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恋敵の台頭
恋仇の台頭12
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「ん? 和哉……。ごめん。寝てた」
「身体大丈夫? 体調不良で早退したって聞いたよ? ヒート入りそう?」
「ああ……。多分ね……。明日からさ、前に和哉が予約してくれたシェルターホテル取れたから、朝には移動する」
幸いそのシェルターホテルにもう一室部屋をとっていたわけなので和哉としてはとりあえず現地に連れて行く前に色々説明して拒まれるという心配と手間が省けて、今度こそことが上手く進みそうだと胸を撫ぜ下ろした。
「……そっか。あそこね。シェルターホテルってことは、まだ晶先輩と番になる気はないってことだよね?」
「……うん」
弱弱しい声で呟く柚希の元へ今すぐ駆け付けたかったが、家にいって和哉が柚希のフェロモンにノックアウトされて無理やり奪っては父の二の舞いを踏んでしまう。発情直前の柚希を前にして話をするには、ぎりぎりまで理性が保てるように強い抑制剤を持続時間を計算して飲んでおきたかったら明日にかけようと思った。
「危ないから僕が父さんの車で送るよ。迎えに行くまで絶対に、家で大人しく待っててね?」
「ごめん。正直ありがたい……。今回結構怠さ酷くて。自分で何とかしないといけないのに……。弱気になってごめん」
「身体辛そうだね。今すぐそっちに行っちゃダメ?」
ゆるゆると首を振る柚希は傍に行って抱きしめてあげたくなるような弱々しい姿をさらし、和哉は潤んだ瞳でこちらを見つめてくる柚希の顔に画面越しに指先を触れて頬を撫ぜた。
「……このアパートに1人で寝てたらさ、昔のこと色々思い出したんだ。父さんが死んでさ、父さんの兄弟が母さんのことは追い出そうとしてさ。俺がαなら跡取りにするから置いてけって言われてさ。俺がそんなの嫌だ、母さんと離れたくない。母さんに手出しするなって歯向かって嫌がったら、やっぱり金目当ての下賤の子は礼儀がなってないって。母さんに似た目つきも顔も気に入らないって。叔父からも叔母からも寄ってたかって罵倒されてさ……。母さんは父さんが病気で寝付いてからも親戚に頼らずにずっと一人で看病もしていて尽くしてたのにさ。Ωにとっては番になるって一生ものだよ。それでも父さんのことが大好きだから先が短いってわかっていても番になったのにさ。母さんと夜中に家を逃げ出した時。持ち出せた荷物もちっぽけで不安で寒くて。母さんを護ってやりたいって思ったのに、発情期で苦しむ姿を何度も見て……。俺は何度も自分は無力だって思った。このアパートに来てから母さんが仕事のトラブルで遅くなった時のこととか。最初カーテンもないがらんとした部屋で公園からの光が眩しくて起きた時のこととかさ。色んな辛い記憶が混ぜこぜで蘇ってさ……。俺、この部屋で1人で寂しいって泣きそうになった事も沢山あったけど……。でも和哉と出会ったからはそんなの忘れてたよ。俺に懐いてくれてさ、いつでも1番に俺のところに駆け寄って来てくれた。お前といるとあんな風に卑下された俺も、Ωの母さんの役に立たない俺も。誰かの役には立ててる、好きだって思ってもらえるって思えて……。世界で一番可愛かったなあ。和哉」
兄がここまでの本音を漏らすのは初めてで、和哉は胸が熱くなった。
「身体大丈夫? 体調不良で早退したって聞いたよ? ヒート入りそう?」
「ああ……。多分ね……。明日からさ、前に和哉が予約してくれたシェルターホテル取れたから、朝には移動する」
幸いそのシェルターホテルにもう一室部屋をとっていたわけなので和哉としてはとりあえず現地に連れて行く前に色々説明して拒まれるという心配と手間が省けて、今度こそことが上手く進みそうだと胸を撫ぜ下ろした。
「……そっか。あそこね。シェルターホテルってことは、まだ晶先輩と番になる気はないってことだよね?」
「……うん」
弱弱しい声で呟く柚希の元へ今すぐ駆け付けたかったが、家にいって和哉が柚希のフェロモンにノックアウトされて無理やり奪っては父の二の舞いを踏んでしまう。発情直前の柚希を前にして話をするには、ぎりぎりまで理性が保てるように強い抑制剤を持続時間を計算して飲んでおきたかったら明日にかけようと思った。
「危ないから僕が父さんの車で送るよ。迎えに行くまで絶対に、家で大人しく待っててね?」
「ごめん。正直ありがたい……。今回結構怠さ酷くて。自分で何とかしないといけないのに……。弱気になってごめん」
「身体辛そうだね。今すぐそっちに行っちゃダメ?」
ゆるゆると首を振る柚希は傍に行って抱きしめてあげたくなるような弱々しい姿をさらし、和哉は潤んだ瞳でこちらを見つめてくる柚希の顔に画面越しに指先を触れて頬を撫ぜた。
「……このアパートに1人で寝てたらさ、昔のこと色々思い出したんだ。父さんが死んでさ、父さんの兄弟が母さんのことは追い出そうとしてさ。俺がαなら跡取りにするから置いてけって言われてさ。俺がそんなの嫌だ、母さんと離れたくない。母さんに手出しするなって歯向かって嫌がったら、やっぱり金目当ての下賤の子は礼儀がなってないって。母さんに似た目つきも顔も気に入らないって。叔父からも叔母からも寄ってたかって罵倒されてさ……。母さんは父さんが病気で寝付いてからも親戚に頼らずにずっと一人で看病もしていて尽くしてたのにさ。Ωにとっては番になるって一生ものだよ。それでも父さんのことが大好きだから先が短いってわかっていても番になったのにさ。母さんと夜中に家を逃げ出した時。持ち出せた荷物もちっぽけで不安で寒くて。母さんを護ってやりたいって思ったのに、発情期で苦しむ姿を何度も見て……。俺は何度も自分は無力だって思った。このアパートに来てから母さんが仕事のトラブルで遅くなった時のこととか。最初カーテンもないがらんとした部屋で公園からの光が眩しくて起きた時のこととかさ。色んな辛い記憶が混ぜこぜで蘇ってさ……。俺、この部屋で1人で寂しいって泣きそうになった事も沢山あったけど……。でも和哉と出会ったからはそんなの忘れてたよ。俺に懐いてくれてさ、いつでも1番に俺のところに駆け寄って来てくれた。お前といるとあんな風に卑下された俺も、Ωの母さんの役に立たない俺も。誰かの役には立ててる、好きだって思ってもらえるって思えて……。世界で一番可愛かったなあ。和哉」
兄がここまでの本音を漏らすのは初めてで、和哉は胸が熱くなった。
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