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憧れの人
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青い青い時期。頭の中で柚希を何度も穢している罪悪感があり、清らかな柚希が変わらずに自分に親切にしてくれることが申し訳なくて、正面から見つめられず盗みることしか出来なくなっていた。
そんな高校1年の初夏。柚希に初めての彼女ができ、それが晶と同級生であるという事実には酷く打ちのめされたのだ。晶は自暴自棄になって自分も告白してきた子を断らずに即、彼女を作った。
夏休み入ると余計なことをする先輩ががいて、みんなで彼女を連れて水族館へ行こうなどという計画を立てた。ユズ先輩が彼女と楽し気にはしゃぐ姿を想像するだけで嫉妬で胸が痛んだが、だが一緒に出掛けられるチャンスをみすみす逃すのもイヤだったのだ。
柚希は先輩たちと最前列に陣取ってイルカが跳ね上げる水を浴びてしまって、早々に白いTシャツの胸元がスケスケになってしまった。
皆から寄ってたかって弄られていた柚希に、晶はすかさず自分はタンクトップ一枚になって自分のシャツを羽織らせた。
『お前の、デカい。ぶかぶかだな』なんて柚希にはにかんで呟かれる姿に、顔には出さずに心はドキドキと鼓動を高鳴ならせた。
先輩が自分のものになってくれたみたいで、あの一瞬はキラキラと輝いた記憶としてすごく印象に残っている。
それでも彼女もちのβ男性である柚希をα男性である自分の方に靡かせる勇気が当時の晶にはなかった。当たって砕けて嫌われるぐらいならこのままただの先輩後輩でいたい、でも諦めきれぬと距離を推し量っている間に柚希がバスケ部から足が遠のいていってそのうち連絡が一切取れなくなった。
だが、再会直前皆の噂で学生時代からずっと密かに思い続けていたユズ先輩がΩだと知った時。神は自分をそのためにα性として生まれ落してくれたのだと、どうしょうもないほど運命を感じ、区大会の決勝点を決めたスリーポイントシュートを成功した時より最高に興奮した。
そんな柚希に初めて告白した時は一度答えを保留にされた。
『お前は俺にはもったいないと思うし、俺、こないだまでずっとβの男だって自分では思って生きてきたから、性の自己認識? みたいなやつを変えるのはちょっと時間がかかるかもしれない。それでもいいの?』
もちろんそれでもよかった。これまでもこれからも誠実に一途に柚希だけを愛し続ける自信があったし、気持ちに応えてくれた柚希はやっぱり後輩の頼みを断れぬ、優しく蕩けるように甘い先輩のままだった。
そんな高校1年の初夏。柚希に初めての彼女ができ、それが晶と同級生であるという事実には酷く打ちのめされたのだ。晶は自暴自棄になって自分も告白してきた子を断らずに即、彼女を作った。
夏休み入ると余計なことをする先輩ががいて、みんなで彼女を連れて水族館へ行こうなどという計画を立てた。ユズ先輩が彼女と楽し気にはしゃぐ姿を想像するだけで嫉妬で胸が痛んだが、だが一緒に出掛けられるチャンスをみすみす逃すのもイヤだったのだ。
柚希は先輩たちと最前列に陣取ってイルカが跳ね上げる水を浴びてしまって、早々に白いTシャツの胸元がスケスケになってしまった。
皆から寄ってたかって弄られていた柚希に、晶はすかさず自分はタンクトップ一枚になって自分のシャツを羽織らせた。
『お前の、デカい。ぶかぶかだな』なんて柚希にはにかんで呟かれる姿に、顔には出さずに心はドキドキと鼓動を高鳴ならせた。
先輩が自分のものになってくれたみたいで、あの一瞬はキラキラと輝いた記憶としてすごく印象に残っている。
それでも彼女もちのβ男性である柚希をα男性である自分の方に靡かせる勇気が当時の晶にはなかった。当たって砕けて嫌われるぐらいならこのままただの先輩後輩でいたい、でも諦めきれぬと距離を推し量っている間に柚希がバスケ部から足が遠のいていってそのうち連絡が一切取れなくなった。
だが、再会直前皆の噂で学生時代からずっと密かに思い続けていたユズ先輩がΩだと知った時。神は自分をそのためにα性として生まれ落してくれたのだと、どうしょうもないほど運命を感じ、区大会の決勝点を決めたスリーポイントシュートを成功した時より最高に興奮した。
そんな柚希に初めて告白した時は一度答えを保留にされた。
『お前は俺にはもったいないと思うし、俺、こないだまでずっとβの男だって自分では思って生きてきたから、性の自己認識? みたいなやつを変えるのはちょっと時間がかかるかもしれない。それでもいいの?』
もちろんそれでもよかった。これまでもこれからも誠実に一途に柚希だけを愛し続ける自信があったし、気持ちに応えてくれた柚希はやっぱり後輩の頼みを断れぬ、優しく蕩けるように甘い先輩のままだった。
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