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HAPPY START 2

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「柚希、すごく可愛い顔してる……。色っぽいね」
「恥ずかしいだろ」
「恥ずかしがるとこが、可愛いんだよ? ベッドの上だとあんなに積極的で、魔性って感じなのに、また元の兄さんに戻っちゃった?」

 そう言いながら顔を近づけてきたから、柚希は無意識に口づけを強請るように顔を上にあげたのだが、和哉は拳を握って耐えるような顔をしたのちに兄の双肩を掴むにとどめたのだ。寂し気な顔をしてしまった柚希を喜ばせようと和哉は明るく部屋の隅を指差した。

「柚希、お腹すいたでしょ? 食事を運んでもらったから、一緒に食べようよ」

 頷くと首が痛いので身を固くしたら、正直な腹がぐーっとなって先に返事をした。くすくすと笑う和哉に、柚希ははにかんで照れ笑いを返す。
 和哉は兄の大きな瞳が半月のように綺麗に細まるまろやかな笑顔にとにかく弱い。

「駄目だ……。愛おしすぎる」

 甘い声でぽつりとつぶやき、和哉がうっとりとでも形容できそうな優しい微笑みを浮かべて柚希のことをぎゅうっとハグして、頭のてっぺんにキスをしてきた。
 先ほどはあんな風に腹の底から和哉を欲したのに、こうして当たり前のように抱きしめてこられると柚希はどぎまぎと目線を泳がせ、心臓が急激に早鐘つ。

「なんだか大人しいね? また忘れちゃった? 僕の番さん」
「あ……。俺ら、番に、なった?」
「柚希が忘れても、僕が覚えてるから大丈夫。なったよ。僕ら番に。沢山噛み痕つけちゃってごめんね?」
「……ちゃんと、おぼえてる。和哉ががぶっときた。容赦なく」

  所々は切れ切れだが、今回はばっちり、要所要所は覚えている。
 和哉は恨み言を呟かれるのすら嬉しくてたまらないようで、すっかり浮かれて大きな身体で今にもダンスでも踊り出しそうだ。年相応の青年の顔をした和哉はやっぱりこんな大きな図体をしていても柚希にしたら可愛く見える年下の男だ。

「がぶっといったよ。それはもう、10年分の積もり積もった思いを込めてがぶっとやった! あははは」

(久々に見たな……。和哉がこんなふうに大口開けて笑うとこ)

 牙のようにも見える犬歯が良く見える。屈強な身体つきに知的な美貌。どこをどう見てもαらしい和哉を今までどうしてβだと思い込めたのか。

(和哉が色々画策してたってのはあるだろうけど……。俺がそう思い込もうとしてたんだろうな……。和哉がαだったらって望むことをどこかで自分に駄目だと思い込ませてた)
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