行っているアニメの勇者様の扮装だった。受賞者に柚希がマイクを向けて『一言どうぞ』とやるコーナーでは、子供に代わって母親がこの仮装を作るにあたっての苦労話をしてくれて大いに盛り上がった。
柚希こと黒猫王子にもたまに応援の声が上がるので恥ずかしながら手を振るのにも慣れてきた。
しかしたまに下を向きそうになるのを見越したように、ステージを見に来てくれていた店の同僚たちから「おーい。王子正面向いて~」などと無責任な指示が飛ぶ。
(来年もこの仮装の話が出たら断ろう……。人の前に立つのだいぶ恥ずかしい)
10分経たずに柚希の出番は終わってステージの端っこに立ったまま、一般の部の授賞式を見守ることになった。
一般の部のプレゼンターは和哉だ。登場と同時に柚希の時とは比べ物にならないほどの声援が起る中、袖へ引っ込む柚希にすれ違いざまウィンクを飛ばしてくる。
「兄さんお疲れ様」
和哉は相変わらず見慣れないカラコン銀髪姿だけど、笑顔はいつも通り青空と秋風に良く似あう爽やかさだ。
(和哉余裕か! そうだよな。全部俺の為とは言え、お店のドーナツの宣伝を顔出しでやってくれてるし、そりゃ慣れてるよな)
SNSを目にとめた芸能関係者からスカウトを受けたことも何度かあるし、そのたび和哉の意向も受けて柚希が断ってきたが、意外とああいうことが向いているのではないかと思う。正直大抵のアイドルや俳優より、和哉の方がずっといい男だと思うのだ。
二位三位と無事に表彰が済んだのち、次は一位が舞台へ呼ばれた。受賞者は本部のテントの裏で準備をしていたから、なんとなく誰が受賞したかは柚希には分かっていた。
やはりあの華やかな七人のプリンセス軍団が受賞をしたようだ。袖にいた柚希を押しのける勢いで舞台に登場していった。
ステージを見守るのは彼女らの仲間や彼氏、家族といった関係者だけでも、これだけの人数がいたらかなりの数だろう。その証拠に聞こえてくる歓声が大きく。舞台下が今までで一番盛り上がっているように見える。
(さっき和哉の腕に抱き着いてた子たちか……)
自分はいい年した男だから、女子高生に嫉妬するなんて馬鹿げている。そんな風に思い込もうとしたのに、年ごろの若い女の子たちが嬉しそうに和哉の傍に寄り添っているのを見ると、やはり大学生の和哉にとてもお似合いに見えた。
(おれの和哉なのに……)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
296
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる