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柔く白い手

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 じいっと大きな黒い瞳で見つめられたからなんだかこちらも照れてしまい、和哉はドーナツを口いっぱいの頬張るとむせてしまった。
 慌てて柚希が麦茶をもって戻ってきて口元に運んでくれる。

「顏、じろじろみられるの、ちょっと……」

 和哉は幼い頃から評判の美少年だったので、女の子みたいに可愛いとかモデルさんに慣れそうね?などと大人からも子供からも大絶賛されてきた。
 だからしげしげと無遠慮に、ちらちらとこっそり盗み見られることも多かったが、今は単純に青みがかって美しい柚希の真っすぐな瞳に見つめられるのに照れてしまったのだ。
 
「ごめん、やだったか。君のお母さんのこと思い出してた。君がさ、もっと小さい頃によく公園で遊んでもらってただろ? 俺母さんと二人でここに引っ越してきたばかりの時、学校の手続きする前、何日かこの公園で長い時間遊んでたときあったから……」
「母さんのこと覚えてるんだ?」
 
 すると少しだけ顔を赤らめて睫毛が一本一本が濃く驚くほど長い瞳を伏せてうっとりと微笑んだ。

「すごく綺麗な人だったから、目立ってたし。子供連れてたけどお姉さんなのかなって思ったぐらい若くて美人だった。……似てるね。君」

(そっか。母さんと俺が似てたから、最初はきっと女の子だと思って優しくしてくれたんだ)
 
 少しもやっとした気持ちになったが、その感情に名前がつけられるほど成熟していない和哉は待てよと思い直した。

(じゃあ、こいつきっと僕の顔が好きってことだよな? 好きなら僕の為に色々な事してくれるよな。これから僕が1人で居なくてもいいように、こいつのことを利用してやる)
 
   寂しい気持ちに囚われるのは負けなような気持ちがして、その頃の和哉は柚希に甘えたいと切望する心をこのようにしか表現出来なかったのだ。

 
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