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約束
約束7
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今までのような柚希に幼気な動物や可愛い子どものようにひたすら愛でられたいという望みではなく、柚希を一人の対等な人として愛し、そして愛されたい。思春期にゆっくりと向かっていく心と身体は初めて会った時よりもずっと成長し、そして欲深くなっていた。
(柚希の全てを、僕のにしたい)
真っ白な光に目に眩むような、その欲求で和哉の頭は満たされ次第にそれは大きな武者震いと確信をもって全身に満ちた。
思考に突き動かされるように、和哉は腕と脚までも使って渾身の力で柚希の全てを雁字搦めに強く強く抱きしめかえした。
「柚にい。僕が兄さんを護ってあげる。世界中で一番、兄さんのことが大好きだから。ずっと傍にいるよ? だからもう泣かないで?」
これでも意を決して心を全てを捧げる覚悟で吐いた告白だった。
柚希は分かっているのか……。しゃくりあげて頷きながら返してくれた。
「……僕も和哉のことが、この世で一番可愛い。大好きだよっ。ずっと傍にいてね?」
そのたった一言で、和哉は恋の抜けられぬ淵に突き落とされ溺れた。
「絶対だよ……。約束だからね?」
和哉は自分からも抱き着いていた腕をとくと、幼いながらも長いそれを懸命に伸ばして柚希の後頭部の黒髪の間に指を差し入れた。
「かず?」
そして戸惑う柚希の顔を必死に下に向けさせると、バネのように伸びやかな長い脚で寝具を蹴り上げ懸命に背を伸ばし、涙でぬれた柚希の頬に自分のそれをぶつける様に押し当てた。
しっとりと涙で濡れた頬。ふにゃりと柔らかな感触が一瞬唇に当たる。たったそれだけの儚い触れ合いでも、互いに身体をびくっと震わせた。
唇に涙が伝わってきた、しょっぱい味のキス。自分から初めてしたキス。頬に触れるだけのそれでも顔がかあっと熱を帯びる。和哉は耳の先まで赤く熱くなった。
くっついていた身体の中で心臓の鼓動が激しさを増すのを柚希から隠しきれないのではないかと恥ずかしくなる。
(柚にいも……、ほっぺにだって、キスは初めてだったらいいな)
茶色く灯りの落ちた部屋の中、柚希がどんな顔をしているか見るのが恥ずかしく、和哉は眠たいふりをして柚希の胸に再び埋める。
すると柚希の心臓の音も自分と同じように高まっていて、それが柚希も確かに和哉の親愛のキスで心を揺さぶられたと物語っていた。和哉は嬉しかったが、だからといって多感な年ごろの二人はもうそのまま何も言うことができずに押し黙った。
温みを全身に感じ、爽やかで甘い柚希独特の香りに包まれていると、あまりの心地よさに和哉は本当にうとうととしてきた。
柚希の柔らかな手が優しい手つきで何度も何度も和哉の背を摩りトントンとされているうちに、和哉は夢見心地の気分のまま眠りに落ちていった。
「和哉……、傍にいてくれ、ありがとう」という優しい声を遠くに聞きながら。
そうして和哉はその後の人生全てを愛する男に縛られることになった。
自ら誘われ入った和哉にとって、それは居心地よく甘美な檻に違いなかった。
(柚希の全てを、僕のにしたい)
真っ白な光に目に眩むような、その欲求で和哉の頭は満たされ次第にそれは大きな武者震いと確信をもって全身に満ちた。
思考に突き動かされるように、和哉は腕と脚までも使って渾身の力で柚希の全てを雁字搦めに強く強く抱きしめかえした。
「柚にい。僕が兄さんを護ってあげる。世界中で一番、兄さんのことが大好きだから。ずっと傍にいるよ? だからもう泣かないで?」
これでも意を決して心を全てを捧げる覚悟で吐いた告白だった。
柚希は分かっているのか……。しゃくりあげて頷きながら返してくれた。
「……僕も和哉のことが、この世で一番可愛い。大好きだよっ。ずっと傍にいてね?」
そのたった一言で、和哉は恋の抜けられぬ淵に突き落とされ溺れた。
「絶対だよ……。約束だからね?」
和哉は自分からも抱き着いていた腕をとくと、幼いながらも長いそれを懸命に伸ばして柚希の後頭部の黒髪の間に指を差し入れた。
「かず?」
そして戸惑う柚希の顔を必死に下に向けさせると、バネのように伸びやかな長い脚で寝具を蹴り上げ懸命に背を伸ばし、涙でぬれた柚希の頬に自分のそれをぶつける様に押し当てた。
しっとりと涙で濡れた頬。ふにゃりと柔らかな感触が一瞬唇に当たる。たったそれだけの儚い触れ合いでも、互いに身体をびくっと震わせた。
唇に涙が伝わってきた、しょっぱい味のキス。自分から初めてしたキス。頬に触れるだけのそれでも顔がかあっと熱を帯びる。和哉は耳の先まで赤く熱くなった。
くっついていた身体の中で心臓の鼓動が激しさを増すのを柚希から隠しきれないのではないかと恥ずかしくなる。
(柚にいも……、ほっぺにだって、キスは初めてだったらいいな)
茶色く灯りの落ちた部屋の中、柚希がどんな顔をしているか見るのが恥ずかしく、和哉は眠たいふりをして柚希の胸に再び埋める。
すると柚希の心臓の音も自分と同じように高まっていて、それが柚希も確かに和哉の親愛のキスで心を揺さぶられたと物語っていた。和哉は嬉しかったが、だからといって多感な年ごろの二人はもうそのまま何も言うことができずに押し黙った。
温みを全身に感じ、爽やかで甘い柚希独特の香りに包まれていると、あまりの心地よさに和哉は本当にうとうととしてきた。
柚希の柔らかな手が優しい手つきで何度も何度も和哉の背を摩りトントンとされているうちに、和哉は夢見心地の気分のまま眠りに落ちていった。
「和哉……、傍にいてくれ、ありがとう」という優しい声を遠くに聞きながら。
そうして和哉はその後の人生全てを愛する男に縛られることになった。
自ら誘われ入った和哉にとって、それは居心地よく甘美な檻に違いなかった。
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