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欲望の加速

欲望の加速9

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 とても認められたものではなかったが、和哉が思うに多分……。

(柚にいは、自分でも気が付いてないけど、きっと初恋の相手は僕の父さんだ)

 わざわざ教えてやるつもりなど毛頭ない。
 きっと本人すら自覚したら戸惑い煩悶するであろう。
 
 多分、理想的な父親としての憧れ、大人の男性に庇護されることの深い安心感等すべてが混ぜこぜになった憧憬に、ほんの一匙混ざりこんでいるような隠し味の蜂蜜のように香り立つ、柚希の初恋。

 和哉は胸をちくちくと苛まれながらも柚希の上に四肢で覆いかぶさり、獲物の喉笛に喰らいつこうと狙う、狼の如くゆっくりと顔を近づけていった。

 片手でしっかりと恋人つなぎをしてさらさらと黒髪を散らした柚希の頭のやや上に重ねると、日頃よりくたっと力の抜けた唇は簡単に和哉の侵入を許した。
 一度唇を離し、上唇を崩すようにくにっと押し付けてから柚希の筋肉が発達しつつもすんなりと細い首筋に舌を這わせて甘噛みを繰り返す。

「んあっ……。はあ、はぁ」

 艶っぽいため息を上げて柚希が再び、自由な方の腕を和哉の首に絡めてきたので、嬉しさ半分憎さ半分の複雑な気持ちに苛まれた。

(まさか、父さんにされていると……思ってるの?)
 
「柚くん……」
 
 『柚にい』や『兄さん』ではなく、わざと敦哉のような低く腰元に響くような声で、敦哉が柚希を呼ぶように耳元で囁けば、柚希が反応して背中を反らしたような気がした。
 自分で悋気の炎を煽った癖に、和哉は苛立ち思わずはだけていた柚希のキナリのネルシャツの前をボタンが弾ける勢いで乱暴に開いて、鎖骨とその下、胸の上にがぶりっと噛みついた。
「ああっ!」
 
 殆ど意識がない程微睡んでいた柚希が、痛みで身じろぎするさまが哀れだったし、寝込みを襲うのはどう考えても卑怯だとは思ったが、今まで柚希に幾たびも嫉妬させられ、柚希を想うたび愛おしさと同じほどの憎らしさ、そしてそれを押して余りあるほどの執着と恋情が和哉の中で頂点に達していた。

(柚希! 僕だよ。君を今抱きしめているのは、僕)

 そのまま乳首の先を潰したり吸ったりしつこく舐めとると、その半開きの口にサディスティックに指を含ませる。舌を指先でつまんで弄ぶと、柚希はくぐもった声を上げつづけ口が開きっぱなしになった端から飲み込み切れぬ涎が垂らして喘いだ。苦し気になったので指を引き抜くとけほけほと咳き込む。そのすきに掴んでいた手を外してシャツを腰元まで下ろして片腕から引き抜いて素肌を晒させると、横向きにした柚希の背後に寝転んだ。 
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