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約束

約束1

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それからというもの和哉は柚希が通る公園や、雨の日には柚希のアパートの軒下で帰宅を待ち、家に上がり込んで父の帰宅前に自宅に帰るという生活を繰り返すようになった。

 出会いから二週間もたたずに金木犀の花は雨に散りぐっと冬に近づいたので、いくら元気いっぱいの小学生とはいえ外にずっといると身体が冷え切ってしまう。
    公園でいつも通りベンチに座っていたら、日が暮れる直前に柚希が戻ってきた。

 冷たい乾燥した風にあおられ、白くかさつく和哉の頬を柚希が両手の平を擦り合わせてから温め『寒かったよね? 風邪ひいちゃうよ。外で俺を待ってなくていいんだよ?』と小さな子に言うようにしきりに心配してきた。

『大丈夫。柚にいに会ったら寒いの吹き飛ぶから』

 そんな風に少しかわい子ぶって返して柚希のあの柔らかな手を外側から握って、ふっくらした掌に2度3度とキスを送るような仕草をした。
 周りの少年たちからはその積極的な姿に囃子声がかかったが、しかし柚希の方はきっとこの子は意味など分かっていないのだろうなというような顔で眉を下げて困ったようにはにかんだだけだった。
 
 結局近所にたまに不審者が出るというのを学校でも聞きつけてきた柚希が可愛い和哉に何かあったらと心配をして、柚希が帰宅したらスマホで連絡を取り合うということを約束させられた。それでもなんとなくそろそろ帰って来るかな?と思うと和哉はいてもたってもいられずに公園に柚希を待ち伏せに行った。放課後柚希を待つのは苦にはならなかったが、土日にバスケ部の遠征でなかなか帰ってこられない時など一日でも顔が見られない方がよっぽど応えた。
  
 和哉が柚希に気に入られたくてバスケットに興味がある素振りを見せると『教えたげるね』ととても嬉しそうだった。
 夕暮れ時公園、街灯の明かりを頼りに、柚希に手加減されつつも熱心にパスの練習やドリブルの練習をして、上手い上手いと喜ばれるから和哉もどんどんその気になってそのうち本当にバスケが好きになった。
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