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恋敵の台頭

恋仇の台頭10

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晶と柚希の交際は意外というか睨んだ通りというか割と順調に進んでいるように見えた。
 Ω性を自覚以来、和哉が連れ出す他は仕事以外引きこもりがちだった柚希が、今は休みの度に晶に連れ出されて、以前の社交的で明るい雰囲気を取り戻して来たのだ。

 出かける時でも柚希と自分の二人きりの時の濃厚な関わりを優先した和哉と違い、晶は以前の柚希の屈託ない笑顔を取り戻そうとしつつも、きちんとΩとしての柚希の今も尊重しようとしていた。
   夜に自室でスマホを繋ぐと楽しげに晶とのお出かけの話をしてくる柚希は昔の彼に近い華やいだ様子に見えた。晶にとても大切にしてもらっているようで、今までの交際とは違う手応えを感じる。
それだけにライバルとしての彼は敦哉以来の大きな壁で、喜ばしいことだが和哉は複雑な気分だ。
 柚希も新年を迎えて頑張って明るく前向きに自分を変えていこうとしているようにも見えた。
   なにより学生時代から柚希を憎からず思っていたであろう晶が、柚希を悪いようにするはずがない。
    大人しく身を引くべきは自分の方なのではないかと、和哉は真剣に悩んで、悩みつくして……。
 
 それでも変わらず柚希のほうからスマホを繋げてきて朝も夜も大抵「和哉? 起きてる?」からはじまる眩惑の甘い囁き声を聞かされたら、飼い主の帰りを待っていた和哉の心は仔犬のように尻尾を振って踊る。
 スマホが繋がらない日はアイツと会っているのかと嫉妬で唸り声をあげる狼のような凶悪な気持ちになり、スマホの上で追跡した先の2人を想像して胸が千切れそうに痛くて堪らなかった。
 ある日は和哉が久しぶりに人気スィーツ店巡りをする柚希に付き合い外で会っている時に、大学の同級生でしつこく迫ってくるβの女の子から連絡が頻繁に入ってきた。仕方なく返信しているところを柚希に見られたら、じっと見つめられ相変わらず綺麗で大きな瞳が揺らぎ、寂しそうな顔をされた。

 ああ、まだ柚にいは僕への興味は失っていないんだ。きっと僕のことを好きな気持ちは残っていると、それが弟に対する兄としての愛情でも、愛情には変わらないと、それ以上を期待をzしてしまう。

 期待するたび、次の発情期にはきっと柚希は晶の番になるのだろうと嫉妬とあの時柚希を一人で行かせなければと後悔に苛まれ、眠れずに朝を迎えたことなどかず限りない。 
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