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優しさで貴方を奪う
最終章 優しさで貴方を奪う4
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「柚にい?」
「……カズ。母さんたちに会う前に……。俺、お前に話しておきたいことがあるんだ」
あまりよくない内容なのかと先読みした和哉は聞くことすらためらうようにあからさまに顔をそむけたが、柚希はシートから身を乗り出して再び弟を流石男とでもいうような腕力で引っ張って自らの胸に頭を押し付けるようにして抱き込んだ。
柚希の方からこんなふうに能動的に動くこと自体が少ないので、和哉はもう観念して柚希が言いたかったことを聞くよりほかに術がなくなった。
それが和哉にとっては都合が悪く、切なく今後の人生を煩悶し続けるような内容であったとしても。
「発情期が終わったら、頭が冷えて、僕と番になったこと、後悔してるの?」
番になってまだ一週間もたっていない。まして番になる直前まで他の男と付き合っていた柚希のことを、和哉が信じ切れるのも無理からぬことだ。
(カズ。ごめん。どこまで本気か分からないけど、俺に仕事を辞めてずっと家にいて欲しいなんて言いだしたのも、きっと俺のことを信じ切れないからなんだろうな)
生涯一人の相手としか番うことができぬ事実すら、和哉の心の底に流れる不安をぬぐえないということ。
(それを取り除けるのは、きっとこの世で俺だけだ。でも……失望されたらって思うと、怖い)
トクトクトクっと早鐘を打つ心臓の音。パーカー越しに和哉の耳にも届いてしまっているだろうか。
「違うよ……。カズ。お前が何でもネガティブな方に考えしまうのって、全部俺のせいだな。俺が今まで流されるまま、ふらふらさ。何の覚悟もないまま臆病に生きてきたせいで、お前をすごく傷つけた。ごめん」
「……いいんだ。今こうして、柚希が僕と一緒にいてくれる、僕を選んでくれたって事実が、僕には一番、大切」
それでも発情期が終わった今、昨日までのように互いの身体も心も縛り付けるように寄り添ってばかりはいられない。どんなに弟が気がかりでも、明日からはこれまで通りの日常に戻っていかねばならない。
柚希は無意識に子どもの頃、ソファーで眠たげに柚希の膝に頭を載せてきた和哉によくそうしてやったように襟足から指先を入れて優しく規則的に柔らかく頭を撫ぜ続けた。
口からフーっと長く息を吐くと幼い頃のようにいつの間にか首を傾け柚希だけを真っすぐに見つめてくる、和哉の綺麗な瞳に勇気づけられ微笑みかけた。
「……カズ。母さんたちに会う前に……。俺、お前に話しておきたいことがあるんだ」
あまりよくない内容なのかと先読みした和哉は聞くことすらためらうようにあからさまに顔をそむけたが、柚希はシートから身を乗り出して再び弟を流石男とでもいうような腕力で引っ張って自らの胸に頭を押し付けるようにして抱き込んだ。
柚希の方からこんなふうに能動的に動くこと自体が少ないので、和哉はもう観念して柚希が言いたかったことを聞くよりほかに術がなくなった。
それが和哉にとっては都合が悪く、切なく今後の人生を煩悶し続けるような内容であったとしても。
「発情期が終わったら、頭が冷えて、僕と番になったこと、後悔してるの?」
番になってまだ一週間もたっていない。まして番になる直前まで他の男と付き合っていた柚希のことを、和哉が信じ切れるのも無理からぬことだ。
(カズ。ごめん。どこまで本気か分からないけど、俺に仕事を辞めてずっと家にいて欲しいなんて言いだしたのも、きっと俺のことを信じ切れないからなんだろうな)
生涯一人の相手としか番うことができぬ事実すら、和哉の心の底に流れる不安をぬぐえないということ。
(それを取り除けるのは、きっとこの世で俺だけだ。でも……失望されたらって思うと、怖い)
トクトクトクっと早鐘を打つ心臓の音。パーカー越しに和哉の耳にも届いてしまっているだろうか。
「違うよ……。カズ。お前が何でもネガティブな方に考えしまうのって、全部俺のせいだな。俺が今まで流されるまま、ふらふらさ。何の覚悟もないまま臆病に生きてきたせいで、お前をすごく傷つけた。ごめん」
「……いいんだ。今こうして、柚希が僕と一緒にいてくれる、僕を選んでくれたって事実が、僕には一番、大切」
それでも発情期が終わった今、昨日までのように互いの身体も心も縛り付けるように寄り添ってばかりはいられない。どんなに弟が気がかりでも、明日からはこれまで通りの日常に戻っていかねばならない。
柚希は無意識に子どもの頃、ソファーで眠たげに柚希の膝に頭を載せてきた和哉によくそうしてやったように襟足から指先を入れて優しく規則的に柔らかく頭を撫ぜ続けた。
口からフーっと長く息を吐くと幼い頃のようにいつの間にか首を傾け柚希だけを真っすぐに見つめてくる、和哉の綺麗な瞳に勇気づけられ微笑みかけた。
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