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恋敵の台頭

恋敵の台頭4

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 バスケのOBの間でも誰とはなしに柚希がΩに変じたウワサが出回っているのを和哉は知っていた。過去の仲間と柚希を関わらせたくないのは独占欲からだけではない。和哉自身も後輩という気安さで、柚希の代のOBから下世話な質問をされて、時には口論にすらなっていたが、柚希にはそのことを黙っていた。
   きっと今頃好奇の的にされて、兄は傷ついているかもしれないと思うと、いても立っても居られない気持ちになった。

(僕の傍にいれば、嫌な思いをすることもなく護ってあげられたのに。タイミング、悪すぎ。僕と番うまで、もう誰とも繋がらないで。僕がずっと、兄さんを護ってあげるから。だから、早く帰ってきて、お願いだ)

    途絶えた返信から、和哉の不安が募っている中、電車で帰ると思っていたら柚希はタクシーで移動してきて、日付を跨ぐよりずっと早い時間にきちんとアパートまで辿り着いていて柚希は熱で潤んだ瞳で画面を見つめ続け、ほっと胸を撫ぜ下ろした。

   新年会から戻ると柚希は普段の習慣通り、スマホの電話を繋ぎっぱなしにしてくれて、『和哉、大丈夫? 少しは気分良くなった?』と声をかけてくれた。
 柚希の声はいつ聞いても耳に柔らかく円やかで、それだけで気分がかなり上向く。和哉は熱で朦朧としながら掠れた声で『大丈夫。だいぶ良くなったよ』なんて見栄を張っていたら、柚希がいきなり和哉ではなく部屋にいるであろう別の誰かかと会話を始めたのだ。

 その衝撃でがたがたと震えるほどの悪寒が進み、ぐんっと熱が上がる心地になる。「誰かいるの?」と咳でしゃがれた声をかけたら、今度はより明瞭によく知る男の声がスマホの向こう側から聞こえてきたた。

『和哉、俺だ。晶だ。新年会来られなくて残念だったな? また別の機会に飲もうな? お大事に。よく寝た方がいい』
『かず、もうゆっくり、おやすみ……」

(佐々木晶! どうして柚にいの部屋に?!)

 やや不安げな柚希の声を最後に、ぶちっと通話を断ち切られたのだ。
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