上 下
157 / 296
黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)

13

しおりを挟む
 和哉は自分も狼騎士の凝りに凝った、しかし自分としては纏うのが気恥ずかしい仮装に着替えつつ、しかし騎士様らしく堂々と商店街に繰り出すことにした。
 人生で銀髪にしたりカラーコンタクトをしたのも初めてだし、当然コスプレをしたのも初めてだ。
 流石に派手なこの姿で商店街を歩くと人々の視線が一気に自分に集中するのが分かる。とはいえ大学の構内にいる時も街を歩くときも、長身美形の和哉は大抵人からじっと見られやすいので慣れっこといえば慣れっこだ。

「狼騎士様きた~」

 小さな子供やその保護者等、前を行く手をすぐに阻まれたが、実行委員の人々が素早く道を開けてくれて、本部のある方へ誘導してくれる。
 ちょうど柚希の勤め先のドーナツ屋の前を通ると、店頭にいた三枝が、今日のヘアスタイルのインナーカラーが紫色で、頭に悪魔の角をつけた状態で人垣の向こうから手を振ってくれた。

「やあ、和哉。あ、騎士様か。すごく似合ってるな。一ノ瀬も別人みたいだったけど兄弟して2.5次元って感じ」

 和哉は苦笑しながら肩につけられた鎧のせいで若干動かしにくい腕を上げて振り返した。

「三枝さん。そこは『番』同士って言ってください」
「あ、すまん。どうも慣れなくてね。あいつ、もういつも通りに出勤してきてるし」

(いつもどおり、かあ)

 番になってから和哉は片時も柚希と離れたくないと日に日に思いが募るのに、柚希の方は仕事に復帰して生き生きと嬉しそうな様子なのだ。
 それが和哉にはなんだか物足りない。もっともっと兄からの関心と愛を引き出したくてたまらなくなるのだ。
 流石に兄に仕事を辞めさせるまではやりすぎだとは思うし、そこまで柚希を縛り付けるのは良くないと頭では分かっている。
 だが四六時中和哉のことを考えて欲しいと思う独占欲は、手に入れてからさらに増すばかりだ。

(思えば兄さんは発情期の最後の方は仕事の心配ばかりしてたよな)

 10年近く片思いだった相手が自分に振り向いてくれたというのに何を贅沢な悩みだとも思う。

 しかし柚希が他の男と話をしていたり、あまつさえその男が元々柚希のことを気に入っていて可愛がっていた素振りを見せた相手だと、今まで我慢してきた分、タガが外れやすいのだ。
 今もまた、子どもたちに景品のお菓子を配る係についているはずの兄に、酒屋の若旦那がべったりと張り付き、何故か腕なんか掴まれているところを目の当りにして、和哉の中の狼が首をもたげ簡単に唸り牙を剥く。

(酒屋のあいつか。晶先輩と兄さんが付き合う前、結構頻繁に店に来るのを誘いに来てたやつだな。気に入らない)
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

真柴さんちの野菜は美味い

晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。 そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。 オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。 ※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。 ※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

処理中です...