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欲望の加速
欲望の加速4
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欲望の加速4
柚希が初めてのヒートを起こす数か月前から和哉は深夜になると、一階の寝室にいる他の家族に気づかれぬよう夜な夜な隣室にある柚希の部屋へ通った。
柚希に性的なアプローチをしたらΩになるなどと、半信半疑だったけれど、それを口実に少しでも柚希に触れて居たい気持ちが強まったのは、ちょうど柚希が直前に頻繁に通話アプリでやり取りをしていた女性が現れたあたりだった。
和哉が自分の気持ちを真っ正直に告げないのが悪いのだが、だからと言って妬かないではいられない。家にいる間は柚希を独占し、変わらずに一番傍にいるのは和哉で、和哉のことが一番に大切だと思ってくれていると、そう信じて柚希に触れ自分のものであるという気持ちを味わいたかった。
柚希は寝つきが良いから一度寝たらまず起きない。
当時の柚希は春に社会人になりたて、ちょうど春の進学進級に伴うアルバイトの入れ替え時期で、シフトを埋めるために連勤も続き、泥のように眠っていることが多かった。
ベッドの上たまに布団をはだけさせながら色気もへったくれもない高校のジャージの紺のズボンに白いスポーツメーカーのTシャツ姿で熟睡し、いつも変わらぬ様子でくぅくぅと小さな寝息を立てている。
真っ暗な中起こさないようにカーテンを薄く開くと窓から零れる明かりが適度に布団にくるまる柚希を照らしてくれる。
和哉は枕元に跪きさらさらの黒髪が額から零れ綺麗な輪郭が際立つ、しかし瞑目していると起きている時よりずっとあどけない兄の顔を見下ろす。
(出会ったころから変わらない……。狡いくらいに、綺麗なまんまだ)
澄み切った水のような透明感を湛える兄の白い貌と、情欲にまみれ変わり果てた自分自身の姿に胸の奥が軋むように痛くなった。
「兄さん……。柚希。好きだ」
届くこともない告白を口にしながら寝台の横に膝立ちになり、片腕を柚希の顔の横につくと、覆いかぶさるように兄の少しだけ開かれた唇に自分の熱いそれを押し当てた。
小学生の頃とは違い、最近は流石に強引なスキンシップは出来ずにいた。あくまで弟としての領分を越えずに気を付ける。兄に疎まれたら生きていかれない。
兄の唇への口づけは眠っている時にとっくに済ませていた。
もちろん起きているときは唇を奪うことはできずにいたから、久々の柔らかな感触に頭の奥が痺れるような興奮をした。
思わず舌を差し入れると力の抜けた柚希の柔らかな舌先を舐め上げた。
すっとTシャツの中に手を差し入れたら、緊張でパジャマで拭きとるまで汗をかいていたせいか、ややひやっとした掌に反応して柚希が身じろぎする。
一瞬唇を僅かに離して様子を伺ったがやはり柚希は目を覚ますこともなく、あえかな声をたてた。
柚希が初めてのヒートを起こす数か月前から和哉は深夜になると、一階の寝室にいる他の家族に気づかれぬよう夜な夜な隣室にある柚希の部屋へ通った。
柚希に性的なアプローチをしたらΩになるなどと、半信半疑だったけれど、それを口実に少しでも柚希に触れて居たい気持ちが強まったのは、ちょうど柚希が直前に頻繁に通話アプリでやり取りをしていた女性が現れたあたりだった。
和哉が自分の気持ちを真っ正直に告げないのが悪いのだが、だからと言って妬かないではいられない。家にいる間は柚希を独占し、変わらずに一番傍にいるのは和哉で、和哉のことが一番に大切だと思ってくれていると、そう信じて柚希に触れ自分のものであるという気持ちを味わいたかった。
柚希は寝つきが良いから一度寝たらまず起きない。
当時の柚希は春に社会人になりたて、ちょうど春の進学進級に伴うアルバイトの入れ替え時期で、シフトを埋めるために連勤も続き、泥のように眠っていることが多かった。
ベッドの上たまに布団をはだけさせながら色気もへったくれもない高校のジャージの紺のズボンに白いスポーツメーカーのTシャツ姿で熟睡し、いつも変わらぬ様子でくぅくぅと小さな寝息を立てている。
真っ暗な中起こさないようにカーテンを薄く開くと窓から零れる明かりが適度に布団にくるまる柚希を照らしてくれる。
和哉は枕元に跪きさらさらの黒髪が額から零れ綺麗な輪郭が際立つ、しかし瞑目していると起きている時よりずっとあどけない兄の顔を見下ろす。
(出会ったころから変わらない……。狡いくらいに、綺麗なまんまだ)
澄み切った水のような透明感を湛える兄の白い貌と、情欲にまみれ変わり果てた自分自身の姿に胸の奥が軋むように痛くなった。
「兄さん……。柚希。好きだ」
届くこともない告白を口にしながら寝台の横に膝立ちになり、片腕を柚希の顔の横につくと、覆いかぶさるように兄の少しだけ開かれた唇に自分の熱いそれを押し当てた。
小学生の頃とは違い、最近は流石に強引なスキンシップは出来ずにいた。あくまで弟としての領分を越えずに気を付ける。兄に疎まれたら生きていかれない。
兄の唇への口づけは眠っている時にとっくに済ませていた。
もちろん起きているときは唇を奪うことはできずにいたから、久々の柔らかな感触に頭の奥が痺れるような興奮をした。
思わず舌を差し入れると力の抜けた柚希の柔らかな舌先を舐め上げた。
すっとTシャツの中に手を差し入れたら、緊張でパジャマで拭きとるまで汗をかいていたせいか、ややひやっとした掌に反応して柚希が身じろぎする。
一瞬唇を僅かに離して様子を伺ったがやはり柚希は目を覚ますこともなく、あえかな声をたてた。
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