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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)

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 仕事に戻ると自分がもう番を持ったΩであることも忘れてしまいそうになる。
むしろ番を持ちホルモンバランスが落ち着いたこともあり、以前よりずっと体調がいい。だからこうして身体を動かすのがとても気持ちがいい。

(なんか、長い夢から醒めた気分。視界も頭もすっきりクリアーになった)
 
 家にいると和哉がもはやなにも遠慮することがなくなったせいか、幼い頃にもましてべったり甘えてくる。『婚礼休暇みたいに、番休暇が欲しいよ。ずっと傍にいられたらいいのに』という。片時も離れたくないと態度で示し、今ではもうどんなに朝早いシフトでも、和哉が車で職場に送りだしてくれる。
柚希は今、仕事の行きかえりすら一人になることはないのだ。
 発情期直後は自分も和哉と離れがたくて堪らなかったが、こうして別々に作業をしている時は所謂『独身』のような気分に戻る、それはそれで新鮮な心地だ。

 猫耳柚希がリボンで飾り付けられた籠にせっせとお菓子を補充するのを、酒屋の若旦那も隣にしゃがんで助けてくれる。
 後ろから見るとバンパイヤと王子様が、ちまちまとした作業をしていてきっと滑稽なことだろうと柚希は思った。

「今年も打ち上げ、若旦那の店でするんですか?」

 酒屋の若旦那は酒屋の一角にお洒落な立ち飲みスペースも設けている。柚希は酒に弱いので嗜む程度だが、若旦那の店のこじゃれた美味い肴が好きなので何度か訪れたことがある。
 去年の祭りの後も酒屋の隣の駐車場を不動産屋さんが会場として提供してくれた。そこに角打ちから旨い酒を運びいれ、商店街の店主が持ち寄ったオードブルを囲む打ち上げをしたのだ。

「まあ、そうだな。そういう感じになると思う」
「若旦那の秘蔵の梅酒。あれ美味しかったなあ。また飲みたいなあ」
「ほんとか。そりゃ、一ノ瀬君の為に漬けておいたかいがあるってもんだ」
「またまた~。でもあれは本当に美味しいです」

 昨日今日と頑張って働いたので、打ち上げでは極上のほろ酔い気分で達成感を味わいたい、そんな気分になっていた。ある程度籠が一杯になったので柚希が立ち上がろうとしたとき、籠を持つ柚希の腕を若旦那が掴んで引き留めた。

「なあ、ちょっと噂で聞いたんだが……」

 色黒バンパイヤが普段のおちゃらけた様子が引っ込んだ神妙な顔つきになったので、柚希も何事かと、しゃがんだままこっくりと頷いた。

「はい。なんでしょうか?」
「一ノ瀬君、君、番ができたって。それってあの彼氏さんとってことか?」
 
 突然そう確認され、どきりと心臓が鳴る。 
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