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約束

約束6

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 家族の方向性を決定づけた出来事はそれからまた半年はたった頃だろうか。桃乃が抑制剤の過剰摂取で体調を崩して倒れ、ほとんど真夜中近くに柚希が泣きながら和哉の携帯に電話をしてきた。

    和哉の携帯に敦哉に向けたSOSを発信してきた柚希は、最愛の母の最大のピンチにぐちゃぐちゃの涙声だった。

『カズ、ごめんっ。敦哉さんに代わって! お願い!!』

    自立心の強いなんでも抱え込むたちの柚希がこんな夜中に電話してきたのだからただ事ではないと、敦哉と和哉は直ちに柚希たちのアパートに駆けつけた。
    桃乃は辛うじて意識もある状態であったが顔色は紙のように白く、敦也が抱き上げアパートの一階まで下ろすと、車を出してくれ病院まで付き添ってくれることになった。もう夜も更けていた為、柚希が和哉の面倒を見ることになり、2人でマンションに留守番することになった。

    客用の寝具がなかったので、柚希は和哉の布団で共に横になった。和哉も目が冴えてとても眠れる気分になれず、かといってこちらの背中を向けている柚希の震える身体をどう慰めてあげればよいかも分からずただ焦れ、その背に自らの温みを送るために縋ってやることしかできなかった。
    柚希は、和哉に聞かれぬように口元を手で抑え、時折くぐもった泣き声を漏らす。まだ成長期の少年のほっそりした頼りない自分の身体を腕で抱きしめて、不安に打ちひしがれて泣きつづけていた。

(柚にい.......、柚希。僕がいつでも傍にいるよ)

   赤子のように縮こまってさめざめと泣きぬれる、切なすぎるその姿に和哉は何もできぬ自分自身がもどかしくてたまらなかった。
 柚希の名前を呼び慰め、ほっそりした全てを包み混むように抱き締めてあげたかった。
   だが和哉はまだ柚希の喉元までしか背丈のない小さな自分の身体が恨めしかった。それでも果敢に背中から腰元に手を回して抱きしめると言うより抱きつくような形になったが、逆に寝返りを打った柚希に腕の中に引き寄せられられ、石鹸の香りのする薄い胸に顔を埋められぬいぐるみのように抱きしめられた。

「カズ、こんな遅くまでお父さん借りちゃってごめんね。.......でも敦哉さんがいてくれて本当に良かった。俺一人だったら.......。ううっ」
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