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欲望の加速
欲望の加速3
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和哉は幼くして出会った当初から自分がαで柚希がΩであると信じて疑わなかった。それで一度判定不明になった柚希と同じケースのことをあれこれと独自に調べたのだ。
そういったケースの人間にはおおよそ成人するまでの間に揺らぎがあって、そのままβに落ち着くもの、αになるもの、βになるものがあり、調査によるとその時付き合っていた相手の性に合わせて落ち着くという結果もあったというのだ。
なにぶんαとΩの人間は数が少なく戦後になってから研究がなされ始めた分野な上分母が小さすぎる研究であったので、半分は眉唾だと思ったが、和哉にとっては明るい兆しの見える内容だった。それに学生らしい気安さとポジティブさでそういう内容の文献ばかり読み漁った。
中学三年生の時、和哉は自費でこっそりバース検査を受けた。学生には決して安くはない金額だったが、どうしても翌年の無償期間を待てなかった。柚希に彼女ができ始め、焦っていたのかもしれない。自分がαであることの確証を得ることで、いつかは柚希の全てを自分のものにできると、そう信じるよすがにしたかったのかもしれない。
その後、兄にも一緒に再検査を受けてもらいたかったが、口実が見つからない。
何しろ当の柚希は自分がβだと信じて疑わなかったからだ。
柚希のバスケットで鍛えた身体は、和哉より線は細めだが背丈もすらり高く、それなりにつくべきところには筋肉が綺麗についていた。
爽やかな見た目と朗らかな性格なので、よく女の子から告白されては能天気にありがたがって、よく相手のことも知りもしないうちにすぐに付き合っていた。
一緒に出掛けたり買い物に行ったりと友達でいいのでは? といった程度の交際を繰り返し、毎回いつかは本気になる相手に出会うかもしれないという焦れもあり、和哉はそれなりにヤキモキをさせられた。
和哉がどんな気持ちでいたのかなど、優しい兄はいつでも気ままでマイペースに楽しく生きていて知らなかったのだろう。
だが柚希の彼女は大体、和哉のことを知るや否や蔭で和哉に連絡を取ってきたり、そうでない子も美形の和哉が優しくするとすぐに和哉の方に靡いてきたりして、その後適当にあしらうとまたどこかにいってしまった。
その程度の思いで兄と付き合おうなどと軽く擦り寄ってくる少女たちを穢らわしくすら思い、しかし兄に告白する勇気をまだもてない自分にも嫌気がさした。
出会いからもう十年経った。和哉は父と柚希の背丈を越え、父の出身校でもある難関大にも難なく合格した。
あと少しだと思った。春から社会人になった柚希に、男として誰にも押し負けぬ存在になり得たら告白しようと決めていた。
学生時代から勉強も部活もとにかく頑張って、大学進学もその先も、柚希を養っていけるようにと彼なりに考えて着々と準備をしてきた。
柚希は実父を亡くしてから母と二人、父の親族につらく当たられ苦労していた時期もある。見せないようにしているが、和哉は時折柚希が見せる寂しげな表情を傍で見て育った。
(兄さんを二度と寂しく哀しい思いをさせたくない。柚希の全てを埋める存在は、僕でないといけない。絶対に!)
