43 / 296
金木犀
8
しおりを挟む
聞き捨てならぬ内容に柚希がぱんっと音が弾ける程に腕を突っぱねて身体を離そうとしたが、日頃は手加減をしてくれていたのか和哉の身体はびくともしない。今更ながら体格と力の差を思い知るがもう遅い。本気になられたら柚希の抵抗など風前の灯火で、ここは何とか冷静に話をしなければと思えば思うほど、興奮から身体の火照りは増していった。
「そうでも言わないと、兄さん、僕とも会ってくれなくなるでしょ? 家にαが二人なんて絶対にもう寄り付かなくなる。父さんはともかくさ。僕のことまで避けるなんて、そんなの耐えらんないよ。だから嘘ついたんだ」
「信じられない……。お前、ずっと俺のこと騙してたんだな!」
「僕が生きるためには……仕方ないでしょ? 兄さんがいなけりゃ、僕は、息もできない」
「かずや……」
弟の顔を両方の眉を下げ切った情けない顔でまじまじと見つめる兄に、和哉は悪びれない様子で長い間の秘め事を告げた口元には笑みさえ漂わせていた。
「あーあ。ついに言っちゃった。でもね、兄さん。このこと知ったからにはもう、絶対に、逃がさないからね? 兄さんはずっと。僕だけの兄さんなんだから。父さんや先輩に横取りなんてさせないんだからね?」
避ける間もなく再び和哉が唇を近づけてきたので、今度は二の腕をベッドの上に押さえつけられていた柚希は避けることもできずに受け入れた。
恋人の晶がたまに感極まったようにしてきた、甘く狂おしい恋人同士の官能的な口づけ。しかしそれはまだお行儀が良いものだったらしい。
ついに狼としての本分を現した和哉は若さで猛り、長い舌で慎ましく結ばれたままの兄の唇を思うさま犯し始める。
熱い柔らかな舌で弟に舌の裏から先までを舐めあげられ、緊張と恐れから柚希が身体を強張らせた。和哉は兄の恐れをすぐに汲み取り、片手では乱暴なほど強く身体を押さえつけてくるくせに、互いに髪を乾かしあっていた時にいつもくすぐったがって兄が身をよじる箇所を覚えていて、耳朶と首筋に境の辺りをあざとい程優しい手つきで撫ぜると柚希の身体から少しだけこわばりがほどけていく。
そのままやわやわと口内をそよぐ様に舌先で撫ぜると、柚希の体の中にぞくぞくと快感の灯が仄かに灯っていった。しかし戸惑いから自ら応じるまではできずにいると、金木犀の香りがぐっと強くこちらを侵すように薫ってきて、いくら鈍い柚希でも流石に思い当たった。
(この香りは……、お前のだったんだな)
「そうでも言わないと、兄さん、僕とも会ってくれなくなるでしょ? 家にαが二人なんて絶対にもう寄り付かなくなる。父さんはともかくさ。僕のことまで避けるなんて、そんなの耐えらんないよ。だから嘘ついたんだ」
「信じられない……。お前、ずっと俺のこと騙してたんだな!」
「僕が生きるためには……仕方ないでしょ? 兄さんがいなけりゃ、僕は、息もできない」
「かずや……」
弟の顔を両方の眉を下げ切った情けない顔でまじまじと見つめる兄に、和哉は悪びれない様子で長い間の秘め事を告げた口元には笑みさえ漂わせていた。
「あーあ。ついに言っちゃった。でもね、兄さん。このこと知ったからにはもう、絶対に、逃がさないからね? 兄さんはずっと。僕だけの兄さんなんだから。父さんや先輩に横取りなんてさせないんだからね?」
避ける間もなく再び和哉が唇を近づけてきたので、今度は二の腕をベッドの上に押さえつけられていた柚希は避けることもできずに受け入れた。
恋人の晶がたまに感極まったようにしてきた、甘く狂おしい恋人同士の官能的な口づけ。しかしそれはまだお行儀が良いものだったらしい。
ついに狼としての本分を現した和哉は若さで猛り、長い舌で慎ましく結ばれたままの兄の唇を思うさま犯し始める。
熱い柔らかな舌で弟に舌の裏から先までを舐めあげられ、緊張と恐れから柚希が身体を強張らせた。和哉は兄の恐れをすぐに汲み取り、片手では乱暴なほど強く身体を押さえつけてくるくせに、互いに髪を乾かしあっていた時にいつもくすぐったがって兄が身をよじる箇所を覚えていて、耳朶と首筋に境の辺りをあざとい程優しい手つきで撫ぜると柚希の身体から少しだけこわばりがほどけていく。
そのままやわやわと口内をそよぐ様に舌先で撫ぜると、柚希の体の中にぞくぞくと快感の灯が仄かに灯っていった。しかし戸惑いから自ら応じるまではできずにいると、金木犀の香りがぐっと強くこちらを侵すように薫ってきて、いくら鈍い柚希でも流石に思い当たった。
