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「それはまだ分からない。年齢的に判別ができる年じゃない。もしかしたら柚希はΩではないかもしれないし、お前もαじゃないかもしれない』
「別にΩじゃなくたって、αでもなくたって。僕は兄さんが一番好き。大好きなんだ。誰にも盗られたくない。もちろん父さんにもね?」
だいぶ父に面差しが似てきた息子がそこだけはより母親に似た薄い琥珀色の『ウルフアイ』を光らせて父を威嚇してきたので、まだまだそんな程度では屈しないと父も眦に力を込めた。
「分かった。だけど柚希がβだろうがΩだろうが、無理やり奪うことだけは止めるんだ。自分の中の狼を飼いならせ。優しい犬の皮でも被って、忠犬みたいに穏やかに、大事な人と心を通わせるんだ」
ふんっと和哉は鼻を鳴らす。
「狼なのに、犬のふりをするの?」
「まあ、平たくいうとそうだな。その方が怖がらせないで済む」
「ガブっといくの? 母さんのこともそうしたの?」
亡くなった母の話は何となく柚希たちの前ではしないできたので、敦哉は息子が初めて妻を番にした経緯を聞いてきたことに彼の成長と時の流れのたゆまなさを感じて少し胸にぐっと来るものがあった。
「……まあ、そうかもな。和香とは高校の頃から付き合ってたからなあ。あいつはまあ、美人なのにかなりぼーっとした性格だったから、色々危なっかしくてね。言い寄ってくる奴に牽制しまくって俺も必死だったな。発情期に入りそうって時に、俺に対しても警戒心なくくっついてくるから、まあ、最初の発情期の時にたまたま一緒にいて、がぶっとな。あいつを誰にも盗られたくなかったんだ」
それには和哉も頷きながら振り返り、悪戯っぽい目をして父を見おろした。
「父さんそれ、たまたまじゃないでしょ?」
鋭い息子の突っ込みに頭を掻きながら目元を細めて『どうだったかな?』とにやりと微笑んだ。
「とにかくな、相手もお前だけを一番に愛する様になったら……」
「愛されるさ。絶対に。今だって一番に愛されてるだろ? 見てて? 僕はあんたを軽く越えてやる」
「まあ、俺程度は軽く超えてもらわないとな?」
敦哉の大きな掌が亡き妻によく似た息子の肩にがっしりとかかる。久しぶりにゆっくり息子と話をすることができ、息子の成長を感じられた眼差しは深く温かく、その貌はどこか満足げだった。和哉の方が調子がくるってぷいっと横を向くと椅子から勢いよく立ちあがった。
「僕、兄さんに謝ってくる」
「そうだな。そうしろ」
敦哉が長い腕を惜しみなく振って送り出し、和哉はそのまま直ぐに部屋を飛び出して、隣にある兄の部屋の扉を勢いよく開けはなった。
「それはまだ分からない。年齢的に判別ができる年じゃない。もしかしたら柚希はΩではないかもしれないし、お前もαじゃないかもしれない』
「別にΩじゃなくたって、αでもなくたって。僕は兄さんが一番好き。大好きなんだ。誰にも盗られたくない。もちろん父さんにもね?」
だいぶ父に面差しが似てきた息子がそこだけはより母親に似た薄い琥珀色の『ウルフアイ』を光らせて父を威嚇してきたので、まだまだそんな程度では屈しないと父も眦に力を込めた。
「分かった。だけど柚希がβだろうがΩだろうが、無理やり奪うことだけは止めるんだ。自分の中の狼を飼いならせ。優しい犬の皮でも被って、忠犬みたいに穏やかに、大事な人と心を通わせるんだ」
ふんっと和哉は鼻を鳴らす。
「狼なのに、犬のふりをするの?」
「まあ、平たくいうとそうだな。その方が怖がらせないで済む」
「ガブっといくの? 母さんのこともそうしたの?」
亡くなった母の話は何となく柚希たちの前ではしないできたので、敦哉は息子が初めて妻を番にした経緯を聞いてきたことに彼の成長と時の流れのたゆまなさを感じて少し胸にぐっと来るものがあった。
「……まあ、そうかもな。和香とは高校の頃から付き合ってたからなあ。あいつはまあ、美人なのにかなりぼーっとした性格だったから、色々危なっかしくてね。言い寄ってくる奴に牽制しまくって俺も必死だったな。発情期に入りそうって時に、俺に対しても警戒心なくくっついてくるから、まあ、最初の発情期の時にたまたま一緒にいて、がぶっとな。あいつを誰にも盗られたくなかったんだ」
それには和哉も頷きながら振り返り、悪戯っぽい目をして父を見おろした。
「父さんそれ、たまたまじゃないでしょ?」
鋭い息子の突っ込みに頭を掻きながら目元を細めて『どうだったかな?』とにやりと微笑んだ。
「とにかくな、相手もお前だけを一番に愛する様になったら……」
「愛されるさ。絶対に。今だって一番に愛されてるだろ? 見てて? 僕はあんたを軽く越えてやる」
「まあ、俺程度は軽く超えてもらわないとな?」
敦哉の大きな掌が亡き妻によく似た息子の肩にがっしりとかかる。久しぶりにゆっくり息子と話をすることができ、息子の成長を感じられた眼差しは深く温かく、その貌はどこか満足げだった。和哉の方が調子がくるってぷいっと横を向くと椅子から勢いよく立ちあがった。
「僕、兄さんに謝ってくる」
「そうだな。そうしろ」
敦哉が長い腕を惜しみなく振って送り出し、和哉はそのまま直ぐに部屋を飛び出して、隣にある兄の部屋の扉を勢いよく開けはなった。
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