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牙を剥く狼
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衝撃をこらえきれずに足元から崩れ落ちる柚希の身体に長い腕が蛇のように回り締め付けられ、絶対に逃れられない渾身の力を込めて覆いかぶされる。
「うっ……、うう!!」
しかし柚希も男だ。何とか抵抗を見せようと身をよじる。しかし手負いの柚希の必死の抵抗に逆に煽られた和哉は離すまいと余計に力を込めて、生涯この一瞬の為だけに発達した犬歯をさらにしっかりと筋肉の発達した柚希の壮健な項に食い込ませる。
溢れる血潮を野獣のように啜りながらぶちぶちと肉を割き、ぐっと歯列に力を込めて噛みついた。
まるで獲物が喉笛を嚙み切られる寸前のように柚希はびくっびくっと暴れ、ショックと強く放出された和哉のフェロモンによってそのまま気を失ってしまう。
「ああっ! 兄さん。 ゆずきっ、柚希!!」
和哉は自分が犯した罪を直視し、崩れ落ちる身体を抱えなおす。顔色を失い大粒の涙が伝う兄の頬に慰めるように血にまみれたままの唇を押し当てた。
「ごめん、父さん。僕もっ……! 自分の中の狼を飼いならせそうにない」
「……ごめん」
ずっと噛みたくて、噛みたくて、噛みたくて、気が狂いそうだったのに。噛みついたら……。苦しくてたまらない。
だからといって後悔は微塵もない。そして謝ったら何をしてもいいわけではないと分かっている。
これまでも愛情を試すような悪戯をしたこともあったが、和哉が何をしても柚希は笑って許してくれた。
だが……。
(こんな身勝手なことをして、許してくれないかもしれない……。でも、兄さんをあいつにどうしても渡したくないんだ)
眦を吊り上げ、ぎりりっと奥歯を噛みしめた後、覚悟を決めた和哉の行動は早かった。
破り去る様に柚希の白いシャツを脱がすと、まだ血がどくどくと流れる項を一度それでグイっと拭う。意識を失った相手を軽々と抱え上げて寝台まで運びあげた。
柚希の美しい背中の線が悩ましく見えるようにして腰元まで夜具をかけると、自らもシャツを脱ぎ去って腹筋がはっきりと割れ、日頃はずっと着やせしてみえる程逞しい上半身を晒し野性的に髪を乱した。そしてスマホを拾い上げると晶に呼びかける。
「先輩。ドア、開けますよ。僕と話しましょ?」
「うっ……、うう!!」
しかし柚希も男だ。何とか抵抗を見せようと身をよじる。しかし手負いの柚希の必死の抵抗に逆に煽られた和哉は離すまいと余計に力を込めて、生涯この一瞬の為だけに発達した犬歯をさらにしっかりと筋肉の発達した柚希の壮健な項に食い込ませる。
溢れる血潮を野獣のように啜りながらぶちぶちと肉を割き、ぐっと歯列に力を込めて噛みついた。
まるで獲物が喉笛を嚙み切られる寸前のように柚希はびくっびくっと暴れ、ショックと強く放出された和哉のフェロモンによってそのまま気を失ってしまう。
「ああっ! 兄さん。 ゆずきっ、柚希!!」
和哉は自分が犯した罪を直視し、崩れ落ちる身体を抱えなおす。顔色を失い大粒の涙が伝う兄の頬に慰めるように血にまみれたままの唇を押し当てた。
「ごめん、父さん。僕もっ……! 自分の中の狼を飼いならせそうにない」
「……ごめん」
ずっと噛みたくて、噛みたくて、噛みたくて、気が狂いそうだったのに。噛みついたら……。苦しくてたまらない。
だからといって後悔は微塵もない。そして謝ったら何をしてもいいわけではないと分かっている。
これまでも愛情を試すような悪戯をしたこともあったが、和哉が何をしても柚希は笑って許してくれた。
だが……。
(こんな身勝手なことをして、許してくれないかもしれない……。でも、兄さんをあいつにどうしても渡したくないんだ)
眦を吊り上げ、ぎりりっと奥歯を噛みしめた後、覚悟を決めた和哉の行動は早かった。
破り去る様に柚希の白いシャツを脱がすと、まだ血がどくどくと流れる項を一度それでグイっと拭う。意識を失った相手を軽々と抱え上げて寝台まで運びあげた。
柚希の美しい背中の線が悩ましく見えるようにして腰元まで夜具をかけると、自らもシャツを脱ぎ去って腹筋がはっきりと割れ、日頃はずっと着やせしてみえる程逞しい上半身を晒し野性的に髪を乱した。そしてスマホを拾い上げると晶に呼びかける。
「先輩。ドア、開けますよ。僕と話しましょ?」
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