(この香りは……、お前のだったんだな)
0
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
零れる
午後野つばな
BL
やさしく触れられて、泣きたくなったーー
あらすじ
十代の頃に両親を事故で亡くしたアオは、たったひとりで弟を育てていた。そんなある日、アオの前にひとりの男が現れてーー。
オメガに生まれたことを憎むアオと、“運命のつがい”の存在自体を否定するシオン。互いの存在を否定しながらも、惹かれ合うふたりは……。 運命とは、つがいとは何なのか。
★リバ描写があります。苦手なかたはご注意ください。
★オメガバースです。
★思わずハッと息を呑んでしまうほど美しいイラストはshivaさん(@kiringo69)に描いていただきました。
その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい
海野幻創
BL
「その溺愛は伝わりづらい」の続編です。
久世透(くぜとおる)は、国会議員の秘書官として働く御曹司。
ノンケの生田雅紀(いくたまさき)に出会って両想いになれたはずが、同棲して三ヶ月後に解消せざるを得なくなる。
時を同じくして、首相である祖父と、秘書官としてついている西園寺議員から、久世は政略結婚の話を持ちかけられた。
前作→【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」
悠里
BL
Ωの凛太。オレには夢がある。その為に勉強しなきゃ。お金が必要。でもムカつく父のお金はできるだけ使いたくない。そういう店、もありだろうか……。父のお金を使うより、どんな方法だろうと自分で稼いだ方がマシ、でもなぁ、と悩んでいたΩ凛太の前に、何やらめちゃくちゃイケメンなαが現れた。
凛太はΩの要素が弱い。ヒートはあるけど不定期だし、三日こもればなんとかなる。αのフェロモンも感じないし、自身も弱い。
なんだろこのイケメン、と思っていたら、何やら話している間に、変な話になってきた。
契約結婚? 期間三年? その間は好きに勉強していい。その後も、生活の面倒は見る。デメリットは、戸籍にバツイチがつくこと。え、全然いいかも……。お願いします!
トリプルエスランク、紫の瞳を持つスーパーαのエリートの瑛士さんの、超高級マンション。最上階の隣の部屋を貰う。もし番になりたい人が居たら一緒に暮らしてもいいよとか言うけど、一番勉強がしたいので! 恋とか分からないしと断る。たまに一緒にパーティーに出たり、表に夫夫アピールはするけど、それ以外は絡む必要もない、はずだったのに、なぜか瑛士さんは、オレの部屋を訪ねてくる。そんな豪華でもない普通のオレのご飯を一緒に食べるようになる。勉強してる横で、瑛士さんも仕事してる。「何でここに」「居心地よくて」「いいですけど」そんな日々が続く。ちょっと仲良くなってきたある時、久しぶりにヒート。三日間こもるんで来ないでください。この期間だけは一応Ωなんで、と言ったオレに、一緒に居る、と、意味の分からない瑛士さん。一応抑制剤はお互い打つけど、さすがにヒートは、無理。出てってと言ったら、一人でそんな辛そうにさせてたくない、という。もうヒートも相まって、血が上って、頭、良く分からなくなる。まあ二人とも、微かな理性で頑張って、本番まではいかなかったんだけど。――ヒートを乗り越えてから、瑛士さん、なんかやたら、距離が近い。何なのその目。そんな風に見つめるの、なんかよくないと思いますけど。というと、おかしそうに笑われる。そんな時、色んなツテで、薬を作る夢の話が盛り上がってくる。Ωの対応や治験に向けて活動を開始するようになる。夢に少しずつ近づくような。そんな中、従来の抑制剤の治験の闇やΩたちへの許されない行為を耳にする。少しずつ証拠をそろえていくと、それを良く思わない連中が居て――。瑛士さんは、契約結婚をしてでも身辺に煩わしいことをなくしたかったはずなのに、なぜかオレに関わってくる。仕事も忙しいのに、時間を見つけては、側に居る。なんだか初の感覚。でもオレ、勉強しなきゃ!瑛士さんと結婚できるわけないし勘違いはしないように! なのに……? と、αに翻弄されまくる話です。ぜひ✨
表紙:クボキリツ(@kbk_Ritsu)さま
素敵なイラストをありがとう…🩷✨
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる