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牙を剥く狼
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晶は和哉から視線を外さず睨みつけたまま、苛立たしげにネイビーのネクタイを緩めた。
「家族を亡くして、人生の一番底の時だって、お互いに助け合って生きてきたんだ。絶対に誰であっても、それが晶先輩だったとしても、僕らの間にはけして割り込ませない。僕が一生柚希の傍にいて生涯支える、愛しぬくって、人生の半分をかけてそう誓ってきた。譲れない。絶対に!」
「和哉! 柚希の意志は尊重したのか? それが柚希の望みだったのか?」
キャプテンとしてチームを引っ張っていった時には聞きなれた怒号に、和哉は僅かに頬を引きつらせたが、もう仲の良い先輩としての晶の𠮟責が届くことはない。
二人は互いに仇敵に出会ったように目をぎらつかせたまま、和哉は晶に掴みかかられ両肩を激しく揺さぶられたが、逆にその腕を上から潰れてしまえと思うほどの渾身の力で掴み上げた。まだ柚希の血が残る唇で犬歯を舌でなぞり不敵な笑みで応戦する。
「それにどのみち、もう遅いんだよ……。見ただろ? 兄さんは僕のものだ」
晶にとって柚希は他ならぬ初恋の相手だ。長く拗らせるほどに愛し、彼の全てに夢中になった人。
1度は諦め、嫌われることを恐れて大切にしすぎたのは否めず、こんなことならばはやく奪っておけばよかったと後悔ばかりが頭を過る。
(柚希が俺を本能的に恐れる理由は分からない。だからといってここで引く訳にはいかない!)
腕をとられたまま和哉を引きずる様に柚希に元に歩を進める。今度は防戦に転じた和哉が引き倒さんばかりに晶の腕を出口のように引き、いかせまいと自分と同じぐらい体格のいい男をアメフトの選手がスクラムを組むときのような姿勢でばちんと筋肉が鳴るほどの勢いで押し返った。晶も負けじとすぐ傍にある和哉の耳元で厳めしい声を上げた。
「こんな誤魔化し、通用すると思ってるのか?」
せせら笑う晶のその言葉に双眸を僅かに見開いた和哉の鼻孔に、ふわりと和哉の元にも柚希の清らかな石鹸にもにた甘く清々しい香りが漂ってきた。
「家族を亡くして、人生の一番底の時だって、お互いに助け合って生きてきたんだ。絶対に誰であっても、それが晶先輩だったとしても、僕らの間にはけして割り込ませない。僕が一生柚希の傍にいて生涯支える、愛しぬくって、人生の半分をかけてそう誓ってきた。譲れない。絶対に!」
「和哉! 柚希の意志は尊重したのか? それが柚希の望みだったのか?」
キャプテンとしてチームを引っ張っていった時には聞きなれた怒号に、和哉は僅かに頬を引きつらせたが、もう仲の良い先輩としての晶の𠮟責が届くことはない。
二人は互いに仇敵に出会ったように目をぎらつかせたまま、和哉は晶に掴みかかられ両肩を激しく揺さぶられたが、逆にその腕を上から潰れてしまえと思うほどの渾身の力で掴み上げた。まだ柚希の血が残る唇で犬歯を舌でなぞり不敵な笑みで応戦する。
「それにどのみち、もう遅いんだよ……。見ただろ? 兄さんは僕のものだ」
晶にとって柚希は他ならぬ初恋の相手だ。長く拗らせるほどに愛し、彼の全てに夢中になった人。
1度は諦め、嫌われることを恐れて大切にしすぎたのは否めず、こんなことならばはやく奪っておけばよかったと後悔ばかりが頭を過る。
(柚希が俺を本能的に恐れる理由は分からない。だからといってここで引く訳にはいかない!)
腕をとられたまま和哉を引きずる様に柚希に元に歩を進める。今度は防戦に転じた和哉が引き倒さんばかりに晶の腕を出口のように引き、いかせまいと自分と同じぐらい体格のいい男をアメフトの選手がスクラムを組むときのような姿勢でばちんと筋肉が鳴るほどの勢いで押し返った。晶も負けじとすぐ傍にある和哉の耳元で厳めしい声を上げた。
「こんな誤魔化し、通用すると思ってるのか?」
せせら笑う晶のその言葉に双眸を僅かに見開いた和哉の鼻孔に、ふわりと和哉の元にも柚希の清らかな石鹸にもにた甘く清々しい香りが漂ってきた。
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