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約束

約束3

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 『何作るの?』なんて尋ねるのを口実にして柚希の細い背中に1度ぎゅむっと抱き寄せ、驚いた柚希に優しくたしなめられながら手元を覗きこんでいた。
 出来上がったものを一緒に食卓に並べると、和哉がせっせと食具を口元に運ぶのを柚希は花が咲くように明るく顔を綻ばせて眺めながら、「美味しいか?」なんて聞いてくる。
 『美味しいよ』と返せば、正面に座る柚希はお行儀悪く頬杖をついて、上目遣いに和哉を見つめながら、昏く寂しい心の奥底まで光を射させるような綺麗な笑顔を浮かべてずっと和哉だけを見つめ、見守ってくれる。
    そんな柚希と目が合うたび、和哉の胸の中は小さく引き絞られるようなきゅんっと切ない心地になった。
    その安らげる笑顔見たさについつい顔を見るたび『お腹すいた』を繰り返し、そのうち夕食までご馳走になる日も増えていった。
   柚希は当時は背はあってもまだほっそりと体格は華奢だった和哉をおなかいっぱいにすることを我が使命と考えていたようで、和哉のために日々工夫してあれこれ用意してくれる。勝手なもので放っておかれると寂しくて、いちいち気を惹こうとあれこれ話しかけた。

「柚にい。こっちでゲームしようよ? 」
「もうちょっとで出来るから待ってろって」
「ここの解き方分からないから」
「あとちょっと」
「ワン! 僕にもう少しかまってよ! ワンワン!! 」
「痛たっ! 噛み付いたらダメ!  わんちゃんおすわりして待ってろ?」
  
 柚希を独り占めできるのならばどんな状況でもそれはそれで本当に嬉しいのに、柚希がこちらに顔を向けてくれないと寂しくて、一緒にいるとどんどん自分が欲深くなると子どもながらに和哉は少し自分が怖くなった。

(もし母さんみたいに急に柚にいが居なくなったらやだな.......。そんなことになったら)
 
 柚希の生命の温みが伝わってくる背中に顔を押し付けたまま、和哉は無意識に息苦しさを感じて喉元を抑えた。そしてより強く柚希の腰にしがみ付くと、柚希はご機嫌な様子で鼻歌を歌っていた。


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