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HAPPY START6

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「僕も知らなかったんだけどさ、商店街の青年部に人たちが柚にいが誰の番になるのかこっそり賭けられてたらしいよ? 兄さんΩ認定受けた後も事情を知らない人たちからは男女ともに意外にモテててさ……。商店街に出入りしてた広告業者の人とか、配達業者さんとか商店街の歯医者さんとか諸々さ、ライバル削ってくの大変だったけど、まあ幸いαはいなかったから、実際は晶先輩と僕の一騎打ち。僕が兄さんへの想いを先に打ち明けていた人は、みんな僕の味方になってくれたし。晶先輩にかけた人も何人かいたみたいだけどザマアミロ」

 ちなみに晶にかけた人間は和哉の方に気がある女性が多数いたのだが、そのあたりは柚希には内緒のままだ。
 職場の人から外堀から埋めて柚希が絆されるのを狙おうとした時期もあったのだが、タイミングを逃してしまい不本意ながら柚希は晶と付き合い始めた。
 しかし柚希の入社直後から兄を心配してあれこれと連絡をしたり、お店の宣伝に力を貸してくれていた大学生の健気な弟の想いに打たれて、柚希の情報を逐一教えてくれてこっそり手を貸してくれた人たちもいた。
 この度柚希の発情期が確定になって年休を伸ばすために連絡をした時に和哉が番になった報告をしたら彼らがいたくよろこんでこんなことになったのだ。

「ちょっとまった。頭がついていかない……」
 
 義理とはいえ弟と番になったことについて、柚希自身周囲へまだ報告するには頭がまとまらないと思っていたし、もっと言えば実家への申し開きすら思いつかずにいたのに、行き成りの展開に頭が真っ白になりそうだ。
 
「ほら、柚希の為に作ってくれたんだよ。ありがたく頂きなよ。ホールケーキ丸々一個食べるのが子供の頃からの兄さんの夢でしょ? はい、あーん」

 子どもみたいににこにこ笑顔で和哉が銀色に輝くデザートスプーンに大きめにすくわれた生クリームとスポンジを口元に運んできたから柚希は思い切り大口を開けてそれをあぐっと口いっぱいに頬張った。

「お、おいひぃ……。新鮮生クリーム、ふわふわスポンジ、ちょっと苦みと酸味の或る柚のアクセントに、この時期なのにこんなにジューシーな柑橘の爽やかさが鼻から抜けて……。舌にも腹に染みわたる……幸せだ」
「じゃ、僕にも食べさせて」

 大きな身体でそんな風に甘えてくるからついつい目元がどうしても細まって、口元は緩んでしまう。

「ほら、うまいぞ」
「そこは、はい、あーんでしょ? なんかこれって、結婚式のあれみたいだね。本番はこの何倍も大きいケーキ特注しようね?」
「ごふっごふごふ」

 この一瞬でそんなことまで考えていたのかと、弟の10年の恋着の重みは伊達ではないとずっしり思いつつ。

(番になる=結婚とか、俺は頭がまだついていかない。すまん和哉)

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