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約束
約束2
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どうしてこんなにも短期間で年も通う学校も違う二人が仲良くなったのかと振り返って考えると不思議だったが、それはやはり互いに友人たちには見せられぬ寂しさや弱みをも曝け出せる相手として認め合ったからに他ならないだろう。
友人が多く陽気で寂しいところや暗いところを人に見せたくない柚希と教師からも賢い子だと一目置かれ、しっかり者で母の死後もとても気丈に過ごしている和哉。
2人とも学校においても家庭でも、いわゆる手のかからない子だったが、その反動か二人でいる時は互いにお互いを自然に甘え、甘やかしあった。
柚にい、カズと親しげに呼び合い、まるで擬似兄弟のような心地になって、心の中に知らず出来ていた隙間を交互に愛情を注いで満たし続けた。
心に素直になることで自分の中の悲しみや弱さと向き合わざるを得なくなる。それが嫌で、柚希を利用してやるなどとつっぱっていた和哉の心の意固地な部分など、柚希の淡い桜色の唇に浮かぶパンケーキみたいにふんわり甘い笑顔一つで、すっかり蕩けさせられた。
逆に柚希の方も和哉が愛くるしいと評判の顔立ちでにこにこ素直に柚希を慕い甘えてくるのが、それはそれは嬉しくて和哉のことが日ごと愛おしくてたまらなくなっていた。
柚希は何時でも1番大好きなものを見つめているような潤んだ『きらきらお目目』をして、和哉を見つめ返してくれる。その度和哉は態度に出ないまでも天にも登る気持ちになれた。
ただ微笑みあうだけで互いに胸の中が芯から温まれる。そんなよい方法を編み出したのだから、手放せるはずがなかったのだ。
友達が多い柚希は部活の後公園で話し込んでいる日もあったが、大抵はスマホに律儀に帰宅の連絡を入れてくれて、それを見た和哉が公園に走りこんでくるとアパートの窓から眺め前のめりに手を振って、自分も古ぼけた鉄の階段をかんかんっと音を立てており、嬉しそうに出迎えてくれた。
柚希は公園でまだ友達と一緒にいる時だって、和哉がやってきたら残念がる彼らにあっさりさよならを言い、さっさと二人して和哉のアパートに向かう。
柚希は飛び切り可愛い上に明るくて友人も多い。彼らが本当は少し和哉のことを邪魔くさく思っているのも彼らの視線から和哉は感じてた。
でもその友人の誰よりも和哉を優先してくれることに優越感に浸りながら、差し出してくれる温かい手を握ると、何の落ち度もない優しい母を突然無慈悲に奪われ亡くしたという心に巣食う寂しさや悔しさの全てが浄化される心地だった。
隣りを歩く和哉を見おろしながら、柚希は日向で揺れる白い花のように清らかな笑顔を浮かべて『腹減ってるか?』とまだ変声期が終わり切っていない澄んだ声で聞いてくれる。
和哉は家に用意されているおやつやご飯もあるにはあったが、それには触れずに頷くと柚希が嬉しそうな顔をして台所に向かってくれた。
学ランを脱いでシャツの腕をまくり、そのままエプロンをつける。
それが何とも言えない清潔感に溢れた楚々とした後ろ姿で、すっと伸びつつもどこか儚げな背中にすがり抱きつきたくて仕方なくなる。
友人が多く陽気で寂しいところや暗いところを人に見せたくない柚希と教師からも賢い子だと一目置かれ、しっかり者で母の死後もとても気丈に過ごしている和哉。
2人とも学校においても家庭でも、いわゆる手のかからない子だったが、その反動か二人でいる時は互いにお互いを自然に甘え、甘やかしあった。
柚にい、カズと親しげに呼び合い、まるで擬似兄弟のような心地になって、心の中に知らず出来ていた隙間を交互に愛情を注いで満たし続けた。
心に素直になることで自分の中の悲しみや弱さと向き合わざるを得なくなる。それが嫌で、柚希を利用してやるなどとつっぱっていた和哉の心の意固地な部分など、柚希の淡い桜色の唇に浮かぶパンケーキみたいにふんわり甘い笑顔一つで、すっかり蕩けさせられた。
逆に柚希の方も和哉が愛くるしいと評判の顔立ちでにこにこ素直に柚希を慕い甘えてくるのが、それはそれは嬉しくて和哉のことが日ごと愛おしくてたまらなくなっていた。
柚希は何時でも1番大好きなものを見つめているような潤んだ『きらきらお目目』をして、和哉を見つめ返してくれる。その度和哉は態度に出ないまでも天にも登る気持ちになれた。
ただ微笑みあうだけで互いに胸の中が芯から温まれる。そんなよい方法を編み出したのだから、手放せるはずがなかったのだ。
友達が多い柚希は部活の後公園で話し込んでいる日もあったが、大抵はスマホに律儀に帰宅の連絡を入れてくれて、それを見た和哉が公園に走りこんでくるとアパートの窓から眺め前のめりに手を振って、自分も古ぼけた鉄の階段をかんかんっと音を立てており、嬉しそうに出迎えてくれた。
柚希は公園でまだ友達と一緒にいる時だって、和哉がやってきたら残念がる彼らにあっさりさよならを言い、さっさと二人して和哉のアパートに向かう。
柚希は飛び切り可愛い上に明るくて友人も多い。彼らが本当は少し和哉のことを邪魔くさく思っているのも彼らの視線から和哉は感じてた。
でもその友人の誰よりも和哉を優先してくれることに優越感に浸りながら、差し出してくれる温かい手を握ると、何の落ち度もない優しい母を突然無慈悲に奪われ亡くしたという心に巣食う寂しさや悔しさの全てが浄化される心地だった。
隣りを歩く和哉を見おろしながら、柚希は日向で揺れる白い花のように清らかな笑顔を浮かべて『腹減ってるか?』とまだ変声期が終わり切っていない澄んだ声で聞いてくれる。
和哉は家に用意されているおやつやご飯もあるにはあったが、それには触れずに頷くと柚希が嬉しそうな顔をして台所に向かってくれた。
学ランを脱いでシャツの腕をまくり、そのままエプロンをつける。
それが何とも言えない清潔感に溢れた楚々とした後ろ姿で、すっと伸びつつもどこか儚げな背中にすがり抱きつきたくて仕方なくなる。
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