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狼に口づけを

狼に口づけを4

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長い長い片思いの果ての告白のはずが何故かほろ苦い表情で、今までのように弟に対して『俺も大好き!』などと軽い調子で応えられる雰囲気ではなかった。

「言ってよ。……いいや。やっぱり僕が言う。僕はずっと、子供の頃からずっとだよ。君のことを愛していたから。ずっとずっと、僕のものにしたかった。いや違ったな? ずっと君は僕のものだったんだよ」
「俺が、お前のもの?」

 復唱した柚希の声に何の感情も籠っていない棒読みに聞こえたようで、和哉は柚希に大仰にがっかりして柚希の顔を胸から起こさせ覗き込んだ。

「意外そうな顔しないでよ。傷つくなあ。僕はずっと兄さんのこと、子供の頃から大好きって言い続けてきたでしょ? 噛みついてマーキングして、僕のだって印もついてる。兄さんだって僕のこと一番に……、目覚める前のこと、あんまり覚えてない?」

 試すような口調の和哉には気が付かず、じっと見つめてくる柚希の純粋な瞳からめをそらすとまた後頭部に手をそえて顔を胸に押し付ける。
 和哉の熱い胸に顔を埋めてすりすりと顔をよじって頬を押し当てると落ち着く位置を見つける。意外にも和哉の胸の鼓動は澄ました顔と違い強く早く打っていると感じた。

(和哉……。緊張してる?)

「正直朝起きた後のことと、ここに来る車の中のこととか甘いパン食べたこととか覚えているんだけど。ホテルについてからの記憶がちょっと曖昧」
「パンは覚えてるんだ? やっぱり食いしん坊んだね。兄さん」
「煩いな。それで電話が……。沢山……。晶から」

(晶?)

 晶と話をした気がするがどこでどう話したのかいまいち思い出せない。首を筆頭にちりちりとした痛みが思考を奪い、それどころか再び身体が暑く燃え立つようになっていくのを感じて身震いした。

    すると和哉か項に顔を近づけてくんっと嗅ぐ仕草をしてから目を細め獲物をみつけたかのようににっこりと笑う。そしてぼんやりとした柚希に隙をみて、こめかみに恋人同士のように気安く口付けた。

「ああ……。兄さん、すごくいい香りがする。また・・ヒートに入りそうだね? 少しなにか飲む?」

 喉が渇いて先ほどから声が枯れていると思っていたから柚希は頷くと、一度優しく柚希を抱きしめてから立ちあがる和哉を上目遣いに心細げな顔つきで見上げて呟いた。

「俺たち、番になったんだよな?」
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