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狼に口づけを
狼に口づけを6
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とにかく穏やかに優しくなだめすかすように尋ねても、すぐには答えぬ柚希に和哉はいっそ美貌が怖ろしい程の真顔で唇だけにたりと笑うと、柚希の身体の両側に長い脚を折り曲げ膝をついて伸し掛かり、あっという間に腕の中に兄を捉えて上から覗きこんできた。
まだ昼日中、眩い太陽の光のもと金色に光る眼差しは欲望に濡れ、大きくも形良い口元が間髪入れずに柚希の答えを待たずして唇を塞いだ。
吐息を奪われるほどの激しい口づけとどこかこわばりが抜けきれぬ和哉の唇には何故か既視感があり、記憶の糸を辿ろうとするが思考がまとまらない。
きっと先ほど和哉が言った通り、再びヒートに入るのかもしれない。今のような正気と自分ではどうしようもない狂気を繰り返す5日程度を過ごすのが大抵の発情期だ。
唇がまだこそばゆく触れる程の位置で一度顔を僅かに離すと、和哉が両手で柚希の頭をがっしりと掴む。
「ねえ。柚希。もう一回したい……。また噛んであげるから、今度は噛まれたこと忘れないでね? 僕が柚希のヒート誘発してあげるから、可愛く乱れて僕を受け入れて」
(なっ! なんだよ、このいやらしい声! 力、入らなくなる)
陽光に耀く琥珀色の瞳に魅入られた心地で柚希の身体から少しずつ力が抜け、瞼を瞑れば優しい仕草で再びそこここに唇を押し当てられる。柔らかくも情熱的なその動作が心地よくて、温かくて、もっともっと満たされたくて。
(気持ちいい……。不思議と怖くない。番になったから? ずっと俺だけを思ってくれていた相手に噛まれたから? でも和哉と番になったら俺は……)
その時、柚希のスマホの着信音がほぼ枕元と言っていい位置で鳴り響いた。
何故かに二つの方向から音割れしたように響くそれを無視したまま、和哉は柚希の顔中にワンコが舐めるようにキスを繰り返す。その有無を言わせぬ力で押さえつけてくる腕の中、柚希は既視感に襲われながら片腕で音の鳴る方をまさぐった。
「電話でるから、ちょっと待って」
このやり取りすら、夢で見たような気がして妙な胸騒ぎがした。
「……」
「まて」
ワンコにでも命令する様にはっきりと言い放つと、長い習慣のサガなのか和哉が一瞬動きを止めた。枕元をまさぐる柚希の指先に硬いものが当たり、当たりをつけてそれを掴み上げると誰からの着信かも確認せずに、通話ボタンを押して耳元にあてた。
『柚希、目が覚めたんだな』
「晶?」
受話器から聞こえるのは紛れもなく、恋人の晶の低いがよく響く声だった。しかし日頃穏やかな男のそれは今日はどこか緊迫感を帯びた風情が漂い、柚希はぞくっと小さく身を震わせた。
『柚希、よく聞け。お前まだ、和哉と番にはなっていないぞ?』
まだ昼日中、眩い太陽の光のもと金色に光る眼差しは欲望に濡れ、大きくも形良い口元が間髪入れずに柚希の答えを待たずして唇を塞いだ。
吐息を奪われるほどの激しい口づけとどこかこわばりが抜けきれぬ和哉の唇には何故か既視感があり、記憶の糸を辿ろうとするが思考がまとまらない。
きっと先ほど和哉が言った通り、再びヒートに入るのかもしれない。今のような正気と自分ではどうしようもない狂気を繰り返す5日程度を過ごすのが大抵の発情期だ。
唇がまだこそばゆく触れる程の位置で一度顔を僅かに離すと、和哉が両手で柚希の頭をがっしりと掴む。
「ねえ。柚希。もう一回したい……。また噛んであげるから、今度は噛まれたこと忘れないでね? 僕が柚希のヒート誘発してあげるから、可愛く乱れて僕を受け入れて」
(なっ! なんだよ、このいやらしい声! 力、入らなくなる)
陽光に耀く琥珀色の瞳に魅入られた心地で柚希の身体から少しずつ力が抜け、瞼を瞑れば優しい仕草で再びそこここに唇を押し当てられる。柔らかくも情熱的なその動作が心地よくて、温かくて、もっともっと満たされたくて。
(気持ちいい……。不思議と怖くない。番になったから? ずっと俺だけを思ってくれていた相手に噛まれたから? でも和哉と番になったら俺は……)
その時、柚希のスマホの着信音がほぼ枕元と言っていい位置で鳴り響いた。
何故かに二つの方向から音割れしたように響くそれを無視したまま、和哉は柚希の顔中にワンコが舐めるようにキスを繰り返す。その有無を言わせぬ力で押さえつけてくる腕の中、柚希は既視感に襲われながら片腕で音の鳴る方をまさぐった。
「電話でるから、ちょっと待って」
このやり取りすら、夢で見たような気がして妙な胸騒ぎがした。
「……」
「まて」
ワンコにでも命令する様にはっきりと言い放つと、長い習慣のサガなのか和哉が一瞬動きを止めた。枕元をまさぐる柚希の指先に硬いものが当たり、当たりをつけてそれを掴み上げると誰からの着信かも確認せずに、通話ボタンを押して耳元にあてた。
『柚希、目が覚めたんだな』
「晶?」
受話器から聞こえるのは紛れもなく、恋人の晶の低いがよく響く声だった。しかし日頃穏やかな男のそれは今日はどこか緊迫感を帯びた風情が漂い、柚希はぞくっと小さく身を震わせた。
『柚希、よく聞け。お前まだ、和哉と番にはなっていないぞ?』
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