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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)
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兄の発情期の休暇の件で職場に連絡を入れなければならなかったとはいえ、和哉は番になった直後、即柚希の職場に報告した。
商店街の青年部の一部の人たちは柚希が誰とくっつくかとの賭けをしていたとのことでお祝いをしてくれたが、いまだすべての人が二人を番と知っているわけではない。
イベント後の打ち上げの時にでも大々的に発表して、これ以上柚希に悪い虫がつかないようにしようと画策していた和哉だ。
愛する人とついに番になった癖に狭量だと言われるかもしれないが、柚希はそもそも女の子にもモテる。いままで付き合ってきた相手は女性の方が多い。だから正直Ωである前に男でもあるので、押し切られたら女の子と浮気をできないこともないのだから。
(もちろん、そんな事、僕がさせないし、信じてるし。柚希は僕の『メス』だって心身ともにしつこく分からせたつもりだけど。柚希は優しいからねえ。浮気じゃなくて本気で来られたら絆されないとも限らないしね)
そもそもはこのイベント自体、柚希の発情期と重なるかもしれないと思いながら準備を進めていた。『黒猫王子と狼の騎士』の扮装も、もしも二人が来られなかったら衣装は展示だけになる予定だったのだ。
和哉は今回の発情期で絶対に柚希を晶から奪い取るという並々ならぬ決意をしていたのでそれが無事に済んだ今、なんとなく気持ちが大きくなって恥ずかしい仮装でもなんでもどんとこいというつもりでイベントに臨んでしまった。
(今日みたいないい天気の日に、お日様の下、恋人で番になれた柚希と並んで堂々とみんなの前を歩けるなら、それもいい気がしたんだ)
柚希が更衣室から黒猫王子の服を着て、猫耳をつけて恥ずかしそうに和哉の前に現れた。上目遣いに見上げてくる顔があまりに可愛らしすぎて、和哉は心臓が止まるかと思ってしまった。
「どうかな?』」
「和哉君、お兄さんこの恰好すごく似合ってるよね? 私たちの最高傑作誕生!」
衣装係の人たちの絶賛の嵐の中、恥じらった笑顔を浮かべた柚希はカジュアルな服装ばかりする彼の、普段見慣れぬ黒のジャケット姿だった。
和哉は頭の中ですぐさま兄と自分の結婚式の衣装を想像してしまった。
「すごく似合うよ、兄さん! 黒猫王子がイラストから飛び出してきたみたいだね」
スマホを即座に構えた和哉は見た目こそ平静に務めているが、頭の中は大変忙しいことになっている。
(兄さんは色白だから白か、もしくはマスカットグリーンみたいな爽やかな色合いの婚礼衣装が似合うかなと思ってたけど。黒! 黒も似合う! 兄さんの清潔感溢れる美貌に黒を纏うことによって色気が加わって、同色の立ち襟のシャツのフリルが肌の白さを引き立ててまた可愛い。あ、でも兄さんが黒の紋付で僕が白とかでもいいかも。和装も絶対に似合う。兄さんは黙っていれば禁欲的な色気が出るから和装美人になるに決まってる)
興奮気味に色々まくし立てる代わりにスマホ片手にアングルを変えながら連射を繰り返し、若干兄に引かれた和哉だ。
「俺はいいって。恥ずかしいなあ」
和哉が構えるスマホの前に片手を掲げ、小首をかしげて恥ずかしがっている。
(成人した男で猫耳がここまで似合うなんて兄さんの可愛さ反則だろ。『和哉大好きにゃん』って猫語風に喋って欲しい)
照れた顔がまた可愛らしくて抱きしめたくて仕方なくなる。本当はべったりと一緒にくっついていたいが、しぶしぶ兄を送り出す。まるで本当の王子様みたいで、誰もが兄に恋をしてしまいそうだ。
沢山の人のカメラに兄の姿が収まるかと思うと落ち着かない気持ちになった。
商店街の青年部の一部の人たちは柚希が誰とくっつくかとの賭けをしていたとのことでお祝いをしてくれたが、いまだすべての人が二人を番と知っているわけではない。
イベント後の打ち上げの時にでも大々的に発表して、これ以上柚希に悪い虫がつかないようにしようと画策していた和哉だ。
愛する人とついに番になった癖に狭量だと言われるかもしれないが、柚希はそもそも女の子にもモテる。いままで付き合ってきた相手は女性の方が多い。だから正直Ωである前に男でもあるので、押し切られたら女の子と浮気をできないこともないのだから。
(もちろん、そんな事、僕がさせないし、信じてるし。柚希は僕の『メス』だって心身ともにしつこく分からせたつもりだけど。柚希は優しいからねえ。浮気じゃなくて本気で来られたら絆されないとも限らないしね)
そもそもはこのイベント自体、柚希の発情期と重なるかもしれないと思いながら準備を進めていた。『黒猫王子と狼の騎士』の扮装も、もしも二人が来られなかったら衣装は展示だけになる予定だったのだ。
和哉は今回の発情期で絶対に柚希を晶から奪い取るという並々ならぬ決意をしていたのでそれが無事に済んだ今、なんとなく気持ちが大きくなって恥ずかしい仮装でもなんでもどんとこいというつもりでイベントに臨んでしまった。
(今日みたいないい天気の日に、お日様の下、恋人で番になれた柚希と並んで堂々とみんなの前を歩けるなら、それもいい気がしたんだ)
柚希が更衣室から黒猫王子の服を着て、猫耳をつけて恥ずかしそうに和哉の前に現れた。上目遣いに見上げてくる顔があまりに可愛らしすぎて、和哉は心臓が止まるかと思ってしまった。
「どうかな?』」
「和哉君、お兄さんこの恰好すごく似合ってるよね? 私たちの最高傑作誕生!」
衣装係の人たちの絶賛の嵐の中、恥じらった笑顔を浮かべた柚希はカジュアルな服装ばかりする彼の、普段見慣れぬ黒のジャケット姿だった。
和哉は頭の中ですぐさま兄と自分の結婚式の衣装を想像してしまった。
「すごく似合うよ、兄さん! 黒猫王子がイラストから飛び出してきたみたいだね」
スマホを即座に構えた和哉は見た目こそ平静に務めているが、頭の中は大変忙しいことになっている。
(兄さんは色白だから白か、もしくはマスカットグリーンみたいな爽やかな色合いの婚礼衣装が似合うかなと思ってたけど。黒! 黒も似合う! 兄さんの清潔感溢れる美貌に黒を纏うことによって色気が加わって、同色の立ち襟のシャツのフリルが肌の白さを引き立ててまた可愛い。あ、でも兄さんが黒の紋付で僕が白とかでもいいかも。和装も絶対に似合う。兄さんは黙っていれば禁欲的な色気が出るから和装美人になるに決まってる)
興奮気味に色々まくし立てる代わりにスマホ片手にアングルを変えながら連射を繰り返し、若干兄に引かれた和哉だ。
「俺はいいって。恥ずかしいなあ」
和哉が構えるスマホの前に片手を掲げ、小首をかしげて恥ずかしがっている。
(成人した男で猫耳がここまで似合うなんて兄さんの可愛さ反則だろ。『和哉大好きにゃん』って猫語風に喋って欲しい)
照れた顔がまた可愛らしくて抱きしめたくて仕方なくなる。本当はべったりと一緒にくっついていたいが、しぶしぶ兄を送り出す。まるで本当の王子様みたいで、誰もが兄に恋をしてしまいそうだ。
沢山の人のカメラに兄の姿が収まるかと思うと落ち着かない気持ちになった。
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