73 / 296
マーキング
マーキング5
しおりを挟む
「柚にい! ごめんね!」
「うわっ! びっくりした!」
柚希は和哉と色違いの明るい黄緑色のベッドカバーの上仰向けになって、スマホをいじりながら動画を見ている所だった。
扉を開けしな、おもむろに叫んだ和哉の声が聞こえなかったのか、起き上がって片耳のイヤホンを外して小首を傾げる。
ちらりとみえた柚希の首筋には、大きめのガーゼが大仰に貼り付けられていて痛々しい。
和哉は後ろ手に閉めると、扉の前で怒られてしょぼくれる犬のようにすまなそうな顔をした。
柚希はその顔を見てぷぷっと明るく吹き出すと、起き上がってベッドの上に胡座をかき和也に向かって両腕を広げて愛らしくにこっとする。
「おいで」
和哉もぱあっと光が射すように広がる笑顔で返しすぐさま一目散に柚希の細くも長い腕の中に飛び込んで、勢い余って2人揃ってベッドの上に弾みながら寝転んでしまった。
それでなんだか楽しくなって、温かい身体を互いに抱きしめあうと、どちらともなく笑い声をあげる。
ひとしきり笑いあってから柚希が和哉を抱きしめたままむっくりと起き上がった。和哉は背丈はあってもまだ体重は軽いのでこんな時現役バスケ部員で、隠れマッチョの柚希にひょいっと抱き上げられるのが悔しい。
兄の膝の上に載せられ向かいあわせで座りながら、和哉は殊勝な様子で俯きながら呟いた。
「……柚にい、ごめんね。痛かったよね」
「ほんと、痛かったぞ! もうやらないでくれよな?」
「ごめん」
膝の上だと白く滑らかな兄の額やすっと通った鼻梁、そして長い睫毛がすぐ傍にあり、もちろん抜群に感じの良い口元も手に届きそうだ。
魅了されたまま兄の顔を見おろしていたら、睫毛を伏せそよがせてから柚希がためらいがちに呟いた。
「でもさ。オレも母さんに叱られたよ。和哉はちっちゃい頃から兄弟がいた訳じゃないから、悪ふざけの度合いが分からないんだろうって。お兄ちゃんなんだから柚希が止めてあげないとダメでしょうって」
お兄ちゃんという所を少し誇らしげに強調する柚希は偉ぶる訳ではなく心の底から和哉を慈しんでくれている。そう分かるだけに、恋愛的感情を自覚している和哉はこと、複雑な気持ちを抱きやすくもなるのだ。
「兄さんが悪いわけじゃないよ。僕がふざけすぎたのがダメだった。本当にごめんね。……痕残るかもね?」
「うわっ! びっくりした!」
柚希は和哉と色違いの明るい黄緑色のベッドカバーの上仰向けになって、スマホをいじりながら動画を見ている所だった。
扉を開けしな、おもむろに叫んだ和哉の声が聞こえなかったのか、起き上がって片耳のイヤホンを外して小首を傾げる。
ちらりとみえた柚希の首筋には、大きめのガーゼが大仰に貼り付けられていて痛々しい。
和哉は後ろ手に閉めると、扉の前で怒られてしょぼくれる犬のようにすまなそうな顔をした。
柚希はその顔を見てぷぷっと明るく吹き出すと、起き上がってベッドの上に胡座をかき和也に向かって両腕を広げて愛らしくにこっとする。
「おいで」
和哉もぱあっと光が射すように広がる笑顔で返しすぐさま一目散に柚希の細くも長い腕の中に飛び込んで、勢い余って2人揃ってベッドの上に弾みながら寝転んでしまった。
それでなんだか楽しくなって、温かい身体を互いに抱きしめあうと、どちらともなく笑い声をあげる。
ひとしきり笑いあってから柚希が和哉を抱きしめたままむっくりと起き上がった。和哉は背丈はあってもまだ体重は軽いのでこんな時現役バスケ部員で、隠れマッチョの柚希にひょいっと抱き上げられるのが悔しい。
兄の膝の上に載せられ向かいあわせで座りながら、和哉は殊勝な様子で俯きながら呟いた。
「……柚にい、ごめんね。痛かったよね」
「ほんと、痛かったぞ! もうやらないでくれよな?」
「ごめん」
膝の上だと白く滑らかな兄の額やすっと通った鼻梁、そして長い睫毛がすぐ傍にあり、もちろん抜群に感じの良い口元も手に届きそうだ。
魅了されたまま兄の顔を見おろしていたら、睫毛を伏せそよがせてから柚希がためらいがちに呟いた。
「でもさ。オレも母さんに叱られたよ。和哉はちっちゃい頃から兄弟がいた訳じゃないから、悪ふざけの度合いが分からないんだろうって。お兄ちゃんなんだから柚希が止めてあげないとダメでしょうって」
お兄ちゃんという所を少し誇らしげに強調する柚希は偉ぶる訳ではなく心の底から和哉を慈しんでくれている。そう分かるだけに、恋愛的感情を自覚している和哉はこと、複雑な気持ちを抱きやすくもなるのだ。
「兄さんが悪いわけじゃないよ。僕がふざけすぎたのがダメだった。本当にごめんね。……痕残るかもね?」
0
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです


別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる