96 / 296
恋敵の台頭
恋敵の台頭3
しおりを挟む
その年の冬。柚希が気苦労をかけ通しの両親に温泉旅行をボーナスを使ってプレゼントすると申し出た。和哉はそれならば自分にも半分出させて欲しいと年末年始、がっつりアルバイトを入れた。
しかしそれが祟ったのか、年が明けて早々に和哉は人生で生まれて初めてインフルエンザにかかってしまった。
悪いことは重なるもので、和哉が寝込んでいる間に柚希がたまたま、勤め先のドーナツ屋に買い物に来たかつてのバスケ部の同期と何気なく連絡先を交換してしまったのだ。
柚希がΩになってから、同じくバスケ部OBの和哉も兄貴に顔を出せと伝えろと再三みなに誘われてきたがあえて柚希に教えることすら無かった。
柚希はとにかく可愛い上に試合中はきりっと飛び切り恰好よくて、さらに清純で綺麗系の見た目という稀有な存在感が、逆にあの荒くれ集団の中で目立っていた。
学生時代の仲間の中にはきっと柚希のことを憎からず思っていた者も多いと和哉は感じて彼らとのかかわりには神経をとがらせていた。
そして誰をよりまず、OBにはあの佐々木晶がいる。
晶は先輩やチームメイトとしては非常に頼れる人格者で付き合っていて気持ちのいい男だが、敵に回したらこれほど怖ろしい男はいない。なにしろ和哉が知る中でバスケ部OB唯一のα、柚希を番にすることができる相手なのだから。
晶のことはより警戒して絶対に接触を持たせないようにしてきたが、よりによって和哉が寝込んでいるタイミングで兄が単独でバスケ部の新年会に顔を出す羽目になってしまったのだ。
無理やりにでもついていきたかったがインフルエンザの感染拡大をさせるわけに行かないし、柚希が行くと言っている以上止める理由が熱で完全にいかれた頭ではいい考えが思い浮かばない。止めたい理由があるにはあったが、それを口にするのは憚られた。
自宅から出られないだけでなく、うつしてはいけないから柚希にもこちらに来させることも出来ないのが頭を掻きむしりたくなるほど歯がゆかった。
『和哉、大丈夫? 新年会少しだけ顔出してくる。今年はさ、気持ちを切り替えていこうと思って』
「気持ちを切り替える」という非常にポジティブな一文が、妙に悪寒を増させて嫌な予感しかできずに和哉は布団の上で文字通りのたうち回った。
『気をつけていってきてね。僕も行きたかったな。今日はすごく寒くなるらしいから遅くならないうちに帰ってきなよね』
節々の耐えられぬ痛みや割れるような頭痛と戦いながら、何とかアプリのトーク欄にそれだけ打ち込んだ。
和哉は解熱剤や痛み止めを飲んで眠くなっては柚希を見張れぬと耐え、スマホを握りしめスマホのGPSの位置情報で柚希が和哉にも伝えられていた焼き鳥屋にいることを見張り、熱でくらくらしながらひたすら動きを凝視していた。
(柚にい。嫌な目に合っていないといいんだけどな……)
しかしそれが祟ったのか、年が明けて早々に和哉は人生で生まれて初めてインフルエンザにかかってしまった。
悪いことは重なるもので、和哉が寝込んでいる間に柚希がたまたま、勤め先のドーナツ屋に買い物に来たかつてのバスケ部の同期と何気なく連絡先を交換してしまったのだ。
柚希がΩになってから、同じくバスケ部OBの和哉も兄貴に顔を出せと伝えろと再三みなに誘われてきたがあえて柚希に教えることすら無かった。
柚希はとにかく可愛い上に試合中はきりっと飛び切り恰好よくて、さらに清純で綺麗系の見た目という稀有な存在感が、逆にあの荒くれ集団の中で目立っていた。
学生時代の仲間の中にはきっと柚希のことを憎からず思っていた者も多いと和哉は感じて彼らとのかかわりには神経をとがらせていた。
そして誰をよりまず、OBにはあの佐々木晶がいる。
晶は先輩やチームメイトとしては非常に頼れる人格者で付き合っていて気持ちのいい男だが、敵に回したらこれほど怖ろしい男はいない。なにしろ和哉が知る中でバスケ部OB唯一のα、柚希を番にすることができる相手なのだから。
晶のことはより警戒して絶対に接触を持たせないようにしてきたが、よりによって和哉が寝込んでいるタイミングで兄が単独でバスケ部の新年会に顔を出す羽目になってしまったのだ。
無理やりにでもついていきたかったがインフルエンザの感染拡大をさせるわけに行かないし、柚希が行くと言っている以上止める理由が熱で完全にいかれた頭ではいい考えが思い浮かばない。止めたい理由があるにはあったが、それを口にするのは憚られた。
自宅から出られないだけでなく、うつしてはいけないから柚希にもこちらに来させることも出来ないのが頭を掻きむしりたくなるほど歯がゆかった。
『和哉、大丈夫? 新年会少しだけ顔出してくる。今年はさ、気持ちを切り替えていこうと思って』
「気持ちを切り替える」という非常にポジティブな一文が、妙に悪寒を増させて嫌な予感しかできずに和哉は布団の上で文字通りのたうち回った。
『気をつけていってきてね。僕も行きたかったな。今日はすごく寒くなるらしいから遅くならないうちに帰ってきなよね』
節々の耐えられぬ痛みや割れるような頭痛と戦いながら、何とかアプリのトーク欄にそれだけ打ち込んだ。
和哉は解熱剤や痛み止めを飲んで眠くなっては柚希を見張れぬと耐え、スマホを握りしめスマホのGPSの位置情報で柚希が和哉にも伝えられていた焼き鳥屋にいることを見張り、熱でくらくらしながらひたすら動きを凝視していた。
(柚にい。嫌な目に合っていないといいんだけどな……)
0
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説

獣人王と番の寵妃
沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
事故つがいの夫は僕を愛さない ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】
カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続、ありがとうございました!
美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活
(登場人物)
高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。
高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。
(あらすじ)*自己設定ありオメガバース
「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」
ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。
天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。
理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。
天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。
しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。
ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。
表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217
さよならの向こう側
よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる