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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)
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「我が君。お菓子の列が伸びておりますよ?」
嫉妬心が募って絶対零度の声色で兄を呼ぶと、柚希は振り向きざま驚いてお菓子を取り落した。和哉が看過できないほど間近にいた男がデレデレとした様子でその菓子を拾い上げて、そのあと何やら柚希に囁いているのも気に喰わない。
(僕の番に汚い手で触れるな。馴れ馴れしいんだよ)
あの男、後でどうにかしてやる。
唸り声をあげて飛び掛かる狼のように、このまま机を飛び越え、柚希との間に割って入ってしまいたくなる。
「持ち場を離れてお喋りはいけませんよ」
「は、離れてないし」
悋気に心を焦らしながらじっと柚希を見つめれば、兄は和哉の情動に呼応するように頬を染めて、熱っぽく見つめ返してきた。
(柚希、すごい色っぽい顔してる……。こんな顔、誰にも見せたくない)
こんな時、兄を誰の目にも触れない場所にそっと隠しておけないものかと本気で考えてしまう。
(僕らがもっと田舎の人里離れた土地で暮らしていたら、これほど柚希が人前に立つこともないよな。それか柚希が仕事をする時も僕がずっと傍にいる方法もありか。僕がリモートワークで家で仕事をして、柚希はお菓子作りが得意だから自宅を改装して古民家カフェなんていいかな。柚希が仕事を続けたいっていうニーズにもこたえられるし一石二鳥。そうしたら僕はカフェで柚希を眺めながらずっと仕事をする。ああでも、柚希が気になって仕事にならないかも。でも人里離れた場所だとお客さんも来ないから柚希、しょんぼりしちゃうかな。柚希を悲しませるのも本位じゃないし)
和哉はまたお得意の妄想に走ってしまったが、それにもまして兄の様子がおかしい。イラストやポスターで狼騎士の絵姿を見た時の反応は普通だったのに、今の和哉の姿には目をきらきらさせ、異常に喰いついてきている気がする。
和哉は青い目を見開いてはたと思い当たった。
(まさか、柚希、狼騎士が好きなわけ? こういう長髪の男が好みとか? なんだそれ。浮気じゃないか。柚希はいつでも僕が一番でいてくれないと)
和哉はもはや誰に妬いているのかも訳が分からない状態だ。だがまあ、自分がしている扮装なわけだからここは一つ兄が素直な顔でうっとり自分を見てくれているうちに、周りをけん制するのも良いかと考える。
「ご機嫌はいかがですか?」
「げ、元気だよ」
お菓子をむんずと掴んでいた兄の手を取ると、滑らかな手の甲に唇を寄せる。周りの女性たちから、ぎゃあ、とも、はわわっ、ともつかぬ大きな悲鳴が上がったが和哉は見せつけるように柚希の肌に唇を這わせた。
目線を上げたら柚希はますます顔を真っ赤にして狼狽えている。
その姿が愛らしすぎて留飲を下げたが、ますます二人きりになって柚希を抱きしめ思うさま唇を奪いたい気持ちに火がついてしまった。
嫉妬心が募って絶対零度の声色で兄を呼ぶと、柚希は振り向きざま驚いてお菓子を取り落した。和哉が看過できないほど間近にいた男がデレデレとした様子でその菓子を拾い上げて、そのあと何やら柚希に囁いているのも気に喰わない。
(僕の番に汚い手で触れるな。馴れ馴れしいんだよ)
あの男、後でどうにかしてやる。
唸り声をあげて飛び掛かる狼のように、このまま机を飛び越え、柚希との間に割って入ってしまいたくなる。
「持ち場を離れてお喋りはいけませんよ」
「は、離れてないし」
悋気に心を焦らしながらじっと柚希を見つめれば、兄は和哉の情動に呼応するように頬を染めて、熱っぽく見つめ返してきた。
(柚希、すごい色っぽい顔してる……。こんな顔、誰にも見せたくない)
こんな時、兄を誰の目にも触れない場所にそっと隠しておけないものかと本気で考えてしまう。
(僕らがもっと田舎の人里離れた土地で暮らしていたら、これほど柚希が人前に立つこともないよな。それか柚希が仕事をする時も僕がずっと傍にいる方法もありか。僕がリモートワークで家で仕事をして、柚希はお菓子作りが得意だから自宅を改装して古民家カフェなんていいかな。柚希が仕事を続けたいっていうニーズにもこたえられるし一石二鳥。そうしたら僕はカフェで柚希を眺めながらずっと仕事をする。ああでも、柚希が気になって仕事にならないかも。でも人里離れた場所だとお客さんも来ないから柚希、しょんぼりしちゃうかな。柚希を悲しませるのも本位じゃないし)
和哉はまたお得意の妄想に走ってしまったが、それにもまして兄の様子がおかしい。イラストやポスターで狼騎士の絵姿を見た時の反応は普通だったのに、今の和哉の姿には目をきらきらさせ、異常に喰いついてきている気がする。
和哉は青い目を見開いてはたと思い当たった。
(まさか、柚希、狼騎士が好きなわけ? こういう長髪の男が好みとか? なんだそれ。浮気じゃないか。柚希はいつでも僕が一番でいてくれないと)
和哉はもはや誰に妬いているのかも訳が分からない状態だ。だがまあ、自分がしている扮装なわけだからここは一つ兄が素直な顔でうっとり自分を見てくれているうちに、周りをけん制するのも良いかと考える。
「ご機嫌はいかがですか?」
「げ、元気だよ」
お菓子をむんずと掴んでいた兄の手を取ると、滑らかな手の甲に唇を寄せる。周りの女性たちから、ぎゃあ、とも、はわわっ、ともつかぬ大きな悲鳴が上がったが和哉は見せつけるように柚希の肌に唇を這わせた。
目線を上げたら柚希はますます顔を真っ赤にして狼狽えている。
その姿が愛らしすぎて留飲を下げたが、ますます二人きりになって柚希を抱きしめ思うさま唇を奪いたい気持ちに火がついてしまった。
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