そんな和哉の決意などどこ吹く風、柚希は相変わらず来るもの拒まずで、児戯のような交際を繰り返す。そのたび和哉が暗躍して破局させてを繰り返す。しかし柚希をめぐるライバルは男も女もわんさかと多すぎて、柚希の前では変わらずににこにこしていても内心は苛立ちを募らせていた。
そんな時相変わらず漁っていた判別不能者についての噂。ネットで流れてきたこれまた都市伝説に近い学説に興味を覚えた。
α性を持つものがΩ性の因子を持っているβ性のあるものに性フェロモンで影響を与えながら、粘膜での接触を途切れなく続ければΩ性に傾いて発現が早まるというものがあった。
あまりに淫靡なその一文が頭から離れず、それを言い訳にして、思春期を抜けきれぬまま拗らせた和哉は柚希へ告白できぬ鬱屈を晴らすことにしたのだ。
そういったケースの人間にはおおよそ成人するまでの間に揺らぎがあって、そのままβに落ち着くもの、αになるもの、βになるものがあり、調査によるとその時付き合っていた相手の性に合わせて落ち着くという結果もあったというのだ。
なにぶんαとΩの人間は数が少なく戦後になってから研究がなされ始めた分野な上分母が小さすぎる研究であったので、半分は眉唾だと思ったが、和哉にとっては明るい兆しの見える内容だった。それに学生らしい気安さとポジティブさでそういう内容の文献ばかり読み漁った。
中学三年生の時、和哉は自費でこっそりバース検査を受けた。学生には決して安くはない金額だったが、どうしても翌年の無償期間を待てなかった。柚希に彼女ができ始め、焦っていたのかもしれない。自分がαであることの確証を得ることで、いつかは柚希の全てを自分のものにできると、そう信じるよすがにしたかったのかもしれない。
その後、兄にも一緒に再検査を受けてもらいたかったが、口実が見つからない。
何しろ当の柚希は自分がβだと信じて疑わなかったからだ。
柚希のバスケットで鍛えた身体は、和哉より線は細めだが背丈もすらり高く、それなりにつくべきところには筋肉が綺麗についていた。
爽やかな見た目と朗らかな性格なので、よく女の子から告白されては能天気にありがたがって、よく相手のことも知りもしないうちにすぐに付き合っていた。
一緒に出掛けたり買い物に行ったりと友達でいいのでは? といった程度の交際を繰り返し、毎回いつかは本気になる相手に出会うかもしれないという焦れもあり、和哉はそれなりにヤキモキをさせられた。
和哉がどんな気持ちでいたのかなど、優しい兄はいつでも気ままでマイペースに楽しく生きていて知らなかったのだろう。
だが柚希の彼女は大体、和哉のことを知るや否や蔭で和哉に連絡を取ってきたり、そうでない子も美形の和哉が優しくするとすぐに和哉の方に靡いてきたりして、その後適当にあしらうとまたどこかにいってしまった。
その程度の思いで兄と付き合おうなどと軽く擦り寄ってくる少女たちを穢らわしくすら思い、しかし兄に告白する勇気をまだもてない自分にも嫌気がさした。
出会いからもう十年経った。和哉は父と柚希の背丈を越え、父の出身校でもある難関大にも難なく合格した。
あと少しだと思った。春から社会人になった柚希に、男として誰にも押し負けぬ存在になり得たら告白しようと決めていた。
学生時代から勉強も部活もとにかく頑張って、大学進学もその先も、柚希を養っていけるようにと彼なりに考えて着々と準備をしてきた。
柚希は実父を亡くしてから母と二人、父の親族につらく当たられ苦労していた時期もある。見せないようにしているが、和哉は時折柚希が見せる寂しげな表情を傍で見て育った。
(兄さんを二度と寂しく哀しい思いをさせたくない。柚希の全てを埋める存在は、僕でないといけない。絶対に!)
そんな和哉の決意などどこ吹く風、柚希は相変わらず来るもの拒まずで、児戯のような交際を繰り返す。そのたび和哉が暗躍して破局させてを繰り返す。しかし柚希をめぐるライバルは男も女もわんさかと多すぎて、柚希の前では変わらずににこにこしていても内心は苛立ちを募らせていた。
そんな時相変わらず漁っていた判別不能者についての噂。ネットで流れてきたこれまた都市伝説に近い学説に興味を覚えた。
α性を持つものがΩ性の因子を持っているβ性のあるものに性フェロモンで影響を与えながら、粘膜での接触を途切れなく続ければΩ性に傾いて発現が早まるというものがあった。
あまりに淫靡なその一文が頭から離れず、それを言い訳にして、思春期を抜けきれぬまま拗らせた和哉は柚希へ告白できぬ鬱屈を晴らすことにしたのだ。
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