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柔く白い手

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 いつまでも触れていて欲しくなるような、そのくせ恥ずかしくて振り払いたくなるようなそんな気持ちを初めて味わいながら押し殺した熱い吐息をこらえきれずにふうっと吐き出す。
 柚希は痛みに耐えているのが辛かったのだろうと、吐息だけで「ふふっ」と笑いその甘い息が降りかかるとまた耳の辺りがぞくぞくっとなった。

「終わったよ」

 複雑な、しかし甘美な心地に囚われていた和哉に、柚希は明るくそう告げると、柔軟剤が効いた柔らかなタオルを取り出して宝物の様に手をふんわりと包んで水滴を取り除いてくれた。

「ありがとう」
 
 なぜだかぽーっとしてしまい、和哉は素直にお礼が口をするするとついてでた。すると柚希がまたあの周りが華やぐような笑顔を見せてタオルを洗濯籠にぽいっといれると和哉の頭をさらりと撫ぜてくれた。

「どういたしまして。うーん。でもズボンもどろどろだな……。うちだったら泥は中々汚れが落ちないのにって、母さんにぼやかれるとこだぞ」

 そういってぱしっと呆けていた背中を叩かれてから、その拍子に思わずポロリと本音を呟いてしまった。

「……うち、母さんいないし、父さんは夜まで帰ってこないから、洗濯ものの中に突っ込んでおけば、バレない」
「……そうか。うちと逆だな。うちは父さんがいない」

 意外な返事に俯いた顔を上げると、柚希は少し寂し気みえるがそこがまた胸に来るほど美しい顔で微笑んだ。  その笑顔にも和哉はまた胸の奥がぎゅっとなる。

(この人も……。寂しいのかな。寂しいから僕を家に入れて、世話を焼こうとしているのかな?)

 二人の間に共通点があるとは思ってもみなかったが、柚希に対して一気に親近感が沸いてきた。

「じゃあさ、俺がユニホーム洗うついでにズボンの泥落として洗濯してやるよ。着替えは.......俺が昔着てた服探してくるから待ってて」

    柚希も余計に情が湧いたのは同じだったようで、より親身になってあれこれと世話を焼いてくれ始めた。
   気に入ったならあげると言われて着せられたズボンは、彼が今の和哉ぐらいの時に着ていたらしいが、和也ではすでに丈が足りず『足長い! なんか生意気だな』とからかわれ今日は2回も生意気と言われ、しかし不思議とこちらはずっとまろやかに甘く響いた。

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