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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃(ハッピーハロウィン)
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イケメンキャラの扮装をする候補としてアコ先生のお眼鏡に叶ったとは光栄というべきだろう。しかし謎の熱気を振りまきながら柚希に熱い視線を送ってくる、色々な年代の女性たちから手を振られスマホを向けられるのが猛烈に恥ずかしい。
(でもまあ、俺っていうよりこの衣装が素晴らしいから見られるのは当たり前だよな。見てるのは俺じゃない、衣装。自意識過剰ってやつだ。うん)
衣装は青年会に所属していて、毎年仮装のアイディアをみなに提供してくれる、現役のコスプレイヤーさんが商店街の手芸店の人と共に手がけた。これがなかなか凝った作りになっている。
黒いジャケットと同色のパンツ。シャツも黒くて立ち襟の端が華やかにひらひらとしている。それが色白の柚希の顔立ちをより一層引き立てる。
ジャケットにはスチームパンクっぽい歯車やガラス製の大きな赤いビジューをあしらったブローチ。黒いマントの内側は天鵞絨の赤い生地が縫い付けられていて、頭には王冠ではなく真っ黒な猫耳。しかもちゃんと長く黒い尻尾まで生えていて、テグスで上にピンと立つように工夫されている。かなりの力作だ。
(土日二日間じゃなくてせめて今日だけで良かった……)
柚希は黄色い声援を背中に浴びながら交換所のテントに戻ってきた。
「お菓子補充します」
手前のスタッフに声をかけてから受付スペースの後ろにしゃがみこむ。衣装があちこち引っかかりそうで慎重に段ボールを開けていたら、背後から声をかけられた。
「やあ、猫耳王子。可愛いなあ。俺にも写真撮らしてくれ」
吸血鬼のマントをつけてはいるが、趣味のサーフィンで日焼けしたニヤケ面にそれはあまり似つかわしくなく、日に当たってもとても灰になりそうにない。
「若旦那、こんにちは」
「今日は伯爵様って呼べよ。王子様」
ややちゃらついた雰囲気だが悪い人ではない。商店街の酒屋の若旦那が柚希をみてにやにやと笑って近づいてきた。
「うるさいですね。欠席裁判みたいに裏でこそこそ勝手にこんな格好を用意して。恨みますからね」
「俺は企画会議に出られなかったから無罪だよ。怒らないで。でも和哉君は会議出ていたから知ってたはずだろ?」
そうなのだ。和哉はお祭りの実行委員に学生ボランティアとして参加していて、このことを知っていたはずだ。
「そうなんですよ。和哉は会議に出てたらしくて、でも俺には衣装の採寸まで黙ってたんですよ。ひどくないですか?」
とはいえ。この二週間怒涛のように色々なことが起って、柚希は正直この祭りのこと自体思い出す暇さえなかったのだ。
付き合っていた恋人の晶と番にならず、義弟の和哉と番になってまだ半月足らず。その間に両親へ番になった挨拶しに行ったり、和哉が柚希の住むアパートへ嬉々として身の回りの荷物を運びこみにきたりと怒涛の生活だった。
(でもまあ、俺っていうよりこの衣装が素晴らしいから見られるのは当たり前だよな。見てるのは俺じゃない、衣装。自意識過剰ってやつだ。うん)
衣装は青年会に所属していて、毎年仮装のアイディアをみなに提供してくれる、現役のコスプレイヤーさんが商店街の手芸店の人と共に手がけた。これがなかなか凝った作りになっている。
黒いジャケットと同色のパンツ。シャツも黒くて立ち襟の端が華やかにひらひらとしている。それが色白の柚希の顔立ちをより一層引き立てる。
ジャケットにはスチームパンクっぽい歯車やガラス製の大きな赤いビジューをあしらったブローチ。黒いマントの内側は天鵞絨の赤い生地が縫い付けられていて、頭には王冠ではなく真っ黒な猫耳。しかもちゃんと長く黒い尻尾まで生えていて、テグスで上にピンと立つように工夫されている。かなりの力作だ。
(土日二日間じゃなくてせめて今日だけで良かった……)
柚希は黄色い声援を背中に浴びながら交換所のテントに戻ってきた。
「お菓子補充します」
手前のスタッフに声をかけてから受付スペースの後ろにしゃがみこむ。衣装があちこち引っかかりそうで慎重に段ボールを開けていたら、背後から声をかけられた。
「やあ、猫耳王子。可愛いなあ。俺にも写真撮らしてくれ」
吸血鬼のマントをつけてはいるが、趣味のサーフィンで日焼けしたニヤケ面にそれはあまり似つかわしくなく、日に当たってもとても灰になりそうにない。
「若旦那、こんにちは」
「今日は伯爵様って呼べよ。王子様」
ややちゃらついた雰囲気だが悪い人ではない。商店街の酒屋の若旦那が柚希をみてにやにやと笑って近づいてきた。
「うるさいですね。欠席裁判みたいに裏でこそこそ勝手にこんな格好を用意して。恨みますからね」
「俺は企画会議に出られなかったから無罪だよ。怒らないで。でも和哉君は会議出ていたから知ってたはずだろ?」
そうなのだ。和哉はお祭りの実行委員に学生ボランティアとして参加していて、このことを知っていたはずだ。
「そうなんですよ。和哉は会議に出てたらしくて、でも俺には衣装の採寸まで黙ってたんですよ。ひどくないですか?」
とはいえ。この二週間怒涛のように色々なことが起って、柚希は正直この祭りのこと自体思い出す暇さえなかったのだ。
付き合っていた恋人の晶と番にならず、義弟の和哉と番になってまだ半月足らず。その間に両親へ番になった挨拶しに行ったり、和哉が柚希の住むアパートへ嬉々として身の回りの荷物を運びこみにきたりと怒涛の生活だった。
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